仕切り直す
「おっじゃまっしまーす!!」
ベッドで布団にくるまって『今日は寝すぎだなぁ』とか考えていると、突然部屋のドアを開けて木村が大声と共に乱入してきた。
ドアに手をかけてから、蹴破ってこないだけマシなんだろうけど、俺の部屋壊さないでね?
俺はその声にビクッと反応してしまった。
「アハハ! ビビってやんの!」
「ちょ、おまっ、いきなりなんなんだよ」
「やっぱりちょっと元気ないね」
「わかってるなら大人しく寝かせろ」
全然声量がない俺の声を聞いて、木村がケラケラと笑っていた。
なんだこいつ。まるで意味がわからんぞ。
「はぁ・・・つまんない」
「病人の前でため息とかやめてもらえます?」
「・・・ちょっと聞きたいことあるんだけどいい?」
「は? いきなりなんだよ・・・」
俺、なんかしたか?
「あのね、その、よ、吉川さんとは、その・・・どういう関係なの?」
震える声で、俺のことを見ながら言う木村。
吉川さん? どういう関係ってどういうこと? 俺と吉川さんってどういう関係?
んー・・・
「・・・オバケ役な関係?」
「はぁ!?」
「うそっ! ご、ごめんなさいっ」
ものすごい木村の放った気に圧されて、つい謝ってしまった。ビックリした・・・
「でもどういう関係ってどういうことだよ。別に同じクラスの人ってだけだろ。それ以上でも以下でもねぇって」
「・・・ホント?」
「嘘ついてどうするんだよ」
今日の木村変だろ。俺の熱が移ったのか?
あ、もしかして・・・
「大丈夫だって。もう俺とお前が仲良いのバレバレみたいだし。あっ、でもお前がオタクだっていうのは言ってないからな」
「は?」
俺との仲がバレるのを気にしてんのか?
そんなのアレだけ隠さずにしてればバレるっつーの。こいつバカだから気付かなかったんだろうな。バカだな。
「いや、私が聞きたいのはそういうことじゃなくて・・・」
「あれ、違うのかよ。じゃあなんだ?」
「だから・・・」
うつむく木村。
こいつ何言いたいのか全然わかんね。
こんな時に弟が乱入してきてくれれば通訳してくれんのに。
ってゆーか部屋に入ってきた時と比べてテンション落ちまくりだろ。
「あーもうっ! ちゃんと聞くからちゃんと答えてよね!」
「俺はいつだって真面目に答えてるっての・・・」
「吉川さんのこと好きなの!?」
「・・・はい?」
こいつ今なんて言った?
いやいや、まさかね。
俺が吉川さんを好きってか? 冗談だろ。
木村を見ると、まっすぐにこっちを見てくる。顔を真っ赤にしてこっちを見てくる。
これは冗談では無いな。
「す、好きっていうのはそういうことか?」
「そ、そういうことって?」
「その、俺が吉川さんと、つ、付き合いたいって思ってるかってことか?」
「そ、そういうことですっ」
うわぁ・・・こいつなんて事聞きやがるんだ。
仮にも俺は病人だよ? せめてもうちょっと思考回路が正常な時に聞いていただけると助かるんですけど。
「イエスかノーで答えるなら、答えはノーだ」
「ノー・・・」
「吉川さんはいい人だけど、たまたまオバケ役でディスられてるもの同士仲良くしてるだけで、あんまりそういう感情は持ってない」
「ノー・・・」
ハッキリと言い切ったのに、木村はどこか壊れてしまったようだった。
さっきからノーしか言わない。
「木村?」
「・・・はい」
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫・・・大丈夫」
ホントか?
「なんでそんなに俺と吉川さんのこと気にするんだよ」
「な、なんでって・・・」
何故か正座する木村。
何で正座?
「この際だから言っちゃうけどさ、あっ、でも深い意味は無いからね?」
「だからなんだよ」
「その、わ、私の気持ち知ってるでしょ?」
気持ち?
「私があんたのこと、す、好きだってこと」
・・・まだ好きだったんだかい。
てっきり友達って・・・いや、弟の友達ってポジションに落ち着いてたのかと思ってた。
めっちゃ深い意味じゃないですか。
ってことは、吉川さんに嫉妬してたってこと?
「す、好きとか簡単に言うなって言ってるじゃん」
「だって吉川さんと仲良さそうに喋ってるから気になるじゃん・・・」
「第一、俺のどこが好きなんだよ。お前ならもっとイケメンのリア充と付き合ったほうが絵になるって」
俺、何言ってんだ?
やべっ、よくわかんなくなってきた。
「絵って何よ。別に私は見た目にこだわってたわけでもないし、あんたのことなんか好きでもなかったのよ。でも」
「ちょっと待って! 今ここで聞いちゃうとなんかマズイ気がする!」
セイジョウナハンダンガデキナイトオモイマス!
「マズイって何よ。ここまで言ったんだからもう言わせてよ」
「いやいや。俺、病人だし! もしここで俺が断ったらどうするんだよ。また前の二の舞だろ」
「うっ・・・で、でももうあんたと吉川さんが仲良くしてるところ見るの嫌なのよ!」
「嫌ってなんだよ。別に喋ってるだけだろ」
「そうだけど・・・今日だって、吉川さんと話してる間はなんともなかったってことなんでしょ?」
「まぁそうだけど・・・」
「それって、熱を気にするぐらい楽しくおしゃべりをしてましたってことでしょ!」
「そういう意味じゃないだろ」
「じゃあどういう意味なのよ!」
すでに泣きそうな木村。
もうどうすればいいんだよ・・・泣きたいのはこっちだよ・・・
「紗枝ちゃん」
このタイミングで弟がドアを開けて入ってきた。
「お兄ちゃんだって困ってるでしょ。あんまりお兄ちゃんに言ったらダメだよ」
「弟くん・・・」
「お兄ちゃんは今熱があるんだから、そっとしておいてあげないと学校にも行けなくなっちゃうでしょ?」
「うん・・・」
どうも納得していないのか、不服そうに頷く木村。
「紗枝ちゃんの言いたいこともわかるけど、お兄ちゃんは病気を治さないと」
・・・いや、このまま木村を帰すのはマズイだろ。
それこそ悩みすぎて熱とか出しちゃいそうだ。
「幸人。もういいから」
「お兄ちゃん・・・?」
「いいから。あとは俺から言うから」
「でも・・・」
「幸人」
「・・・わかった」
弟はムスッとした顔を一瞬だけ見せて部屋から出ていった。
あとで謝っておかないとな。
「さてと。話の続きだ」
ここまできたら戻れないぞ俺! 熱なんて気合でなんとかしてやる! コンチキショー!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ストックが貯まったので、次の更新は22時ぐらいに投稿します。
次回もお楽しみに!




