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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
88/128

変態紳士

「さぁどうぞ」

「おじゃまします・・・」


木村兄に案内されて入ったのは、普通の一軒家だった。

もっと『玄関開けたら2秒でアニメ』みたいな感じも想像してたのだが、そんなことありませんでした。

まだ木村は帰ってきていないようだった。


「紗枝はまだか・・・じゃあ紗枝の部屋で待っててよ」

「え!? いや、それはちょっと早いような早くないようなそんな気がするクーポーンマガジンのホットペッパー」


いきなり部屋に入るのはまずいでしょ。

そのなんていうの? 色々あるでしょ?

『散らかってるからちょっと待ってて!』みたいな感じで部屋片付けに行って、見せられないものとか片付けたり片付けなかったりするでしょ?


「もしかして家に来るのは初めてかい?」

「はぁ。まぁ」

「うーん・・・」


どうしたもんかと顎に手を当てて考え込む木村兄。そして閃いたようだ。


「紗枝の部屋入ってみる?」


どうやらひらめきはひらめきでも、絶対回避のひらめきではなく、頭に電流が走ったほうのヤバイひらめきだったようだ。このあと殺人事件でも起こるんですか? ちびっこ探偵とか来ないよね?


「はい。・・・ってあっ!」

「よし。じゃあ行こうか」


思わず本音が漏れてしまった。

そりゃ俺だって健全な高校生ですよ。

女の子の部屋とか気になるに決まってるじゃないですか。

何か言おうとしたが、階段を登り始めていた木村兄の後ろに続いて、小さくため息をついてから階段を登る俺。

階段を登ると、廊下があって、2階には3つの部屋があるようだった。

そのうち正面にある一番奥の部屋の扉を開ける木村兄。


「御開帳ー」


部屋の扉に『勝手に開けるな』と書かれているが、これは俺の気のせいだろう。だって木村兄があっさりと開けてたもん。うん大丈夫。

部屋に入ると、美少女のポスターが貼られていたりフィギュアが飾られていたりタペストリーが吊られていたりマンガが並んだ本棚があったりと、オタクの参考書に出てきそうな部屋だった。


「これが僕と紗枝の愛の結晶だよ!」

「お兄さんの部屋なんですか?」

「ここは紗枝の部屋。ほら」

「ブハッ!」


お兄さんがタンスから木村のブラジャーを取り出して俺に見せてきた。

それは白くてフリルがついていてホックがついていてなんとも言えない!


「ふむ。また大きくなったみたいだな。あっ! こんな色の下着なんて買って! 誰か変な奴に襲われでもしたらどうするんだ! 没収シテヤルデス!」


俺は途中から見ていられなくなって、クルリと反転した。なので今は音声のみで楽しんでおります。

こんな色ってどんな色だよ。見たいという気持ちと見てはいけないという気持ちが、からだの中でグルグルと回り回っていた。

ってゆーかこの兄貴・・・酷いシスコンだな。

まぁ途中からシスコンだなーとは思ってたけど、どう考えてもこれは変態紳士を通り越している。こうしてタンスを漁っている姿は下着泥棒そのものだ。

その下着泥棒が俺に声をかけた。


「君は紗枝の下着に興味は無いのかい?」

「いや、あるとか無いとかじゃなくて、犯罪というかなんというか」

「大丈夫ですよ。バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」


そう言って下着泥棒はまた犯罪作業に戻った。

とはいえ、こんな形で木村の下着を見てしまうとは思わなかった。

もっと違う形で見たかったなぁ・・・

そんなことを考えていると、誰かが階段を登ってくる音が聞こえた。

・・・木村だ。

階段を登りきった木村が、フルオープンになっているこの部屋を見つけたのとほぼ同時に、部屋の中に侵入していた。

み、見えなかった。時が止まっ・・・いや、時が跳んだ?

縮地法とか瞬歩とか飛廉脚とかそんなもんじゃねぇ。完全に俺の体感時間が止まったような気がした。ケツにデカイつららを入れられたような感覚だった。


「お兄ちゃん」


そう言って下着泥棒の背後から見下ろす木村。

絶対にスタンドが出ているはずだ。俺は早人の気持ちがわかった気がした。スタンドが見えていなくても、そいつを見れば何をしようとしているかがわかる気持ちが。


「あっ紗枝! こんな下着を買って誰に見せるつもりなのさ!」


ポケットから取り出した下着を木村に見せつける下着泥棒。クマ吉君よりもマヌケだ。下着泥棒自ら証拠を提出したんだから。

それを取り上げた木村が、無言で蹴った。頭を横から蹴り抜いた。

手加減する様子もなく、綺麗に蹴り抜いた。インテルからオファーが来るレベル。


「出てけ!!」


木村が叫ぶと、木村兄はショボーンとしながら、トボトボと部屋を出ていった。

呆気にとられていた俺に向かって、木村が言った。


「・・・あんたも出てて」

「・・・は、はい」


俺は静かに部屋を出ると、部屋のドアを静かに閉めた。

そして怖かったので、階段を降りて帰ることにした。

木村の部屋はまた今度誘われたときにでも楽しむことにしよう。

そう思って、俺は玄関を開けて夕日が眩しい外へと飛び出した。

秋の空気は冷たかったが、俺を暖かく優しく出迎えてくれた気がした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


兄ちゃんはダメだ。早くなんとかしないと。


次回もお楽しみに!

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