顔文字絵文字
木村とは結局一緒に帰ることもなく、そのまま夜。
ネトゲの世界に潜り込んでいると、メールが届いた。
送り主は言うまでもない。
『結局一緒に帰れなかった・・・orz』
なんで残念がってるんだよ。
ってゆーかもうちょっと行動を自重するべきだと思う。このクソ単細胞女。
とりあえず返信っと。
『三人で帰ったのか?』
すぐに着信。
『うん。夏希が盛り上がってたんだけど、渡辺が暗くて・・・私、渡辺苦手ー↓』
だろうな。俺もそうじゃないかと思ってた。哀れなり渡辺。
俺も渡辺は気に食わん。
人に向かって睨み利かせてくるような奴は嫌いだ。
もし仲良くなりたいとか言ってきたら『片腹痛いわっ!』って言って一喝してやるんだ。ワクワク。
『俺も嫌いだ』
『き、嫌いとか今の私には刺激が強すぎう・・・ばたんきゅー』
こいつ・・・なんかメールの文章キモくなってきた。
これ本当に木村か?
『なんかメールの文章キモイけど、本当に木村だよな?』
『それは酷いっ!(>Д<)』
『俺の知ってる木村は顔文字なんて入れてこなかったのに』
『やっぱり変かな?』
変ってゆーか・・・メールに顔文字っていらなくね?
絵文字とかデコメとかもそうだけど、こんなただの連絡手段にそんな装飾は必要ないと思う。
電話なんて見てみろ。もう声と声のやりとりだぞ。飾りっけ0だぞ。
そんなことを木村に送った。
『なんか怒ってる風に見えない?』
『そうか?』
『「別にあんたのことなんか友達として思ってないから」と「別にあんたのことなんか友達として思ってないからヽ(`Д´)ノ」だったらどう思う?』
うーん・・・前者はツンデレに見えるし、後者はツンデレに見える。
俺の目が腐ってるのか?
『どっちもツンデレに見えた』
『えぇっ!?ヽ(´Д`;)ノ』
『その顔文字おもろいな』
俺からしてみればAAとあんまり差がないんだけど、必要性も感じない。
なくても流れと文面でどうにでもなるだろ。
そんなに感情を伝えたいなら電話でもなんでもすればいい。
『ダメだ。会話にならない。顔文字やめますー』
『勝手にしろ』
木村からのメールが止まった。
寝たのかと思って、時計を見てみたが、時刻は午後9時。
良い子は寝る時間だが、高校生は良い子じゃないので、寝るにはまだ早い時間だ。
すると着信アリ。あれ怖かったなぁ。
『メール読み返してた。渡辺は悪い奴じゃないんだけど、なんか暗いんだよねー』
『お前の友達はクールだのって言ってるじゃん』
『クール系とかダメなんだよねー』
まぁクールと暗いは紙一重だからな。
オタク=暗い、イケメン=クールだからな。この方程式はずっと続いてきて、これからもずっと続いていくんだろうなぁ。イケメンならなんでも許されちゃう世の中だからな。イケメンも爆発しろ! そして顔歪め!
『そういえば渡辺に楽しいかどうかって聞いてたけど、お前は楽しいかどうかで判断してんの?』
『大人になってからはわかんないかもしれないけど、今は楽しい方が楽しいじゃん』
合ってるんだけど日本語の使い方が間違えてますね。
そりゃ楽しい方が楽しいのはわかる。楽しいからな。でもその理由にはなってない。
カラスが黒いのは黒いからと言っているようなもんで、『あ、ですよねー』って言うしかなくなる。
ということは、俺とこうやってメールしてるのは楽しいってことか。
ちょっと優越感。渡辺ざまぁ。
『まぁ楽しいのはいいことだよな』
『でしょ? 友達と遊ぶのも楽しいけど、アニメ見たりするのも楽しい!』
『よく周りにそのオタク隠し通せてるよな』
『みんな興味なさすぎて話題にも上がってこないからね。ドム子なんかはよくバカにしてたけど、他は全然興味ないみたい。大衆向けマンガとかにしか興味無いって言ってた』
果たしてこいつの言う『大衆向けマンガ』とはどこまでが含まれているのだろうか?
メジャーなところはほとんど含まれていて、マイナーなところらへんからがオタク向けになるのだろうか? 難しいところだ。
『お前からしてみたらほとんどが大衆向けマンガじゃん』
『そんなことないですー。ちゃんとそのへんはわきまえてますー』
『へいへい』
『ちょっとバカにしてるでしょー』
『どっちかっていうと、一周回って感心してるかな』
『そう? えへへ、褒められちゃった(照』
『いや、お前のオタク度を友達が知ったらどうなるんだろうな?』
『引くかな?』
『それはどうだろうか?』
『どうだろうか? やっぱり引くよね。だってキモイもん』
自覚症状あったんかい。でも引き返せない。それがオタク。
『まぁその時はその時じゃね? なんとかなるって』
『そうだよねー。もし引かれてもあんたがいるしね』
たいしたこと言ってないはずなんだけど、これはこれでなんか照れるな。
俺は照れ隠しというわけでもないが、ちょっとそっけなく返した。
『まぁな』
だってあんまり言い過ぎて木村とフラグが立っちゃうのも嫌だし。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
渡辺ェ・・・
次回もお楽しみに!




