待ち時間
俺は、木村と歩く帰り道で、渡辺にした話を木村にもした。
すると木村も渡辺と同じようなことを言った。
「あー私もたまにそういう時あるから、気にしない方がいいよ」
「お前、渡辺とおんなじこと言うなし」
「だって仕方ないじゃん。人間なら誰でも通る道だって」
「そういうもんなの?」
「そういうもんよ」
そういうもんらしいです。
「私もあんたに会うまでは、隠れオタしてたわけだけど」
「いや、今も隠れっぱなしでしょ」
「うっさいな。現在進行系で隠れたオタしてるわけだけど、あんたとオタトークが出来て楽しいもん」
「俺はお前となんか世代の壁を感じるけどな」
「あんたの知識が新しすぎるのよ」
それでも俺もけっこう知識があるほうだと思ってたのに、モノホンのオタクの木村と会ってからは、自分が今まで振舞ってきた『俺ってばかなりオタクの知識あるぜ!』的なものに恥ずかしさを感じるよおうになった。
上には上がいたわけだ。
「まさかあんたと渡辺がそこまで仲良くなってたとはねぇ。思いもしなかったわ」
「・・・仲良くねぇし」
「プププー。この人まだこんなこと言ってるしー」
渡辺と仲良くなったつもりはない。
渡辺が仲良くしてくるだけだ。
どうせ渡辺にとって俺は、数ある友達の中の一人でしかないんだ。つまり俺にとっては、まだ友達の域にも達していないレベル。
「渡辺だって、たかが友達にそんなことまでしないって。いい加減に気づいてあげなよ。渡辺泣いちゃうよ?」
「あいつなら喜ぶべ」
「なんで?」
「あ、いや、こっちの話」
あぶねぇ。こいつはまだ渡辺がMなの知らないんだもんな。うっかり言うところだった。
「渡辺だってあんたと仲良くなりたいからそーゆーことしてんのよ」
「あんなリア充は友達として認めん」
「オタクならいいの?」
「・・・そーゆー問題じゃないでしょ」
「はぁ・・・これ以上言っても無駄ね。意識改革しなさいな」
どうして上からなんだよ。
俺と木村は、駅に着いて電車に乗り、そして降りた。
電車内では、木村がオタクだとバレると困るので、極力そーゆー類の話は避けることが多かった。そして必然的に無言になる。これは仕方なかった。
また歩き出すと、木村の会話は弾む。どうやら足と口が連動しているらしい。
「弟くんに会うの久しぶりだなー」
「前に来たのいつだっけ?」
「えーと・・・あんたが熱出してた日、かな?」
「あー・・・」
思い出したくもない黒歴史を作ってしまった日か。
あの時の俺はどうかしてたんだ。木村の手を掴んで縋ってまで引き止めるなんてこと、これから先絶対にしないと思う。いや、したくない。恥ずかしくて穴ほって埋めてほしくなる。
「弟くん、いるかな?」
「いるんじゃね?」
「ちょっとメールしてみてよ」
「はぁ? もう家つくじゃん。するなら自分でメールしろ」
「いやー、ちょっと弟くんにメールするのが気まずくて・・・」
頭をポリポリとかきながらエヘヘと笑う木村。
「気まずいって・・・なんかしたのかよ」
こいつ俺の知らないところで何してんだよ。もしかしてナニか? いやいや。それは無いな。・・・無いよね?
