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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
54/128

届きそうで届かない

俺もベッドの上で正座をして、木村と向き合った。

多少の高低差はあるけど、そこは互いに気にしてないのでOK。


「まず、俺の気持ちから言わせてもらうからな」

「は、はい」

「俺は、お前と付き合うつもりはない」

「・・・・・・グスン」

「な、泣くなよ! 絶対泣くなよ! 竜ちゃん的なノリじゃないからな!」

「泣かない! 絶交したくないもん!」


もう鼻声な木村の声を聞くと、絶交まで時間がないようにも思えた。

この泣き虫!


「で、だ。俺と友達って関係じゃダメなのかよ」

「うー・・・」

「うーじゃわからん」


真里亞かよ。


「だってなんかあんたと吉川さんが話してるの見てると、なんかこうもやっとしちゃって・・・今日だってそれでトイレに逃げ込んで落ち着いたと思ったら、あんたがトイレの前にいて、しかも倒れるから・・・」


あの時教室から居なくなったのって、そういう理由だったわけ?

じゃあ俺があの時気になってた変な感じって、木村がそう考えてたから? 

・・・考えすぎか。


「もうこんな気持ちのままあんたが吉川さんと話してるのを見てるだけって考えると、辛くて辛くて・・・」


こいつこんなこと考えてたのかよ。


「その割には、部屋に入ってきたときはすごいハイテンションだったな」

「あのぐらい高くしてないとやってられないじゃん」

「さいですか」


もうコイツ高いか低いかでしかテンションを保ってられないのか。バカだな。

いや、俺としてもここまで好かれてたら、ちょっとは気持ちが動くってもんですよ。

でも、俺にはこいつとは友達以上になれない理由がもう一つあるんだ。


「お前の言いたいことはわかった。でもさ、俺とお前ってこう・・・なんていうの? ほら、お前ってリア充リア充してるじゃん?」

「コーヒーコーヒーしてるってこと?」

「いや、意味わかんねぇし。で、俺って、見てのとおりオタクじゃん」

「だからなによ」


・・・察してください。このバカ。


「だからつまり・・・俺、お前の見た目がダメなんだわ」

「・・・み、見た目?」


まさかの発言に驚いている様子の木村。

だって考えてもみてよ。

こいつ、明るい茶髪で、化粧もバッチリで、制服もスカート短く履いてるし、爪もなんかテカテカしてるし。髪の毛かき上げたらピアス穴とか見えそう。

そんな見た目のやつが怖いんだよね。

まぁ木村の中身だけで見るなら、全然有りなんだけど、見た目が・・・


「ほら、人は見た目が9割っていうじゃん?」

「じゃあどんな見た目ならいいの?」

「どんなって・・・もっと日本人らしく、黒髪で清楚な感じ?」

「清楚・・・」


君とは真逆な人がいいってことですよ?


「ってことだから、俺がお前と付き合えない理由わかった?」

「・・・わかったけどわかんない」

「わかってください」

「わかんないって! 私が髪黒く染めてきたら付き合ってくれるってこと?」


木村の黒髪・・・?

想像できねぇ・・・


「微妙・・・」

「なによそれ! 言ってること違うじゃない!」

「いや、お前だって友達とかいるんだろ? その友達からまた仲間はずれとかにされたら嫌だろ?」


前にドム子にやられたことをまたやられたら、さすがの木村でも落ち込んじゃうだろ。


「別にいいもん。友達よりもあんたのことが好きだもん」

「俺と付き合って、周りから変な目で見られるのもイヤだろ?」


ちょっとよくわからなくなってきた。

熱が上がってきたのか? もう少しなんだから頑張れ、俺。


「じゃあ一つ聞いてもいい?」

「・・・なんだよ」

「あんたは私のことどう思ってるの?」

「俺は・・・」


嫌いじゃないし好きでもない。つまり普通。

これが今の状況で模範解答だ。

でも・・・

俺ってこの言葉を今の状況で、今の木村に言えるのか?

・・・言えない。

木村が泣くのが嫌だから言えない。

でも木村を気遣って、『付き合う』ってのも言えない。


「正直わからない。木村とは付き合えないけど、木村が泣くのは嫌だから、突き放すこともできない。これが俺の今の気持ちだわ」


正直に言った。


「・・・そっか」


木村がなんとも言えない表情で笑った。

そしてその笑顔を見て気づいたこともあった。

木村といると安心するし、落ち着く気がする。

たしかに木村はこんな見た目だしリア充だけど、安心できる気がする。

だから熱のことにも気付けたわけだし、電車の中で隣で寝ることもできた。

無言で二人で居ても邪魔くさいとは思わないし、気まずいとも思わなかった。

そして授業を半分ぐらい妨害されながらの筆談とかも結構楽しかった。

なんやかんやで、木村と居ると色々と楽しい気がした。

そんなことが走馬灯のように浮かんでは消え、浮かんでは消えした。


「じゃあ私もう帰るね。早く熱下げなよ。オバケ役とかは配置決まってるんだから、休むと迷惑かかるし」


そう言いながら立ち上がる木村。

立ち上がって、カバンを手にとって、ドアノブ触れる。

ここで何か言わないと木村が帰ってしまう。

帰ってほしいけど、帰ってほしくない。

矛盾した気持ちが俺の中でぐるぐると回っている。

声をかけなきゃと思った。


「木村、どわっ!」

「ちょっと何してんの!」


ベッドの上にいたことを忘れていて、正座の体勢から木村に向かって手を伸ばしたところ、ベッドから落ちてしまった。

それを見た木村は、慌てて俺に手を伸ばして起き上がらせようとしてくれる。

そんな木村の二の腕をがしっと捕まえた。


「ちょ、何っ?」

「も、もうちょっといてくれない?」


我ながら恥ずかしいセリフだ。

『今夜は君を帰したくない』と同類のセリフだと思う。

こんなセリフはイケメンが言うセリフであって、オタク高校生が言うようなセリフじゃない。


「あ、いや、冗談」

「わかった。もうちょっとだけね」


そう言うと、木村は俺を起こしてベッドに寝かせて、自分はベッドを背もたれにして、俺に背を向けて床に座った。互いに顔は見えない。

そして訪れる無言。

でも木村がいるということだけで、安心出来る気がした。

手を伸ばせば届く距離にいる。それが落ち着く、のかもしれない。

なんか頭の中がスッキリして急に眠気に襲われた。

意識が途切れる前に、心の中で木村に『おやすみ』と言った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


臨時でいつもとは違う時間帯での投稿となってます。

(パソコンですが)が進み、ストックが貯まったので更新となりました。

次の弟くんの話で第2章は終わりとなります。


では次回もお楽しみに!

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