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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
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地獄へのドライブ

俺は今、帰り道で出会った残念な好青年のオタクさんと一緒に木村を車で追跡している。

車内にはアニソンが流れている。もちろん電波系だ。全然聞いたことがないようなキャラソンっぽいのが無限ループしていた。無限ループって怖いね。俺も釘宮病になりそうだぜ。


「へー。じゃあ君は紗枝の友達なんだー」

「あ、はい」

「君は紗枝のことをどこまで知ってるんだい?」


・・・どこまで言っていいものやら・・・

答え方一つで冥府の世界に送られてしまうかもしれないのは目に見えている。

しかもハンドルを握っているのは木村の兄ちゃんだ。このままちょっとハンドルをきれば心中なんて楽勝だ。こいつはブッとんだことをする覚悟が出来ているタイプの人間だ。殺すと心の中で思ったら、すでに殺していそうなタイプの人間だ!


「い、一応、オタク趣味までは・・・」

「紗枝が自分で言ったのかい?」


ハンドルを握る手に力が入ったように見えた。


「えーと・・・不可抗力というやつです」

「無理矢理聞き出したとか?」

「いや、不可抗力でした」

「もしかして紗枝が可愛いからって僕から奪おうって魂胆かい?」

「いえ。不可抗力でした」

「紗枝は可愛いと思うかい?」

「・・・それなりに」

「それなり?」

「結構可愛いと思います」

「ふっ。君にはまだ紗枝の魅力はわからないんだね」


そう言って木村を探すために血眼になって周りを探しながら、木村の可愛いところを次々に語っていく木村兄。

ダメだコイツ。早く何とかしないと。

ふと外を見ると、学校帰りらしき生徒たちがこちらを見ていた。

そりゃそうか。こんなぶっ飛んだロリコンカーが走っていたら、誰でも見るわな。

・・・あそっか。

木村も一応オタク隠してるんだから、こんな車で探しに行ったら余計見つからないか。きっと隠れてるんだろう。だから見つからないんだ。

そう思った俺は、横で木村の魅力を語り尽くしている木村兄を置いといて、木村に電話をかけようとケータイを取り出した。

するとちょうど木村から電話がかかってきたところだった。


「もしもし」

『あ、やっとでた』

「紗枝っ!! 紗枝なのか!? どうしてお兄ちゃんに電話くれないんだ!!」


木村兄が前を見ながらものすごく叫ぶ。うるせぇ・・・


「君! 電話代わって!!」

「いや、運転中じゃないですか」

「馬鹿言ってんじゃない! 法律は破るためにあるんだよ!!」

「何言ってるんすか! 危ないから前向いて運転しててください!」


俺から電話を奪おうと手を伸ばしてくるのをかわしながら、木村と会話を続けようと試みた。


「お前今どこだ?」

『今、電車乗るところ。学校の人にはバレたくないもん』


まさか駅に逃げてたとは。


「バレたくないってどういうことだ! お兄ちゃんのことか!?」

『ちょっとお兄ちゃん! うるさいから黙ってて!!』

「妹の貞操がかかってるのに誰が黙るか!」

『アナちゃんのフィギュア壊すよ』

「すみませんでした」


木村の一言に、一瞬でおとなしくなる木村兄。

アナちゃんって誰やねん。

ってゆーか、今ケータイは俺の耳から少し離した位置にあるわけなんだけど、それで会話するこの二人ってなんなの? クウガのペガサスフォームなの?


『あーごめん。もしかして今車の中?』

「なんか拉致された」

『・・・変なことされてない?』

「BでLな関係にはならないから安心しろ」

『それは心配してないから大丈夫』

「じゃあ・・・どうすればいいんだ?」

『えっと・・・お兄ちゃん』

「なんだい?」

『そのままうち帰ってくるの?』

「その予定。紗枝の顔も見たいし」

『はぁ・・・じゃああんたもそのままウチ来なさいよ』

「えっ? いいの?」

『まぁ・・・不可抗力よ』


俺の家に来たのは不可抗力だったっけ? お前尾行してなかった? 犯罪ですよ?


「じゃあお邪魔しようかな」

『ってゆーことだから、ちゃんと連れてきてね』

「はいよー」


と電話を切ると、すでに周りは学校付近から離れたところを走っていた。

木村の家か。初めて行くな。

もしかして俺妹の桐乃みたいに隠し押入れにもの詰め込んでたりするのか? それならちょっと萌えるな。

隠れオタの典型的なのを想像してるわけだけど、どうせ木村のことだからリア充向け雑誌とアニメ誌とか並んでるんだろうな。

もしそんな部屋なら、木村はどうやって友達連れ込んできてたんだろうか。ふむ、謎だ。


「カワイイなんてーそんなことー言っちゃダメーです♪ヘイッ!」


隣でハンドルを握る木村兄は流れている曲を口ずさみながら軽快に運転をしている。

木村はこの兄ちゃんの影響を受けたのは間違いなさそうだ。

だって木村が好きなアニメの系統と似てるもん。目がでかくてからだからキラキラした成分が出てる年齢不詳の幼女アニメ。

となると、今の木村を作り上げたのはこの兄ちゃんと言うことになるのか。兄ってのはすごいな。

うちにも弟がいるけど、全然影響受けてねぇぞ。むしろ興味関心なさそうだ。ちょっとは興味持ってくれてもいいんだけどな。たまに一緒にゲームをするくらいだ。

そういう意味では、二次元の世界では仲良しな兄妹ってのは理想的・・・ってゆーか萌える。

まぁ見たところ、木村兄は重度のシスコンっぽいし、木村からは突き放されてるみたいだし。これも理想的ってことでいいのかねぇ?

ってゆーかこれから俺って、木村の『友達』として振舞わなきゃならないんだよな。木村がなんて言うか・・・

そして木村兄が俺を木村の『彼氏』だと分かったときはどんな反応をするのか・・・

俺、生きて帰れるかな・・・

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


兄ちゃんやべぇ!


次回もお楽しみに!

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