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ぼっちデイズ  作者: シュウ
三章
62/128

ヘルプミー!

『マジで助けてくれ。俺、もう耐え切れない・・・(ぐすん』

『渡辺が面白いことになってるww』


渡辺に返信をすると、渡辺、木村と順にメールを受けた。

どうやら教室で渡辺が醜態を晒しているとみた。

これは見ないわけにはいかない。人の不幸は蜜の味って言うしな。

あわよくば写真を撮って、脅して、俺の昼飯担当にしてやりたいところだが、そんなことを出来る度量がないことは、俺が一番よく知ってる。イジメヨクナイ。

そんなこんなで教室へと到着した俺の目の前には、カーテンの代わりに取り付けられた暗幕を開放して、剥き出しになったお化け屋敷があった。

そして出口側から中に入っていくと、教室の窓側の真ん中らへんで、昼飯を食べているらしい集団がいた。その集団からは笑い声が聞こえていて、一人だけ嫌がっているような感じの声も聞こえた。

その声の主は渡辺だった。まぁ予想通りっちゃ予想通りだったんだけど、どう考えても昼飯食べるだけではそこまで笑いはおきないだろう。何が起きたのやら。

その集団の中にいた木村がたまたま近くにいたので声をかけてみた。


「渡辺、何してんの?」

「ふふふ。いいから見てなさいよ」


そう言われて集団の外から、中心にいる渡辺を見た。

よく見ると、隣に張り付くように中島がいるのに気づいた。


「ほら、渡辺ー。あーん」

「だから自分で食えるって」

「そんなことないって。私が食べさせてあげるってばー」

「もう勘弁してくれ・・・」


これはこれは。

これが噂に聞く『あーん』という食し方か。

他人に食べさせてもらうことによって、その味がなんとも言えないものに変わるというあの伝説の食べ方か。限られた人種しか出来ない上に、相手との相性も関係してくるもんだから、俺ペディアの中では都市伝説として葬られていたのだが、まさかこんなところで見ることになろうとは。俺ペディアの更新も必要かな。

しかし渡辺は嫌がってるな。そりゃ会いたくないランキングで1,2位を争う中島にされても複雑だわな。ちなみに争ってるのはドム子な。

ってゆーかあそこまで嫌がってるのに、それを続けようとする中島もすげぇよな。野球に誘わないで、宿題手伝ってやればいいのにと思う。でもカツオもそこで中島を勉強に巻き込まないで、野球に行かせてるっていうのは素晴らしいと思う。

だから渡辺。こっち見んな。


「助けてくれ!」


そんなに必死な目で俺を見るな。


「ちょ、待てよ! どこ行くんだよ!」


ホリのマネはもう流行んないぞ。やめとけ。似てねぇし。


「だから置いてかないで!!」


背を向けた俺に、渡辺が中島を振り切って背中に飛びついてきた。

飛びつかれた俺は、サッカーで鍛え上げられた渡辺を支えることが出来ずに、そのままうつぶせに倒れてしまった。

その時、腕を強打したのは言うまでも無い。


「・・・いってぇ」

「どうして逃げるんだよ!」

「助ける義理はないだろ・・・」

「俺たち友達だろ?」

「いや、違うだろ」

「違うのかよ!?」


違うだろ。全然仲良くないし。昼飯奢ってもらっただけじゃん。それだけで友達になれるなら、俺も賄賂として誰かにロッテシェーキでも奢るっての。奢りたい相手は居ないけど。


「いや、友達とか言われても困るし・・・」

「いやいやいや! 俺はお前のこと結構好きだぞ?」

「こ、告白されても、こ、困るっての!」


ほら! みんな見てるじゃん! ってゆーか馬乗りになってないで、早くどけろよ!