「ちょっとケンカってほどでもないんだけどさ・・・まぁいいじゃん。忘れて忘れて」
そうごまかされると気になるのが人間というやつだ。
でも気になってはいるが、俺は深く追求されるのは苦手なので、あえて追求はしなかった。人にやられて嫌なことは他人にもするな、ってばっちゃんが言ってた。
そうこう話しているうちに、我が家に到着。
ドアノブに手をかけると、鍵がかかっていたので、まだ弟は帰ってきてない様子。
「あれ? おかしいな・・・」
「どうかしたの?」
「あいつ、いつもなら帰ってきてるはずなんだけど、まだ帰ってきてないんだよなー」
「遊びに行ってるんじゃないの?」
そう言いつつもほっと胸をなでおろす木村。
家の中へと入り、俺の部屋へと向かう。
そして俺はベットの上、木村は本棚の横へとそれぞれ座る。ここが木村が来た時の定位置になっている。
「ふぅ・・・」
やっと今日一日が終わるとちょっと疲れた気がした。渡辺としたサッカーが効いてきたのだろうか? だとすると、明日は筋肉痛だと思う。
「お、弟くんまだかな?」
「さぁ? 帰ってくるとしたら、もう少しで帰ってくるんじゃね?」
「そ、そうだよねー。ハハ」
ん?
木村の様子がおかしい。
なんか落ち着かない様子だ。
いつもなら黙々とマンガでも読んでるはずなのに、部屋の中をキョロキョロと見回しては顔を手で扇いだりしている。
「どうした? 暑いのか?」
「いやいや! 全然暑くないよ!」
「・・・じゃあどうしたんだよ」
「えっ! えっと・・・」
なにこいつ。
急に顔を真っ赤にする木村。やっぱり暑いんじゃん。我慢することねぇのに。
そう思ったので、窓を開けた。
いくら秋とはいえども、それなりに寒い。しかも日が落ちてきた夕方ともなると、ますます寒い。
これでもまだ暑いとか言うようなら、外に放り出してやろうか。
ストン。
「っ!?」
窓を開けて振り向くと、俺がさっきまで座っていたところの横に木村が座っていた。
ちょ、おま、一瞬の出来事過ぎてビックリしたわ。
「何してんの?」
俺が問うと、木村はポフポフと俺が座っていたところを叩いた。
隣に座れと言うことですか。
俺は指示されるがままに横に座った。
すると木村が俺の肩に寄りかかってきた。
俺はビックリしたけど、顔には出さないようにした。きっと心臓を持ったカーボーイが飛び出ているはず。そのぐらいは驚いた。
「・・・好き」
!?
木村が小さく言った。
俺に聞こえるか聞こえないかの声の大きさで言った。
しかし俺の耳にはバッチリ聞こえてしまった。
驚いた俺が木村の顔を見た直後、木村も俺の顔を見た。
そして見つめ合った。
目を閉じる木村。
そして木村の顔がだんだんと近づいてくる。
えっ、これってやっぱりそういう流れなの?
ちょ、まだ心の準備が・・・
「いてっ!」
「きゃっ!」
木村を支えるために後ろに出していた腕がカクンとなってしまい、俺はバランスを崩してベッドに仰向けになった。
その拍子で、木村も俺の上に倒れ込んできた。
うわー・・・この雰囲気ぶち壊すとかマジでないわー。
とか考えていたのだが、木村は止まることを知らず、そのまま俺に覆いかぶさり、押し倒したかのような体勢で、顔を近づけてきた。
俺は身動きできずに、木村の顔が近づいてくるのを受け入れる覚悟を決めた。
呼吸を止めて1秒、木村が真剣な顔をしたから、そこからは何も言えなくなった。星屑ロンリネス。
木村が目を閉じたので、俺も目を閉じた。
そして気配だけでわかる距離まで木村の顔が近づいてきた。
そして俺の唇と木村の唇が触れようとした。
その時。
「お兄さーん!! 遊びにきましたー!!!」
とても元気な声が俺の部屋の中にこだまし、俺と木村はパッと目を開いた。
「・・・ぅ、キャーーーーΣ(゜∀゜ノ)ノキャー!!! 何してるんですか!!! 不潔! 変態! エッチーーー!!!」
部屋の入口を見ると、そこに居たのはちっちゃいブチャラティでした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想とか書いていただけると嬉しいピョン。
あなたもわたしもポッキー♪
ということで、昨日はポッキーの日でした。
バイト先でトッポを食べました。
あなたはきのこ派ですか? たけのこ派ですか?
私はキノコ派です。タケノコ、オマエ、ヤマニウメル。
次回もお楽しみに!




