お邪魔虫
「お兄さん! 何してるんですか!」
「いや、何って・・・」
「早くあなたもどいてください!」
「あんたがどっか行けばいいでしょ。せっかくいいところだったのに」
「カレンはお兄さんに会いに来たんです!」
「そんなの知らないわよ」
「可憐ちゃん? あ・・・」
俺の部屋で言い争いをしている木村とちびブチャラティを見つけた弟。
そして俺の上に覆いかぶさっている木村を見て、小さく声をもらした。
ちびブチャラティこと可憐ちゃんに見つかってから、なんの意地なのかは知らないが、木村が全く動こうとしない。とんだ羞恥プレイである。
「邪魔だった?」
「・・・木村が怒るレベル」
「ごめんね」
もしかすると弟はKY検定を受けているのかもしれない。そしてすでに2級ぐらいは持っているのかもしれない。しかし周りの突拍子もない行動によって、その資格の意味をなしていないのかもしれない。ってゆーか、幸人くんってばそういう知識もあったのね。何も知らないような顔しちゃって。最近の中学生って怖いわー。
「ほら、可憐ちゃん。行くよ」
「嫌だ! 絶対にいかないもん!」
「あんまりだだこねてると怒るよ?」
笑顔を作ってそう言う弟。
普段笑わない人間が、こういうセリフと共に笑うとすごく黒いよね。
その笑顔を見た可憐ちゃんは、『ひぃっ!』と声をあげると、大人しく弟の言うとおりに部屋を出ていった。
「じゃあごゆっくり」
そう言ってドアを閉める弟。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・びっくりしたな」
「・・・うん」
勢いを削がれたのか、さっきの体勢のまま、二人で黙りこくってしまった。
ドアの向こうで、弟が可憐ちゃんに何か言っている声が聞こえる。どうせドアに耳をくっつけてたから怒られたとかそんな感じだろう。あの子がパワプロのゴスロリストーカーみたいになるとかマジで怖いわー。ドム子にコスプレさせたらアレになる可能性大だな。
そんなくだらないことを考えていると、木村が俺の胸の上に倒れ込んできた。
「はぁ・・・」
「えっ、ちょっと・・・なした?」
この状態なら、俺の心音を聞かれていてもおかしくはないのだが、俺はドキドキしているのをバレないようにした。
そ、その、む、胸が当たってるんです。
「ビックリした」
「あー。そーゆーことね」
俺も一瞬、母さんかと思った。親フラってやつな。
でも母さんのことだから、静かーにドア開けて覗いてくるタイプだからな。俺の部屋にも鍵が欲しい。プライバシーの侵害である。
「・・・ドキドキしてる?」
「ド、ドキドキなんてしてません!!」
「・・・うそつき」
そう言って下から俺のことを見上げる木村。
なんだこいつ。こんなに可愛かったっけ?
上目遣いは超可愛く見えるのは、二次元での鉄板だが、まさか三次元でも効果があるとは・・・
俺がボーッと木村のことを見ていると、木村が俺の顔めがけて這い登ってきた。
「んっ」
抵抗することもできずに、俺は木村に人生で二回目のキスをされてしまった。
最初は緊張とビックリで何も感じなかったけど、木村の唇の柔らかさを今日は感じた。
そしてそのまま木村が俺の唇を舐めるようにチュッチュしてくる。
俺だって『子どもはどこから生まれてくるの?』と聞かれたら『コウノトリさんが運んでくるの!』と答えるような純粋な少年ではなく、『母親の体内で胎児として成長し、すくすくと育って、母親のアソコから出てきます』と答えるぐらいの知識はある。
しかしだ。
じ、実践は初めてなんですよ。木村のキスの仕方がやけにエロくて、もうどうしたらいいのかわからなくなる。
「んっ・・・はぁ・・・」
ときどき漏れてくる息遣いもエロイです。
木村が俺の胸に手を置いてきた。
えっ! 俺、どうしたらいいの!?
俺の両手は行き場を失って宙をさまよっていた。
そして木村はキスするのをやめて、顔を離した。
木村の熱い息がかかる。トロンとして赤い顔をした木村が目の前にいる。
その木村が、からだを起こして、馬乗りの体制になって、自分のネクタイに手をかけた。
この瞬間ほど、俺は自分がヘタレだったことを後悔したことはない。
「ちょっと待って!」
「えっ?」
反射的に俺は木村を引き寄せて、木村を抱きしめていた。
やっぱりこういうのはまだ早いと思った。
「ほら、なんていうの? 物事にはまだ順番っていうのがあってさ、その・・・」
「・・・ごめん」
「なんで謝るんだよ。悪いのは俺だし・・・って別に悪くはないんだけど・・・」
「ううっ・・・グスン・・・」
「はぁ!? 何泣いてんの!?」
急に俺の腕の中で泣き出した木村。
俺はどうしていいかわからず、ただ木村を抱きしめながら頭を撫でてやることしか思いつかなかった。
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若干エロ多めです。
次回もお楽しみに!




