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ぼっちデイズ  作者: シュウ
五章
93/128

兄と弟

「いただきます」

「いただきまーす」

「はい、召し上がれ」


夕食を相変わらず帰りの遅い父さんを除いた家族3人で食べ始める。今日のメニューはカレーとポテトサラダ。

いつも特に会話らしい会話はなく、時々母さんと弟が話しているが、それ以外はテレビを見ながらダラダラと食べている。

そんないつもの夕食なのだが、俺の隣には昨日爆弾を投下してきおった弟が座っている。その弟は、特に変わった様子は見えないのだが、可憐ちゃんに言われてからよく観察してみると、ため息をついたり、ボケーっとしてることが多いように感じた。

そしてこの夕食中でも、少ない会話がさらに少なくなっていた。テレビの音がよく聞こえる。

弟のことだから、何も考えてないと思わせておいて、実は考えまくってるけど表情に出ないタイプだから一段とややこしいんだよな。

この際だから、直接聞いたほうがいいのだろうか?

いやいや。何がこの際なんだ。意味わかんねぇって。

うん。カレーうまー。

とにかくこいつが何を考えているのかわからない以上、こっちから手を出すのは危険なのか?

でももしも木村が弟になびいてしまっても困る。それは困る。

ポテトサラダうまー。

と、とにかく!

一度弟と話す必要性があると思う。

だってこのままじゃ危険すぎるもん。俺の立場が。

だって兄貴に向かって『お前の彼女が好きじゃ』って言ってきたんじゃよ?

バリバリ警戒しますわ。

でもだからと言って何かしようとしてるわけでもないし、木村が弟と、その・・・う、浮気するとも考えられないし。

よ、よし。こうなったら飯食い終わってから聞いてみよう。うんそうしよう。勉強も身に入らん。


「あとで俺の部屋来いな」

「うん」


食べ終わった食器を片付けながら弟に言うと、俺はそのまま部屋へと向かった。

そして部屋に入り、ドアを閉めてそのままもたれかかった。


「・・・なんだこれ」


なんなんだこれ。

俺と弟ってこんな感じだったっけ?

いつもの弟との接し方が全然わからなかった。

それゆえにとても不自然な誘い方になってしまっていたかもしれない。

こんな調子であいつと話せるのか?


「入るよ」


10分ぐらいしてから、弟が俺の部屋にやってきた。

弟の姿を見て、ちょっと逃げたい気持ちが生まれたが、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだと自分に言い聞かせて、ベッドの上にあぐらをかいて出迎えた。

そして置いてあったクッションの上に弟が座ったのを見て、俺は話し始めた。


「えーとだな。なんで呼んだのかというとだな。えーっと・・・」


切り出しにくい!!


「ほら、最近学校どうだ?」


なんという親戚のおじさんのセリフ!

我ながら語彙の少なさに驚くわ。


「学校? 楽しいよ」

「楽しいか。そっかそっか。良かったわ」

「・・・?」


『えっ、それだけ?』というような雰囲気を醸し出す弟。

えぇーい! なるがままよ!!


「わかった。じゃあ聞いちゃうからな」

「うん?」

「えーっとだな。昨日の木村が好きだっていうのはどういうことなんだ? 俺もこう見えて木村と付き合ってるんだから、その、アレだ。アレだろ」


言ってやった。言ってやりました! 

言ってやりましたが、後半グダグダでした! orz

弟は、ちょっとだけ悩んだ風だったが、すぐに答えた。


「昨日言ったままだよ。僕は紗枝ちゃんのことが好きなのかもしれない」

「その、好きっていうのは、誰にでも言っていい言葉じゃないんだぞ?」

「誰にでも言わないよ。でも紗枝ちゃんのことは好きかもしれない」


一歩も引く気もそれる気も無い弟。

そんな弟の言葉にちょっと引っかかったことがあった。


「そのさ、『かもしれない』って何? かもしれない運転?」

「僕もよくわからないんだ。なんか紗枝ちゃんとお兄ちゃんが仲良くしてて、お兄ちゃんが紗枝ちゃんを独り占めしてるって考えるとなんかムカムカする」

「お前、ウコンの力飲んで来い」

「それで、紗枝ちゃんのこと好きなのかもって思ったのはいいんだけど、ただそれだけなんだ」


渾身のボケをスルーされた俺は、気を取り直して聞き返した。


「それだけって?」

「付き合いたいとも思わないし、紗枝ちゃんとチューしたいとかも思わないんだ」

「チューとか・・・」


最近の中学生は進んでるのね。

『チュー』って言葉を使うのは、チューペットかチュートリアルだけにしておいたほうがいいと思う。


「ってことは・・・どういうことなの?」

「僕もわかんない。お兄ちゃんに聞いてみようかとも思ったんだけど、テスト前は邪魔するなってお兄ちゃんがいつも言ってるから、テスト終わってから聞いてみようかと思ってたの」


俺は弟の言葉に、肩の荷が少し軽くなったのを感じた。


「おまっ、なーんだよ! ビックリさせんなよな!」

「えっ、うん。ごめんなさい」

「いいっていいって。謝んなくていいって」


俺は完全に緊張から解放された親戚のおじさんになっていた。

全く。こいつの変な発言のせいで、ややこしくなるところだったじゃん。

こいつには紛らわしいことは言わないように言わないとダメだな。


「じゃあ僕はこの気持ちをどうしたらいいの?」


今度は俺の背中にデカい重りが乗っかってきたのを感じた。

一難去ってまた一難とか・・・勘弁してください。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとウルトラハッピーです。


弟くんの恋路に巻き込まれるお兄ちゃん。


次回もお楽しみに!

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