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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
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人生ゲーム

昨日の夜、紗枝ちゃんにメールをしたところ、早速遊びに来るということだったので、僕はワクワクしながら待っていた。

お兄ちゃんに言いに行こうかと思ったけど、部屋を覗いてみると、パソコンの電源を点けながら寝ていたので、そっとしておいた。

久しぶりに紗枝ちゃんに会えると思うと、嬉しかった。

最近お兄ちゃんが紗枝ちゃんと付き合い始めたみたいで嬉しかったけど、紗枝ちゃんが僕と遊んでくれないことが多かったので、ちょっとだけつまらなかった。でもお兄ちゃんと紗枝ちゃんが付き合い始めたのは、とても良かったと思う。紗枝ちゃんの気持ちがお兄ちゃんに伝わったんだもん。

今日は、紗枝ちゃんの他にも、紗枝ちゃんの友達が一緒に来るらしい。


「弟くんと遊ぶの久しぶりだねー」

「うん」

「思ったよりもあんまり似てないねー」

「いやいや。あいつと弟くんを比べたら、弟くんがかわいそうだし」

「それは独占欲というやつですかー?」

「ち、違うし!」


紗枝ちゃんの友達の吉川さんは、時々紗枝ちゃんのことを『師匠』と呼んでて、とても仲が良さそうだった。なんでもリア充っていうやつになるための修行なんだとか。

そんな吉川さんがニヤニヤと笑いながら言って、紗枝ちゃんが赤くなって否定した。

お兄ちゃんが前に言ってた。


『女の否定は肯定だ。イヤよイヤよも好きのうちってあるだろ? アレだ。めんどくさい女には騙されるなよ』


だからこれもきっとお兄ちゃんへの愛の証なのだろう。

そう考えると、紗枝ちゃんにこれほど好かれているお兄ちゃんが羨ましく思った。

吉川さんが何か遊びたいというので、お兄ちゃんが前に『この封印を破ると悪魔が出るぞ』と言って、僕の部屋の押入れにしまったままになっていた人生ゲームを取り出して3人で遊んだ。


「よし結婚したー。はいみんな1万円ねー」

「僕サラリーマンだから勘弁してください」

「うわっ! 弟くんが頭を下げた!」


だってここまでお金払うマスにしか止まってないんだもん。

これもお兄ちゃんが『人生なんだから、平凡に着々とサラリーマンで行くのが定石だ』って言ってたのを信じた僕が悪いんだ。お兄ちゃんのバカ。


「でもルールだから。ちゃんと手形発行してあげるよ」


そう言って2万円と赤い紙を渡してくる紗枝ちゃん。

赤字手形。それは銀行に借金している証拠である。

借金して生きる人生か。なんか残念だ。


「吉川さんもちょうだいね」

「ふん! 政治家の私にかかれば1万円なんてはした金ですよ!」


そう言って1万円を紗枝ちゃんに投げ渡す吉川さん。

お金を投げるのは良くないと思ったけど、これはゲームだからいいやと思った。


「じゃあ木村さんは旦那さんの名前を決めてね」

「へ?」

「あれ? これって絶対決めるんじゃないの?」

「そんなルール初めて聞いたよ!?」

「えー! ウチでは当たり前だったんだけどなー」


僕も初耳だった。


「じゃあ今回はつけてよ」

「・・・やだ」

「じゃあ私が決めてあげるー」

「!!!」


紗枝ちゃんが過剰に反応したのがわかった。


「えーと・・・ここはやっぱり」

「あ、あいつの名前だけは付けないで!」

「あれれー? 私まだ何も言ってないよー?」

「ぐっ・・・」


思わぬ罠にかけられた紗枝ちゃんは唇を噛んで悔しそうな顔をしている。


「では彼氏さんのお名前を付けさせていただきますね」

「これがお兄ちゃんってこと?」

「そういうこと」

「うわー・・・恥ずかしい・・・超恥ずかしい・・・」


顔を隠して照れている紗枝ちゃん。顔を隠しているけど、雰囲気が照れてる雰囲気だった。


「ふふふ。紗枝ちゃん可愛い」

「なっ!?」


思わず思ったことが口に出てしまった。

その言葉に、赤い顔を上げて反応する紗枝ちゃん。

赤かった顔がさらに赤くなった気がした。

僕は急に紗枝ちゃんに見られてビックリしたのか、ドキッとした。


「木村さん、かーわーいーいー!」

「吉川さんまで・・・あいつに言ったら怒るからね!」

「ハイハイ」


その後も、子どもが出来たり、家を買ったり、一緒に遊園地デートをしたり、お兄ちゃんが浮気したり、金婚式でお金もらったりで、紗枝ちゃんはまるで自分の人生を辿っているかのように、ボードの上を走る小さな車を見ていた。

