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ぼっちデイズ  作者: シュウ
四章
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慰め渡辺

昨日はマイクラに没頭・・・というか現実逃避してしまって、木村からのメールを無視してしまった。

来てたのは分かってたんだけど、なんか返す気分じゃなかった。悪いかなと思いつつもケータイを閉じてしまった。

案の定、学校に行くと、木村が伊織ちゃんの席に座ってプンスカしていた。

俺は気にせずに隣の席に座った。


「なんでメール返してくれなかったの?」

「あぁ・・・ごめん」

「・・・どうかしたの?」


俺のテンションの低さに、木村が反応した。


「いや、どうもしない」

「いやいや、どうかしたでしょ」

「どうもしないっての」

「なんなのよ。私なんかした?」

「だから何もしてないって言ってんじゃん!」


あっ・・・つい大きな声を出してしまった。

周りの視線が俺に集まったのを感じた。

木村もここまで言われるとは思ってもいなかったようで、目を丸くして驚いている。

俺はつい居場所が悪くなって、視線をそらしてしまう。


「なんかあったの?」


木村が心配そうな目で俺の目を見てくる。


「いや、なんつーか・・・最近楽しくないんだよね」


って言ったところで理解してくれるのかどうかわからないけど、木村に伝えてみた。一応彼女だし。


「楽しくないって・・・私と付き合ってるのが?」

「いや・・・それは関係ない・・・と思う」

「じゃあなんなのよ」


俺の的を得てない答え方に、木村が少しいらついたのがわかった。

仕方ないじゃん。俺だって何したいのかわかんないんだから。

黙りこくっていると、木村が痺れを切らしたかのように立ち上がって、自分の席へと戻っていってしまった。

木村の居なくなった隣の席に、伊織ちゃんが戻ってきて座った。


「何、あんたら。もう倦怠期?」

「わからん」

「まぁあんたらのことなんだからあんまり口は出さないけどさ、仲良くしなよ」


伊織ちゃんが言い終わるのとほぼ同時に、担任が入ってきて、朝のHRが始まった。


「えー来週からテストが始まりますが、皆さん勉強は出来てますかー?」

「出来てませーん!」

「またかよー」

「とか言って勉強してるくせにー」

「ママに勉強しろって言われてるんだろー」

「い、言われてねぇし!」

「あー動揺したー!」


アハハハと教室内に笑い声が起きる中、俺はモヤモヤした気分のまま頬杖をついて外を見ていた。





「ちょっと来い」


放課後、いつものように颯爽と帰ろうとしたところ、渡辺が俺の席まで来て呼び止めた。

また人気のないところの連れて行かれるのかと思って、うんざりしそうになった。

しかし今回は全く違う方向に連れられて、玄関で靴を履いて、外に出てしまった。

なんで外?

そう思いながら付いていくと、グラウンドの方へと進んで行き、用具入れとなっている物置の中から、渡辺がサッカーボールを取り出した。


「ほれ」


トンとボールを蹴って渡すと、渡辺はスタスタと歩いて、サッカーゴールの前へと歩いていった。そしてその場でドスコーイとポーズをとった。

PKしようってことか。よくわからんが、付き合ってやるか。

Pkスポットにボールを置いて、ゴール前に立っている渡辺の右めがけて思いっきり蹴った。

久しぶりに蹴ったサッカーボールは、それなりに空気が入っていて蹴った足の方が痛かった。そしてボールはあさってのほうへと飛んでいった。これはキックベースでもファウルになるレベル。


「どこ蹴ってんだよ。走って取ってこい」

「俺が?」

「当たり前だろ! ほれ行ってこい!」

「ったく・・・めんどくせぇな・・・」


ブツブツ言いながらも、飛ばしたのは自分なので、ダラダラと走って取りに行った。

ボールを取って戻ると、渡辺がまたドスコーイと構えていた。

今度は確実にゴールの枠内に入れようと心がけて蹴った。


「ナイスパース」


余裕綽々でキャッチする渡辺に、少しイラっとした。


「次は入れてやる・・・」

「サッカー部なめんなよ」


渡辺からパスされたボールをセットすると、つま先で思いっきり真ん中を狙って蹴った。いくら渡辺がサッカー部だとしても、早いボールは怖くて避けちまうだろうと考えての速度重視のボールだ。広瀬みたいに無回転で蹴って変化させる技術はないので、とにかく思いっきり蹴った。


「うおっ!」


いきなりのハイスピードボールだったのにも関わらず、あっさりと太ももでトラップをして止められてしまった。


「はぁ!? なんで取れるんだよ!」

「ハハハ! こう見えても一年レギュラーだからな!」


腰に手を当てて自慢げに言う渡辺。

そうだった。忘れてたけど、こいつサッカー上手いんだった。


「マジでレギュラーなのかよ」

「おう。ボランチで17番背負ってるぞ」

「長谷部かよ」

「おー。サッカーわかんのか」

「まぁ一応・・・」


話しながら、渡辺が俺にボールを蹴ってきた。

それを受けると、渡辺が手を伸ばして足元にパスを要求してきた。

俺は転がってきたボールを渡辺のほうに蹴ったが、変な方向に行ってしまった。それに渡辺が小走りで追いつくと、また蹴ってこっちによこしてきた。

そして受け取ると、またパスを要求してきた。

また渡辺にパスを出す。さっきよりは渡辺寄りにボールが転がっていった。


「お前サッカー知ってるのかー。意外だったわ」

「一応球技全般ならわかるぞ」


渡辺とパス交換をしながら会話をする。


「俺、お前と友達になったのはいいけどさ、全然お前のこと知らないんだわ」

「じゃあなんで友達になろうとか言い出したんだよ」

「なんかお前って意外と優しいじゃん」

「はぁ?」


渡辺に優しくしたつもりはない。


「どうせあれだろ。悪口が快感にでも変わったんだろ?」

「そんなわけあるか。別に木村に罵られて快感を感じるから木村のことが好きなわけじゃないっての」

「えっ、そうなの?」


意外な新事実。


「じゃあどこが好きなんだよ」

「えっ、そりゃ、大人しそうに見えて実は結構強気なところとか」

「結局ギャップ萌えじゃねぇかよ」

「ギャップは大事だぞ!」


こりゃダメだ。

こいつはもうまともな精神の人間だと思って相手してたら、こっちがおかしくなりそうだ。

と考えていると、渡辺が小さく笑った。


「・・・なんだよ」

「いや、元気出たみたいだなって思って」

「あー・・・」


そういうことだったのか。


「どうしたんだよ。木村もめっちゃ心配してたぞ」

「まぁ・・・」

「まさか木村のこと嫌いになったのか?」

「それはない」

「なんだよ。せっかく俺の時代が来たのかよ思ったのにー」

「一生来ねぇよ」

「で、どうしたんだよ」

「あー・・・お前に言って伝わるのかどうかよくわかんないんだけどさ・・・」


俺は、今の心境を渡辺に正直に話してみた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


渡辺頑張る回でした。


次回もお楽しみに!

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