「告白でもなんでもいいって。俺はお前のこと友達だと思ってるんだから、お前も俺のこと友達だと思えよ」

「なんで命令系なんだよ・・・」

「ちょっと。あんた、祐巳のこと放っておいて、何話してんのよ」


渡辺の背後に大きな機影が見えた。この声はもちろんザク・・・じゃなくてドム子だ。

さらにその奥の、さっきまで渡辺がいたところを見ると、中島がグスグスと泣いているようにも見えた。


「ほら、祐巳も泣いてるじゃん。どうしてくれんのよ」


なんというめんどくさい女。そう思いながら渡辺を見ると、複雑そうな顔でドム子の向こうにいる中島を見ていた。

ドム子もドム子なら中島も中島だな。そして渡辺も渡辺だ。

この騒動は、全員がハッキリしないからめんどくさいことになってるんだ。

ドム子に甘えっぱなしのクソ女の中島。

その中島を甘やかしてるドム子。

そして周りの目を気にしすぎて泥沼にハマってる渡辺。

もうめんどくさいメンツが揃っちゃったばっかりに、さらにめんどくさいくなってると俺は思った。

だからといって、首をつっこむ気は無い。馬乗りになられてて重いし。


「なんか言いなさいよ」


渡辺に何か言うように促しているドム子。

俺が何か言ったところで、ドム子に論破されるのは目に見えてる。

そして周りの空気が重々しくなっている中、覚悟を決めたのか、渡辺が口を開いた。


「な、中島。俺は中島と付き合う気は、無い」

「う・・・うぇ~ん!」

「何泣かしてんのよ!」

「うるせぇ! お前は黙ってろ!」


渡辺は口を挟んできたドム子を承太郎ばりに一喝して黙らせると、俺の上からどいて、中島の元へと歩いていった。

そして立ったまま見下すようにして言った。


「俺は友達に手伝ってもらいながら好意を寄せてくる奴は好きになれん。告白するならもっと自分の努力で頑張れ」


最近の明るい渡辺ではなく、前の冷めた感じの渡辺が中島に言った。やっぱり冷めた感じの渡辺の方が、素に近いんだと思った。

渡辺自身も言わないと収まりがつかないと思ったのだろう。

このままズルズルと先延ばしにしても、ドム子が割って入ってきて、またうやむやにされるだけだし。

そう考えると、渡辺はよくやったと思う。お疲れちゃん。

そしてまたいつもの明るい渡辺に戻って、中島に話しかけた。


「まぁ俺のこと好きっていうのは嬉しかったよ。ありがとな」


そう言って笑顔を見せた渡辺は、何か重たいものを室伏に投げてもらったかのようにスッキリとしていた。

俺はのそのそと立ち上がると、その場をそろーっと離れて、二宮銀次郎の指定席へと逃げた。

何か言いたそうな顔で木村がこっちを見ていたが、俺は気にしないで席へと戻った。

しかしホークアイを会得していたらしい渡辺から逃げることはできなかったようで、俺の席に先回りされてしまった。ミスディレクションも効き目が薄くなってきた。


「まだ話の途中だぞ」

「なんのことだよ」

「俺と友達になってくれ」

「・・・断る」

「そんなこと言ったってダメだ。俺の中ではもう友達だからな」

「バリヤ張ってるから友達になれませんー」

「俺の攻撃はバリヤで防ぐのは無理ですー」

「今二重で張ったからこっちのほうが強いしー」

「じゃあ俺もバリヤにバリヤ当てて相殺するしー」

「・・・お前何やってんだ?」

「お前が先にやり始めたんだろ?」


・・・ダメじゃん。これじゃ仲良しにしか見えねぇじゃん!

あ、なんか腐女子特有の『ホモォ・・・』なオーラを感じる。これは硬でガードしないとヤバイ!

と考えていると、どこからが渡辺を呼ぶ声が聞こえた。


「渡辺ー」

「ん?」

「あ、いたいた。これから衣装の最終調整するってよ」

「今からぁ?」

「そ。だからいこーぜ」

「あー・・・」


俺とその友達を交互に見る渡辺。

はぁ・・・めんどくさ。


「行ってこいよ。俺は逃げも隠れもしないっての」

「マジか。じゃあちょっと行ってくるわ!」


そんな嬉しそうな顔すんなし。

そして友達とどこかに行ってしまった。


「さてと。どこに行くかな」


渡辺にはあー言ったものの、逃げる気も隠れる気も満々だ。全力で隠れてやる。逃げ切って賞金ゲットだ! 

そう考えるのと同時に俺は席を立って教室を飛び出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


ぼっちくん逃走しました。


次回もお楽しみに!

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