喜んだり怒ったり笑ったりと楽しそうだった。

そして人生ゲームが終わり、3人で片付けをして、部屋を出た。

結果は、子沢山な人生を歩んだ吉川さんが1位で、紗枝ちゃんが2位、僕が3位だった。僕は結局借金まみれで、最後の最後でルーレットを回し続けて借金返済生活でゴールした。

僕の結果は散々だったけど、2人が楽しそうだったので、僕も楽しかった。


「ここがあいつの部屋」

「へー。何してるのかな?」

「見てみよっか」

「えーダメだってー」


そう言いながら、ドアを開けて、隙間から中をのぞき込む紗枝ちゃんと吉川さん。


「あいつ何やってんだ?」

「なんかドカドカ打ってるね。あ、やられた」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・あっ!」

「見つかった!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・あいつ無視しやがった」

「これは突撃するしかないですね。師匠」

「よし突撃!」


どうやら気がついたお兄ちゃんに無視されたようで、2人は部屋に突撃しに行った。

僕は、2人に責められて困っているお兄ちゃんが面白くて、小さく笑った。

その後、一旦リビングに降りてきたんだけど、寒すぎるという理由で、お兄ちゃんの部屋に集まった。

そして紗枝ちゃんが先導して遊びに行くというので、付いていこうとして立ち上がったらお兄ちゃんに止められた。


「お前はついてくんなよ」

「どうして?」

「どうしてって・・・もう暗いじゃん。母さん心配すんぞ」

「大丈夫だよ」


僕だってもう中学生なんだから大丈夫だ。


「怒られるの俺なんだからな」

「・・・む」


最近、お兄ちゃんが僕をのけ者にする。

なんかむかついた。

そうやってお兄ちゃんばっかり紗枝ちゃんと遊んでズルイ。


「わがまま言わないで、家にいれ。また今度一緒に遊びに連れてってやるから」

「わかった」


これ以上言っても聞いてくれそうになかったから、仕方なく僕が折れた。

今日は僕が紗枝ちゃんと遊んでたのに。

お兄ちゃんがなんか言ってたけど、僕は適当に返事をして部屋に戻った。

僕はベッドにうつぶせに倒れた。

さっきまで楽しかったのがまるですごい前のことのように感じた。

人生ゲームで楽しそうに笑ったりしてる紗枝ちゃんを思い出した。

そして今はその隣にお兄ちゃんがいるんだと考えると、なんか悔しかった。

なんか・・・なんかむかついた。

お兄ちゃんは好きだ。紗枝ちゃんも好きだ。

だから2人が付き合ってるのは良いことだと思う。

でも面白くない。


「んー・・・」


僕は枕に顔を埋めて唸った。

よくわからない。自分でもどうしたいのかよくわからない。

どうするのが良くて、どうするのがダメなのかよくわかんない。

もう自分で何を考えてるのかよくわからなかった。


「どうしたいのかな・・・あれ?」


口に出してみてわかった。

僕、もしかしたら紗枝ちゃんのことが恋愛対象として好きなのかなぁ?

でもお兄ちゃんと紗枝ちゃんは付き合ってるんだから、それはいけないことだっているのはわかる。

でも思い返してみると、僕は紗枝ちゃんのことが好きなんじゃないかっていうところばかり思い浮かんでくる。

そして今日の人生ゲームをしていた時に見た紗枝ちゃんの顔に、ドキッとした自分を思い出した。


・・・僕は紗枝ちゃんが好きなんだ。・・・のかな?


よくわかんないけど、多分好きなんだと思う。

でも付き会いたいとも思わないし、何かしたいっていうわけでもない。ただ好きなんだと思う。


「んー・・・」


・・・考えてもよくわからなかった。

こうなったらお兄ちゃんに言いに行こうと思う。

うん。帰ってきたらお兄ちゃんに言おう。


ご飯を食べ終わって、お風呂から出た時ぐらいに、お兄ちゃんが帰ってきた。

僕は玄関まで行って、お兄ちゃんに向かって言った。


「ただいまー・・・ん? なした?」

「・・・僕、紗枝ちゃんが好きなのかもしれない」

「・・・・・・は?」


お兄ちゃんはとてもビックリしたような顔をしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


これにて第4章終了です。


爆ぜろリアル!弾けろシナプス!

リミットオーバーアクセルシンクロォ!


次回もお楽しみに!

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