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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
52/128

熱・下

学校からここまで歩いただけでも結構しんどいな。

保健室で結構寝たはずなのに、眠気が襲ってきた。『たくさん寝て早く直せ』というからだからの合図なんだろうか。


「大丈夫?」

「あーちょっと眠いかも」

「寝てけば? 近くなったら起こすよ」

「じゃあちょっと寝るかな・・・」


俺はまぶたを閉じると、すぐに眠りに入った。

なんか寝てばっか、と思った。



「もう着くよ」

「へっ!?」


木村にからだを揺らされて目を覚ますと、見慣れた駅の風景だった。

ってか、俺の頭が木村の肩に乗ってたような気がした。

もしかして木村に寄りかかって寝ちゃってたって事か。うわー恥ずかしー。


「ほら、立って」

「お、おう」


寝惚け眼で木村の言うとおりに立ち上がって、ホームに着いた電車から降りる。

俺、めっちゃ汗かいてるし。ベタベタして気持ち悪い・・・


「どう? 寝てスッキリした?」

「いや、汗かいて気持ち悪くなった」

「帰ったらシャワーでも入んなさい」


お前は俺の母さんか。

言われなくても入るっての。


「さっき弟くんからメール来てたよ」

「なんだって?」

「スポーツドリンクとか買っておくってさ」


さすが気の利く弟だ。今度一緒にゲームをしてあげよう。


「ここまで来ればもう大丈夫だからさ。一人で帰る。ありがとな」

「何言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

「いや、だってあんまり迷惑かけられないし」

「ふん。ここまで来たら家まで行くに決まってるでしょ」

「でも帰ってシャワーとか浴びたいし」

「別に覗きなんてしないわよ。覗いてほしいなら別だけど」

「断固拒否します」


超変態なんですけど。

俺の答え何か聞いていなかったようで、木村がスタスタと歩いていってしまった。俺を送っていってくれるんじゃなかったのかよ。

木村について行く形で一緒に帰る。

少し歩くと、前を向いたままの木村が言った。


「全く。なんで熱なんか出してるのよ。ビックリするじゃん」

「俺もビックリしたんだって。なんかふらつくなーって思ってたら、熱あったんだもん」

「どうせ吉川さんと話してて気付かなかったんでしょ」


確かに吉川さんと話してる時は全然気がつかなかった。

トイレの前まで行って、木村に会ってから気づいた。なんともバカな話だ。


「確かに話してる時はなんでもなかったんだけどなぁ」

「どれだけ夢中になって話してたのよ」

「夢中ってゆーか、吉川さんの話聞いてたら気付かなかったってゆーか、朝からちょっとはふらつくなーとは思ってたんだよ?」


俺、なんで言い訳みたいになってんの?

きっと木村の口調が怒ってるように聞こえたからだ。


「目の前で倒れたから何事かと思ったじゃん」

「・・・ごめん」

「バカ・・・」


それっきり黙々と歩いていく木村。

熱のせいでいつもより歩くのが不自由なため、木村の歩くスピードが早く感じた。多分いつも通りのペースなんだろうけど。

そして歩いて歩いて、やっと我が家に到着。

窓から弟が見ていたのか、玄関を開けて出迎えてくれた。


「・・・おかえり」


なんだその間は。

お兄ちゃんが熱を出して帰ってきてのがそんなに珍しいのか。


「ただいま」


挨拶もそこそこに家の中へと入る木村。

いや、ここお前の家じゃないから。


「おい、木村」

「せっかく送ってくれたんだからいいでしょ。紗枝ちゃんは僕の友達だよ」

「まぁお前がそう言うなら・・・」


しぶしぶではあるが、木村を招いてしまった。

木村はリビングへと向かい、ソファーに座った。

とりあえずシャワーに入って着替えて横になりたい。

弟にカバンをあずけて、そのまま洗面所へと直行した。

制服を脱いで、裸になり、シャワーを浴びる。

さっきまでベタベタになっていたからだを洗い流して、早く出る。あまり長く入りすぎるとまた熱が出てしまうかもしれないからな。

からだを拭いて、弟が用意してくれたらしい寝巻きを着て、部屋へと向かおうと階段に足を置いたところで弟と会った。


「なんか飲む?」

「あーポカリが良い」

「わかった。あとで持ってくね」

「悪いな」


そう言うと、リビングへと弟は消えていった。

俺は部屋に入ると、すぐに布団にくるまって横になった。

あー楽ちん。快適だ。

しばらく横になっていたのだが、なかなか弟がポカリを持ってきてくれなかった。

どうしたんだ? 俺がアクエリアスよりもポカリ派なのは、家族全員が知っていることだ。

まさかスポーツドリンク買っておいたとか言って、アクエリアス買っちゃったとか? それともゲータレード? まさか・・・エネルゲン? あれってまだ売ってるのか?

さすがに遅いと思った俺は、階段を降りて弟の様子を見に行くことにした。

するとリビングから木村と弟の声が聞こえてきた。


「私どうすればいいのかな?」

「それは僕が決めることじゃないと思うよ。紗枝ちゃんが決めないと」

「弟くんは優しいね」

「僕なんかで良いの?」

「ふふ。ありがと」


なんか聞いちゃいけないような会話じゃね?

ここで『おい、飲み物まだかよ』なんて言っていける奴はかなりの大物だ。

とはいえ、弟と木村が何の会話をしているのか気になる。

気になるけど聞いちゃいけない気がするけど聞きたいけどダメだ。

もう熱が上がってきたのか、また思考回路がショートしかかかっている。

立ってるのが辛い・・・

ふらふらと後ろに下がってしまい、階段につまづいて、ドンっという大きな音と共に、階段の一番下に尻餅をついてしまった。慌てて立とうとしたのだが、からだがいうことを聞かず、その場でもがくだけだった。

その音に反応したのか、弟と木村がリビングから出てきた。


「何してるの?」

「ちょっと飲み物を取りに・・・」

「今持っていこうとしてたのに」

「そっかそっか。んじゃあ部屋戻ってるわ」


なんとか這い蹲る(はいつくばる)ように階段を登って、這うように部屋へと戻った。

もう眠ってしまいたい気分だった。

なんか熱のせいなのかわからないが、こう、スッキリしない感じだった。

少しして弟がポカリを持ってきてくれた。

俺はそれを一気に飲み干すと、布団に潜って寝たふりをした。

どうしても眠りにつけなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


シリアスなシーンが続いてますが、まだ続きます。

ご了承ください。


次回もお楽しみに!

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