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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
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気になるんだから仕方ない

学校祭準備が始まって、早1週間と4日。

土日も挟んでるから、実質は1週間。

俺は、雑用とか掃除をメインでやる代わりに、『怠惰』という権利を得た。

まぁカッコよく言ってみたけど、要するにオバケ役としては、服飾の技術が無い奴はすることがないだけであった。

それは今隣で惚けている吉川さんも同じようで、ボケーっとクラスの様子を窓の前にしゃがんで見ていた。俺はその隣で立っているだけ。

することがないなら帰りたいところだが、これも授業の一貫であるというんだから困ったものだ。

時間割の変更のせいで、午後の2時間分は全部が学校祭の準備に割り当てられていた。

これがあと1週間続くのかと思うと、ますます酷だ。

しかも学祭の3日前からは、一日中準備時間に割り当てられているのだからたまったもんじゃない。


「はぁ・・・暇ですねぇ」

「ですね」


隣で退屈そうに吉川さんが言った。

吉川さんの場合、やる気はあるのだが、技術が追いついていなくて、やる気だけが空回りしていた。そのせいもあってか、余計に退屈そうに見えた。

一方俺は、時間を潰すのは得意分野なので、特に退屈でもなかった。

まぁ退屈な人というのは、やたらと誰かに構って欲しくなるというもので、その対象が隣で立っている同じく暇そうな奴になるのもまた自然の摂理なのだ。酒が無くなるのも自然の摂理なのだ。

そしてこうやって二人でボーッとする時間が多くなったせいか、吉川さんと話す頻度は多くなっていた。

そんな時間が3日もしてくると、互いに互いのことに慣れてきて、最初の頃のようなビクビクオドオドといった感じは無くなっていた。


「こんなに暇だと困るよね」

「そうでも無いかな」

「私も参加したいなぁ」

「当日参加するからいいじゃん」

「嫌なのっ! もっと準備期間とかも参加して、みんなで『終わった!』っていう達成感を味わいたいのー!」


わがままな人だ。

それなら違うところに入れば良かったのに。それこそクラス設営とかに回ればいいのに。

達成感もあるだろうし、重要な役割だと思う。肉体労働だけど。

そんなことを聞いてみた。


「私、力無いし・・・」


確かにか弱いオーラ出てる。雰囲気は小動物だもん。

これで力が強かったら、もうイメージ丸崩れだよ。『ピアノを少々・・・持ち上げることです』的な感じだよ。


「私、もっとみんなと青春したいの」

「青春・・・」

「そう。せっかくの高校生活なんだし、出来ることは色々やってみたいの」

「ふーん」


特に興味はなかった。

青春とは俺には無縁な言葉だ。


「今まで青春っぽいこと何かしたん?」

「えーっとね、放課後の寄り道でしょー、公園でゴミ拾いでしょー、徹夜でメールしたでしょー、友達の家に泊まりにも行ったなぁ」


なんか一個違うの混じってない?


「でもまだやりたいことはいっぱいあるんだよねー」

「まだあんの?」


俺なんかまだひとつもやってないぞ。やる予定も無いけど。


「あとは合コンとかー、ピアス開けたりとかー、授業をサボるとかもしてみたいなー。チラッ」


口で言うな。


「別に授業サボったけどさ。でもあんまりいいもんじゃないぞ。なんか罪悪感があふれ出てくるし」

「そうなの? じゃあやらなーい。合コンとかは? お互いの友達とか呼んでやらない?」

「やらない。友達いないし」

「うわ・・・ホントに?」

「嘘ついてどうするんだ」

「そっか・・・なんかごめんなさい」

「別に」


こう話を聞いていると、吉川さんって結構ぶっ飛んだ感じの人なのな。

平気で校則破ってみたい宣言しちゃうし、合コンなんてリア充の戯れでしょ。

要はリア充になりたいってことなんだろうか?


「吉川さんって、リア充になりたいの?」

「リア充?」

「充実したリアルを過ごしてる人のこと」

「リアル以外で何かあるの?」

「えっと・・・」


なにこの子。純粋過ぎ。

きっとエロイ単語言っても全然動じないんだろうな。『私気になります!』とか言って迫ってきそう。


「例えばネトゲとか」

「ネトゲとかするの?」

「まぁ・・・一応」

「ふーん。楽しい?」

「楽しい、かな」


なんでこんなこと聞かれないといけないんだ。答えづらいし、なんか恥ずかしい。


「じゃあ私もやってみようかなー」

「えっ、マジで?」

「うん。なんてやつ?」

「えっと、色々やってるんだけど・・・」

「じゃあ一番やってるのは?」

「あー・・・ん?」


何かあったかなぁと思いつつ初心者オススメのネトゲを思い出そうとしてクラスを見回して気がついた。

木村いなくね?

さっきまですぐそこでそこの友達らと一緒に作業をしてた気がしたんだけど・・・

あれって質量のある残像とかそんな感じのやつ? それとも影分身?

なにやらちょっと変に思ってしまうと、人間は気になってしまうものである。


「ちょっとごめん。トイレ」

「あ、うん」


俺は吉川さんに断りを入れてから教室を出た。

もちろん・・・もちろんと言ったらちょっと変だけど、木村を探すためだった。

らしくないかもだけど、気になったんだから仕方ないじゃん。

この時、初めてえるちゃんの気持ちがわかった気がした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとウルトラハッピーです。


さてさてぼっちくんが動き出しました。


次回もお楽しみに!

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