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ぼっちデイズ  作者: シュウ
三章
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漫画で研究する会

「えっ? ここ入んの?」

「早くしてよ。誰かに見られるでしょ」


俺は木村に急かされながら教室の中に入っていった。

この他の教室よりもふた周りぐらい教室の中には、3人の生徒が机を横一列に並べてこちらを向いて並んでいる。

その机の上には、本の形状をした小冊子的なものが全部で3つ並んでいる。

そしてその3人以外にいる生徒は俺と木村だけ。なんとも異様な光景だ。


「あ、クロさんでしたか。フフ」

「久しぶりです。フフ」

「今日お連れ様も一緒ですね。大丈夫なんですか?」

「あ、こいつには話してるんで大丈夫です」

「ふむふむ」


クロさん?

今確かに、真ん中にいた生徒が木村のことを『クロさん』と呼んだ。

もしかしてハンドルネーム的なあれかねぇ?

ハンドルネームでクロっつたら・・・猫のほうか?

個人的には団長のほうが胸アツなんだけど、木村が団長のことを尊敬してるなんて話聞いたことねぇしな。まさかDTBのほうか? ・・・なんでもいいや。

そのクロさんは、真ん中に座っている生徒と仲良さげに話を続けた。

まぁ俺が見てもわかるように、この漫画研究会と書かれた教室が小さい即売会場となっているようだ。

そしてこの状況から察するに、ネットかなんかで仲良くなった真ん中の生徒さんが描いたマンガがあるから、それを見に来たってところだろう。

ってことは、こいつコミケとか行くんだろうか? つーか北海道にもあるのか?

俺は別に同人誌とかには興味無いけど、コスプレを見るのは好きだ。例の自宅警備員のコスプレなんかは生で見てみたいとは思うし。

そんなことを考えながら、周りをキョロキョロとしていると、左側に座っていた生徒さんに話しかけられた。


「あなたは見てかないんですか?」

「あー・・・こいつに連れてこられただけなんで」


って、この人綺麗だな。黒くて肩ぐらいまでの髪をジャキジャキと雑に揃えていて違う意味で無造作なヘアーになってる。でも顔のパーツが良いぐらいにハッキリしてるからその髪型が似合ってるように見えなくもない。なにより声が綺麗な感じ。

こんな人も同人誌とか描いてんのか。意外すぎるわ。


「まぁ暇なら読んでみたらどうですか?」

「あー・・・じゃあちょっとだけ」


というわけで、カラーで描かれたキャラクターの表紙の本(?)を手にとって1ページ目を開いて吹き出した。

えっ? あれ? 同人誌ってこういうもんなの?

1ページ目に描かれていたのは、えーと・・・なんて言えばいいの? 小学生の落書き?

もうコマ割り以外はとても酷い。『絵』というよりは『ピカソがマンガ描いちゃった』って感じ。

目の前に座る人はとてもニコニコしながらこちらを見ている。

やっぱりこの人が描いてんの? 意外すぎるわ。これが画伯か。

なんかセリフが書いてるけど、全然頭に入ってこない。そのぐらいインパクトの強い絵だった。


「ふむふむ」

「え、なんスか?」


頷きながらいつの間にか取り出したバインダーに挟んだ紙に何かを書き始めた。


「君のリアクションをね」

「リアクション?」

「面白くないですか? そのマンガ」

「面白いっつーか・・・」


素直に言っていいの? そこまで言っていいんかい?


「絵は酷いし、セリフは意味わかんないし、コマ割りも酷い。でも表紙はキチンとフルカラーで描かれている。そんな表紙詐欺なのにも関わらず笑える。って感じですか?」


なにこの人。俺の心でも読んだの?


「まぁそんな感じです」

「ふむふむ。君がそう感じるのは無理もないですよ。だって君で40人目ですが、みんな同じ反応をしてますから」

「は?」

「あれ? クロさんから本当に何も聞いてないんですか?」

「聞くって・・・何をですか?」


もしかして秘密結社かなんかだった?

ってか40人も読んでてこのリアクションしかできないって、つまらない人間ばっかりだな。そんなんじゃ選ばれし者にはなれそうにないな。まぁこんなマンガに選ばれたくもないけどな。


「ここ漫画研究会は、自分たちで描いたマンガで研究をしているのよ」

「はぁ」

「それで学校祭では毎年こうやってマンガを読んでもらって、そのリアクションをモニタリングしてるんです」


つまり俺たちは実験台であると。ひでぇことしやがるぜ。


「これでマンガに絵は関係あるということがわかりました」

「いや、そんなの何年も前からわかってたでしょ」

「それを研究するのが私たちの宿命なのです」


そう言うと、とても素晴らしいドヤ顔で俺を見てきた。いや、そんな顔で見られても・・・




教室を出ると、木村は上機嫌に俺に話しかけてきた。


「どうだった?」

「どうだったって・・・面白かった」


作画的な意味で。


「でしょ? 来てよかったでしょ?」


ま、眩しい! 木村の笑顔が眩しい!

吸血鬼の俺には眩しい攻撃は厳しすぎる!


「あのシュールさがたまらないのよねぇ」


そううっとり顔で遠くを見る木村はとても幸せそうだった。

あ、そっか。こいつって、シュールでお馴染みの日常も好きなんだっけか。それならあの漫研が好きなのもわかるわ。


「そういえばクロさんって何ネタ?」

「えっ・・・えーと・・・」

「黒猫?」

「えっ、クロちゃん知ってるの?」

「えっ、クロちゃん?」


あれ? 黒猫ってそんな諏訪子みたいな感じで呼ばれてたっけ?


「うん。サイボーグクロちゃん」

「・・・それはないわ」


お前いくつだよ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


漫研は最初はこーゆー部活かと思ってた。


次回もお楽しみに!

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