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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
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はじめてのそうだん

というわけで、渡辺に今の気持ちを伝えた。

・・・ここだけ聞くと告白してるようにも思えるけど、違うからね? お悩み相談ですよ?

一通り話を聞いた渡辺は、大きく伸びをして俺から受けたパスをダイレクトでゴールにシュートした。チョーエキサイティング!


「まぁ俺もそういうことよくあるからさ。あんま気にすんな!」


・・・・・・えっ? 終わり?

もうちょっと悩んでくれるかとも思ってたんだけど、それで終わり?

親指をグッと立てて歯をキラリとさせて笑顔を作ると、ゴールにあるボールを回収して片付けに行ってしまった。

これは相談相手を間違えたか?

戻ってきた渡辺が俺の顔を見て頭をポリポリとかいた。


「あー・・・楽しくないって思うのってさ、考え方次第だろ?」

「・・・考え方?」

「『あれがしたいけど無理だ』って感じなら諦めがつくと思うんだよ。ほら。息するなって言われても無理だと思うのと一緒よ」


そのへんの芝生に座り込むと、急に渡辺が語りだした。

なんかよくわからないけど、渡辺の真剣さは伝わってくるので、黙って横に座ってツッコミを入れずに聞いた。


「でも今のお前って、『あれがしたいけど今の状況だと無理だ』って感じだからモヤモヤしてるんだと思うんだよ」

「何が違うんだよ」

「え、そこ? んー・・・空を飛べって言われたら、できそうでできないじゃん? だから人間は飛行機を開発したわけだし。意味わかる?」

「その心は?」

「ここはお前が友達の輪を広げるのが得策だと思う!」


・・・マジで?

ついに俺にリア充なれ・・・いや、リア充の門を叩けと申すのか。


「それっておかしくないかなぁ?」

「どこが?」

「いや、仮にお前の理屈が合ってるとするよ。仮にだよ? で、それでなんで俺が友達を作らないといけなくなるんだよ」

「だってそういうことする友達が欲しいんだろ? だったら作るのが一番じゃん」


友達作るって・・・あっさり言ってくれますね。このリア充は。


「俺だって結構目的に合わせて友達と付き合ってるつもりだぞ?」

「マジで?」

「おう。そりゃ気があうやつはいつも一緒に行動してたりするけど、基本はそんな感んじかな。お前とだってあんまり出かけたりしないだろ?」

「・・・・・・」


・・・それって友達って言えるのか?

それとも俺が深く考えすぎなだけ?


「じゃあさ、顔見知りと友達違いって何?」

「えー? 違いかぁ・・・メールするかしないかとかそんな感じ?」

「じゃあ俺とお前も友達じゃないな」

「いや、嘘。なんだろ。うーん・・・あ、すれ違った時に、会話が出来るやつってのはどう?」


『これは結構いい線いってんじゃね?』とドヤ顔をする渡辺がキモイ。


「じゃあ話しかけられた側が嫌がってたら、一方的に友達だと思ってたってこと?」

「なんでそんなに卑屈な考え方なんだよ。めんどくさいやつだな」

「ふん。余計なお世話だ」

「でもこういう話をするってのも結構友達の条件に入るんじゃね? 青春してる感じがして良くね?」


人が真剣に悩んでたのにこいつは・・・


「お前は難しく考えすぎなんだよ。もっと世の中は簡単に出来てると思うぞ」

「お前が世界の心理を語るな」

「じゃあ聞くけどさ。お前なんで木村と付き合ったん?」

「なんだよ、いきなり・・・」

「だってお前と木村って共通点も何もないし、お前が嫌いだって言ってる感じのグループじゃん。付き合う要素も仲良くなる要素もないじゃん。なのに仲良くして付き合い始めたんだろ? 不思議じゃん」


そっか。こいつは木村がオタクなの知らないんだっけ。

どうやって説明するべきか・・・


「えっと・・・」

「変な風に言うなよ? 真面目に言えよ? 笑ったりしないから」


そう真面目な顔で言う渡辺。

こりゃ言わざるをえない。ちょっと恥ずかしいんですけど・・・


「き、木村が、その・・・悲しい顔するのを見たくなかったんだよ」


言った。言ってやったぞ! このまま人間を辞めて吸血鬼になりたいぞぉおお! ジョジョぉぉおおお!!


「ふーん。なんか意外だわ」

「へ?」

「だってお前がそこまで他人に興味を持ってるとは思わなかったからさ」

「いや、その、なりゆきというか偶然というか・・・」

「まぁ気になってたから聞けて良かった。こんなこと言われたら俺も諦めるしかないしな」

「まだ諦めて無かったのかよ」

「・・・こう見えてもけっこう一途なんだからな」

「知ってた」

「さすが親友。心の友よ」

「キモイ」


渡辺は急に笑い出した。

何がそんなにおかしかったのかと思っていると、急にピタリと笑うのをやめて立ち上がった。


「さてと。そろそろ帰るか。寒くなってきたし」

「そうするか」


二人でカバンを取りに戻るため、校舎に戻り、教室へと向かった。


「「あっ」」


まだ人が残っている教室に入ると、俺の席に木村が座っていた。

渡辺は小さな声で『頑張れよ』と言うと、自分のカバンを取ってそそくさと退散していった。

俺は木村が座っている自分の席に向かった。


「・・・何やってんだよ」

「・・・待ってた」

「いお・・・織田は?」

「先に帰った」

「はぁ・・・」


ムスっとして不機嫌そうな木村。

まぁ完全に俺が悪いからな。ここは俺が折れよう。それが正しいと思う。


「一緒に帰るか?」

「えっ、いいの?」


俺の方を見て少し明るくなる木村。


「じゃあ駅までな」

「えー」

「えーって、どこまで来る気だよ」

「家」

「マジで?」

「だって最近弟くんに会ってないんだもん」

「弟はお前に会わなくても元気だよ」

「そんなことないって。きっと紗枝ちゃん成分が足りなくて餓死してるかもしれないじゃん」

「うちの弟はそんなことは言わん」


ツンと顔を背けると、木村が小さく笑ったのが聞こえた。

どうやら機嫌が戻ったようだ。

ちょっとホッとした。


「んじゃ行くか」

「うんっ!」


俺と木村は二人で一緒に教室を出た。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


さすが渡辺(笑)。


次回もお楽しみに!

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