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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
83/128

あっ・・・

次の日、学校に登校すると、同じクラスの名も知らぬ生徒が刃の出ていないカッターをクルクルと回しながら上に放り投げたところだった。

そしてそのカッターが落ちてくる位置に腕を伸ばし、当たり前のごとくペコンと当たり、音を立てて落ちた。

よいこのみんなはマネしないようにね。


「き、切れてない・・・」


何人かいる内の一人が尻餅をつきながら言った。

そして腕を伸ばしたままの生徒が言った。


「良い刀だ。買った!」


カッターを拾い上げると、それをそのままポケットに入れた。

あーワンピごっこか。ってゆーか古いな。

席につきながらそのやりとりを見ていたのだが、どうも最近になってワンピースを集め始めたらしく、あんな序盤のシーンのやりとりの再現をしているようだ。

まぁ問題は無い。

しかし別のところに問題はある。

それをやっているのが、渡辺だということだ。

尻餅をついた生徒は、俺の記憶が正しければプジョル川崎だ。

他にもその他数人のサッカー部らしき面子が揃っていた。

サッカー部の連中って、馬鹿なの? 恥ずかしくないの?

あんな古いネタ持ってきちゃってさ。明らかに最近読み始めましたーって言ってるようなもんじゃん。

古いネタなら古いネタで、カッコイイやつ真似しろよ。

例えば『いいか! 俺の呼吸に合わせろ!』とか言って、二人で女の子のからだに触ってプラスとマイナスの波紋を流したりとかさ。まぁセクハラだけど。

例えば『フハハハ! 俺に秘孔は無い!』とかわけわかんないこと言って臓器反対にしてみろよ。まぁ無理だけど。

例えば『なんだかんだと聞かれれば!』とか叫んで変なところから登場してこいよ。まぁこれはかっこよくないな。

そんな感じで、名シーンだけをくりぬいて俺を感動させてみろよ!!

とか思ってるけど、俺は直接関わりたくないし、俺に向けて見せてるわけでもないし、かと言って俺は絡まれたくないから横目でチラチラと見るのが精一杯である。


『ただの友達にそこまでするわけ無いじゃん』


ふと木村の言葉を思い出した。

渡辺が俺のことをそう思ってるはずはない。だって完全に一方通行だもん。アクセラレーターさんだもん。

上条さんとアクセラレーターがかみ合わないように、俺と渡辺もかみ合ってないと思うもん。

ほとんど渡辺がなんやかんやしてきて、俺がなんやかんやされる。これが友達なはずがない。

それに俺は外出嫌いなのに、あいつはメールで『どっか行こうぜ!』とか『お好み焼き食べに行こうぜ!』とか『サッカーの試合見に行こうぜ!』とかって、やたらと誘ってくる。

そのたびに俺は『嫌だ』とか『たこ焼き派だから』とか『サッカーはテレビ観戦が一番の特等席だから』とかってメールを打たないといけなくなる。

めんどくさい。

友達に対してめんどくさいと感じるようになってしまっては友達とは呼べないんではなかろうか?


「あら少年。お悩みかい?」


ぼけーっと考え事をしていると、登校してきたであろう伊織ちゃんが隣に座った。

やっぱりちょっと距離を置きたくなってしまう馴れ馴れしさだ。

しかしここで小学生みたく、嫌いな人と机をちょっとだけ離すとかの行為をしようものなら、木村以上の蹴りがとんできそうで怖いので、自重して大人しくした。


「あ、まぁ・・・」


やっぱり伊織ちゃんとの会話はまだ慣れない。


「悩みがあるなら聞いてあげようか? 暇だし」


俺の悩みなんかで暇つぶしになるのか?


「えー・・・」


とはいったものの、なにを言おうか。

あ。


「えっと、なんで木村と友達やってんの?」

「紗枝? あーなんでだろ。親友だから?」


いや、それ答えになってねぇし。


「でもなんでだろね。気がついたらなんでも話すような関係になってたって感じかな」

「気がついたら・・・でもあいつってオタクじゃん」

「・・・ん?」

「え?」

「オタク? 誰が?」

「・・・え? 誰って・・・」

「あれ? 今紗枝の話してたよね?」

「え? ちょっと待って? えっ? え?」


あれ? コレって、もしかして俺、やっちゃった?

木村って、『ぅちらわ、ズッ友!!』とか言ってた伊織ちゃんにはオタクなこと言ってなかった・・・的な?


「もしかして紗枝ってオタクなの?」

「・・・いや、違う、かなー・・・」


すでに結構感づいてきているようで、俺との距離を縮めて小声で話しかけてくる。なんかの香水の臭いがする。

小学校の上の学年の卒業式で、父母席の近くに座ってて、あまりのごちゃまぜの香水の臭いにやられて、途中退席してからは香水の臭いがダメになったのだ。

でも伊織ちゃんから漂ってくる香水の臭いは不思議と悪くない。なんでだろう? わからん。


「じゃあ紗枝に聞いてくる」

「ちょっと待ってください!」


まだ登校してきていないはずの木村に聞きに行くという謎の行動を取ろうとした伊織ちゃんを、思わず引き止めてしまった。

引き止めなければ、『あ、なんだ。まだ紗枝いないじゃん。ちぇっ』とか言って、諦めてくれたかもしれないのに。


「じゃああんたが話してくれるってことでOK?」

「ノ、ノー・・・」


・・・拒否権はなさそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


やっちまったな。

ワンピースのどのシーンかわかりましたか?


次回もお楽しみに!

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