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ぼっちデイズ  作者: シュウ
三章
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背後霊

「よし。頼むぞ。俺から離れるなよ」

「・・・はい」


渡辺に忠告された俺は、変にドキドキしながら教室の中へと入った。

昼飯を生贄として渡辺からの要求されたことはただ一つ。

『俺と学校生活を共にして、中島が接触するタイミングを減らして欲しい』とのこと。

ここまでするんならもう振っちゃえばいいのに。

まぁ俺も木村の件があるから、なんとも言えない心理状態なのは勘弁してください。

男ってどうしてこうも優柔不断なのかしら。

というわけで、渡辺にディフェンスに定評のある池上張りのマンツーマンでピッタリと張り付いた。


「ただいまー」

「おー渡辺ー。遅かったな」

「飯食べてた」

「マジかよ。俺も誘ってくれれば良かったのにー」

「悪い悪い。明日一緒に行こうぜ」

「おう。望むところだぜ!」


やたらテンションの高いお友達をお持ちのようで。

俺は本当に立ってるだけ。まるでスタンドのような存在。スタンドはスタンド使いにしか見えないんだから、俺のことを見える奴は多分居ないだろう。

そこに俺の横を通り過ぎるようにして、渡辺に向かって一人の女子が小走りで近寄ってきた。


「ちょっと渡辺ぇ! どうしてあたしを誘ってくれなかったのよぉ!」

「悪い悪い。って、こいつと同じこと言うなよ」

「えへへー。便乗便乗ー」

「どうせ誰かと食べてきたんだろ?」

「バレちゃったぁ? 実は藍子(あいこ)達と食べてきました! 何食べたと思うー?」

「うーん・・・餃子とか?」

「そんなの食べたら学校に来れなくなっちゃうじゃん!」

「だよなー」

「「あははー」」


何この頭悪そうな会話。ビックリして一歩も動けないや。

渡辺が愛想の良さそうな表情のまま、俺のことをチラチラ見てくるあたり、このバカそうな女がきっと中島なんだろう。

口パクで『こいつ?』って聞いてみると、渡辺は首を縦に振った。

どう見てもリア充・・・というかギャルギャルしい。木村よりも明るい金髪で、ポッチャリ系っていうの? そんな感じで程よく肉がついている感じで、天然キャラならモテそうな感じがする。俺は金髪の段階でアウトな。日本人なんだから以下略。

俺が見たところ、こいつはなんか自分のこと可愛いとか思ってそう。喋り方がウザイし、なんかねちっこい。これ絶対狙ってやってるでしょって感じ。

でもこいつなんかどっかで見たことあるんだよな。同じクラスだからか?


「ちょっと祐巳(ゆみ)ー。何してんのぉ?」

「あ、千絵美(ちえみ)ー! 渡辺があたしのこと置いてお昼ご飯食べに行っちゃったんだよぉ」


声がした方を見ると、そこにはドム子が立っていた。貫禄のある重量感だ。

そっか。思い出した。ドム子の友達か。だから見たことあったのか。

木村と一緒に話してたの見たことあるから見たことあったのか。

ドム子の登場によって、渡辺の爽やかスマイルに雲間が差した。

そーゆーことか。


「ちょっと渡辺ぇ? なんで祐巳のこと置いてったのぉ?」

「いや、買い物行ってたついでにな。それに中島だって、もう違う奴と飯食べたって言ってたし」

「えっ、そうなの?」

「えへへー」

「それなら別にいいじゃない。私が渡辺になんか変なこと言ったみたいになってんじゃん」

「ごめんごめーん」

「俺は気にしてないからいいって」

「まぁいいならいいんだけど」


そう言うとモビルスーツはどこかへ去っていった。

さりげなく小さくため息をつく渡辺。


「ごめんねぇ。千絵美ってば、あたしのこと心配で言ったんだよ?」

「わかってるって。もう仕事しようぜ」

「うん! あっそうだ! こないだのこと考えておいてねっ」

「あー・・・うん」

「じゃあねーん」


そう言うとこっちの嵐は笑顔で手を振って去っていった。

そして俺は渡辺に小声で話しかけた。


「モテる男は辛いな」

「冗談はやめてくれ」

「お前アレだろ。ドム子の友達だから付き合いたくないんだろ」

「・・・正解」


つまり過去に木村と大喧嘩をしているドム子の友達である中島に告白されてしまって困っているということだ。


「ってゆーか素直にそう言えばいいじゃん」

「言えるならとっくに言ってるよ」

「どーゆーことだよ」


渡辺って、『君のためなら世界を敵に回しても構わん!』ってタイプの人間だと思ってたんだけど、さすがにモビルスーツ相手だと分が悪いってことか?


「・・・ちょっと来い」


渡辺は、戻ってきたばかりの教室から俺を連れ出して廊下に出た。

そして周りにドム子と中島が居ないことを確認すると、俺に顔を寄せて話し始めた。


「最初は断ったんだよ。俺も好きな人がいるから付き合えないって。で、そしたら泣き始めちゃってよ。そしたらどこからか見てたのか、吉田(よしだ)が来たんだよ」

「吉田?」

「あー・・・ドム子って言えばわかんのか?」

「ドム子な。把握」


吉田千絵美が、ドム子か。覚えた。


「そんで、吉田が俺と中島の間に入ってきてさ『祐巳を泣かすなんて信じらんない』みたいなことを言ってきたんだよ。俺、もうどうしていいのかわかんなくてさ・・・とりあえず考える時間をもらって乗り切ったってわけ」


ドム子うぜぇ。安定のウザさだな。マジでうぜぇ。

中島もドム子とよくつるんでいられるな。早く磯野と友達になってこいよ。


「だから、俺のことを友達だと思って、助けてくれよ」

「俺、猫型ロボットじゃないんだけど」

「もうなんでもいいからさ。マジで頼む!」


顔の前で両手を合わせる渡辺。

一生のお願いというやつだろう。

友達と思ったことはないけど、熱の時の借りがある。あれを返さないとあとあと面倒になってくるかもしれない・・・


「まぁお前には借りもあるからな。ちょっと多過ぎる気もするけど、ここで返してやるよ」

「マジで!? ホントお前に相談して正解だったわ! 大好き!」

「だぁーーーっ!! 抱きつくなっ! 気持ち悪いっ!!」


大好きとか簡単に言うな! 気持ち悪いだろ! 腐女子に勘違いされるだろ!

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


モビルスーツ攻略戦スタートです。


次回もお楽しみに!

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