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ぼっちデイズ  作者: シュウ
三章
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チョコバナナといちごクリーム

木村に『どこか行きたいところないの?』と言われて、思わず頭に思い浮かべてしまったのが、クレープだった。

こう見えても結構甘党で、コンビニの限定スイーツとかを見つけると心が躍ってしまうぐらい好きだ。でも人目と予算の都合上、買うのを諦めているのは言うまでもない。


「どれにしますか?」


クレープ屋の前に立っている俺は、今にも鼻水を出しそうなほど照れに照れていた。顔から火が出るよりも、鼻血が出てきそうだ。あ、もしかして『火』って『鼻血』を抽象的にしたってこと?

売り子の女子生徒もそれなりに可愛いもんだから、俺としては恥ずかしくて困る。

そして後ろでは腕を組んだ木村が睨みを利かせている。怖い。

照れと恐怖に挟まれながらも、何にしようかとメニュー表に目を通した。

予算の都合上、全部で4種の中から決めなければならないらしく、しかも全部文字表記だった。

上から、いちごクリーム、チョコバナナ、抹茶アイス、練乳砂糖とあった。

気分じゃないってことで抹茶アイスとよくわからん甘ったるそうなやつは論外として、選択肢は2つだった。

普段ならチョコバナナにしてるところだが、今日は後ろで般若がついてきている。だから思い切ってファンシーな感じのいちごクリームをチョイスしちゃうのもアリアリアリアリアリーヴェデルチだ。

どうしようか・・・


「早く決めなよ」


後ろで般若が雷神に変わりそうな空気を醸し出し始めた。

これはマズイと思い、無理なチャレンジはやめて安定のチョコバナナに決めた。


「じゃあチョコバナナで」

「はい。では横にずれてお待ちくださいー」


なんというお店クオリティ。これなら普通に出店できるよ。俺が認めた店とかっていう文句書いてもいいのよ?


「なんにしますか?」

「じゃあいちごクリーム」


なんですと?


「ってお前も買うのかよ」

「あんただけ食べてるなんて悔しいじゃん」

「悔しいってなんだよ」

「見てると食べたくなったら困るでしょ」

「ふん。太ってしまえ」


案の定蹴られました。

そしてそれぞれのクレープを受け取ると、木村が一口食べるのを見てからかぶりついた。

うん。おいしいおいしい。うん。チョコバナナの味がする。うん。誰か彦摩呂呼んできて。俺じゃセンスねぇや。


「どう? 初クレープの感想は」

「普通に美味しい。でも初クレープじゃねぇよ」

「えっ? 夢の中で食べたとか?」

「小さい頃に家族で食べたことあるっての」


初クレープは、母さんがデパートでテンション上がっちゃった時に、父さんが買ってくれたクレープだった。

あの時はいちごバナナを食べたんだった。確か弟と半分こしたような気がする。で、クレープの臭いを嗅ぎつけてきたのか、母さんが戻ってきて、俺のを半分ぐらい一口で食べて、俺が大泣きした記憶がある。

そのことを木村に話すと、クスクスと笑った。


「なんだよ」

「いや、仲良い家族だなって思って」

「別に普通だろ。お前んちは仲悪いのか?」

「そんなことないよ。お母さんとはよく買い物に行くし、お兄ちゃんだって時々連絡とったりしてるし」

「お前、兄ちゃんいたのかよ」

「うん。ちょっと歳離れてるから、今は一人暮らししてて家に居ないけど、たまに帰ってきたら遊んでるよ」


兄ちゃんかぁ。

俺は姉ちゃんが欲しかった。弟とか妹ってどうでもなるけど、上はどうやっても無理だし。

理想としては、優しくてキレイめで、どっか抜けてる姉ちゃんが希望。でも料理とかは微妙に上手いのな。こんな姉ちゃんいたら、彼女とか友達なんて作らなくてもいいよな。ってゆーか速攻で帰ってきて、姉ちゃんと遊ぶわ。

でもある日姉ちゃんが『今日彼氏来るから』とかなんか言った日には、もう家をホームアローン状態にして出迎えてやるからな。床マットに電流はもちろん、階段のネジ緩めたり、ドアノブに電気流したりしてやるんだからな。オイルだって廊下に撒いてやる。無事に帰れると思うなよ。


「そんなことより、そのクレープ一口ちょうだい」

「あ、おう」


そう言って木村にクレープを差し出すと、木村がパクリと噛み付いた。一瞬、昔母さんにバクリと食べられた一口を思い出したけど、木村の一口はそこまで大きくは無かったので安心した。


「うん。チョコバナナの味だ」

「だろ?」

「わ、私のも食べる?」


プルプルと震えながらこっちに差し出してくる木村。

そして木村が真っ赤になった顔を背けながら差し出しているのを見てハッとした。

これって・・・間接キスやん。関西弁になっちゃったけど、間接キスじゃん。

あまりにもナチュラルすぎて全然気付かなかった。怖いわー。ナチュラル過ぎて怖いわー。

いやいや。そんな冗談を行っている場合じゃないですよ。

こんなことなら気づかなければ美味しくいちごクリームを口の中で味わうことが出来たのに、木村のせいで台無しだよ。

うわー。でもちょっといちごクリームも食べてみたいと思ってる自分がいるのが悔しい!

恥ずかしさと欲望に挟まれながら、俺は目の前に差し出されたクレープを見つめた。

木村が食べた場所と違うところを食べればいいのか? いや、でもそれだと木村に怒られそうだし。ってゆーか間接キスだって気づいてたら木村にも食べさせなかったのに。怒られる筋合いはないだろ。うんそうだ。ここはちゃんと断ろう。


「俺、やっぱりいいや」

「えっ・・・」


思いっきりシュンとする木村。俺が一番苦手な顔だ。

この顔をした木村を見るのがとても苦手です。あとあとめんどくさくなるからさ。

あーもうっ!

俺は木村のクレープに噛み付いて、母さんのごとく半分以上を一気に食べてやった。

照れ隠しするにはこれしかないと思ったんです。


「これでいいんだろっ。だからそんな顔すんな」


口をもごもごさせながらなんとか言うと、木村は顔をうつむかせた。

そして怒りを浮かべた顔を俺に向けると、右足の太ももを横から蹴ってきた。麻酔蹴りというやつだ。

俺の右足は完全に機能を停止してしまった。とにかく足ボー。


「そんなに食べないでよっ!!」


そういうと先に歩いていってしまった。

もう・・・なんなのよ・・・

俺は棒と化した足をさすった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


クレープ大好き!

僕は一人でも買えちゃいます。

人目とか気にしないタイプなのです。


次回もお楽しみに!

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