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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
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聖母幸人

気がつくと、隣の部屋から聞こえる騒音が聞こえなくなっていた。

終わったのか?


「ちょっと見てくるわ」


弟に声をかけてから立ち上がり、様子を見に行った。

帰ったということは無いだろう。

ドアの前に立つと、静けさが異様な雰囲気を醸し出していた。

そして、半開きになっているドアから中を覗いてみた。

するとそこに広がっていたのは、真っ白な羽達だった。


「ってうぉおおい!?」

「「あっ」」


木村とちびっ子が声を揃えて言った。

二人とも『やべっ、見つかった!』みたいな顔をしていた。

どうやら俺の気持ちよく眠るためのアイテム『羽毛枕』で強烈な投げ合いを繰り広げていたところ、枕の強度がついていけなくなり、破けてそこから羽が溢れ出してしまったということらしい。こんなの見てわかるわ。想像しやすい。

とりあえず自主的に俺の目の前に並んで正座する二人の前に仁王立ちした。

二人と俺の間には、すっかりとやせ細ってしまったかわいそうな枕がある。


「さてと。状況は見てわかった。だから説明はいらない」

「綺麗じゃない?」

「綺麗じゃない!」

「うっ・・・ぼっちのくせに・・・」

「お前、今度から俺ん家出入り禁止な」

「それだけはご勘弁を!」


何が『ご勘弁を!』だ。遠山の金さんじゃねぇんだっての。桜吹雪なんて描いてねぇよ。

こいつ全然反省してないだろ。

あとぼっちは関係ない!


「人んちでこれだけやっておいて、まだ言い訳するのか!」

「・・・すみませんでした」

「わかればいいんだ。わかれば。次にそこのガキ!」

「カレンもですかぁ・・・」

「当たり前だろ。お前も俺にとっては加害者だ!」

「カレン、難しいことわかんなーい」

「かれんちゃんはおれのだいじなまくらをこわしました。おれはかなりしょっくです。かれんちゃんはわるいこです」

「うっ・・・ごめんなさいでした・・・」


懇切丁寧に説明する俺の誠意が伝わったのか、あっさりと自分の罪を認めた。

最近のガキはバカだバカだと思っていたが、意外と理解能力は優秀らしい。

どうやったら最近の子どもみたいなのにできるんだろうな。

頭は金髪なのにランドセル背負ってるし、なんかケータイがデコレーションしてあるし。

あんなの二次元の中だけにしておけよって思う。

俺の子どもには、変な名前はつけないし、まっとうな日本男児として生きてもらう。

日本男児って言っても、戦時中の『撃てぇ! 弾がなくなるまで撃ち尽くせぇ! 全ては天皇陛下のためにぃ!』みたいな日本男児じゃなくて、今流行りの草食系男子みたいな感じになってほしい。

ってゆーか草食系男子って言うけどさ、そもそも肉食系女子が増えすぎたんだと俺は思うんだよね。

そのせいで草食系・・・ってゆーかもともと大人しかった男子を狙う女子が増えてきて、それで肉食系だの草食系だのって言われるようになったんだ。あとロールキャベツ系男子とかアスパラベーコン男子とかっていうのもあるらしいけど、もうただの見た目の話じゃね?

俺がこんなことを頭の中で考えているとは知らずに目の前の二人は、シュンとして反省しているようだ。

うむ。実に良いことだ。

俺がここまで人を見下せる機会っていうのはないから、この際思う存分見下してやろう。

フフフフフ・・・ハッハハハハハ!! 我にひれ伏せ愚民ども!!


「お兄ちゃん」


・・・一瞬聞かれたかと思ったけど、正座組が相変わらずシュンとしていたのでそれはないようだ。

後ろを見ると、弟が立っていた。相変わらず浩一くんは放ったらかしなのな。


「なんだよ」

「やりすぎ」

「いやいや、こいつらのほうがやりすぎだろ」

「許す心も大事」

「くっ・・・」


なんだこいつは。ウチの弟は化け物か?

シャアもビックリの高性能弟だな。

君のご先祖様は釈迦かブッタかい? それとも神の子だったのかい? 俺とは血が繋がってないのかい?


「紗枝ちゃん」


名前を呼ばれて顔を上げる木村。


「かたづけてね」

「・・・はい」

「可憐ちゃん」

「はい。幸人くん」

「可憐ちゃんも一緒にかたづけてね」

「・・・わかった」


弟に言われて静かに片付け始める二人。

さっきまでケンカしていた二人がこうやって一緒に同じことをしている。

俺は弟を見た。


「ん? どうしたの?」


不思議そうに俺のことを見ている弟。

優しいとかそんなレベルじゃねぇ。もしこの世界に聖母が居るんだとすれば、そいつは完全に弟のことだと思う。

もしも俺が『ド畜生がッ!』って言いながら犬を蹴ったとしても、それを優しさで浄化できそうなくらいの聖母っぷりだ。

俺にはないカリスマ性。きっとスタンド使いになれるのは、俺じゃなくて弟のほうなんだろうなぁ。俺は肉の芽でも埋め込まれとくわ。ディオ様、お願いします。


「お兄ちゃんは二人を見ててね。またケンカしたら困るから」

「あ、はい」


そう言って浩一くんの待つ自分の部屋へと向かう弟。

その背中は華奢ではあるがとてもカッコよく見えた。

俺が女ならあんな優しい人と付き合いたい。いや、結婚したい。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


幸人くん、マジ天使。


次回もお楽しみに!

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