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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
35/128

渡辺

夏休み明けの最初の授業。

まぁいつも通りの授業。

授業はいつも通りなのだが、木村の動向が全然いつも通りじゃなかった。

どう考えても気にしているようだった。

何を気にしてるかって? 言わせるな。


「き、木村?」

「なっ! なんでしょうか!?」

「・・・なんでもないです」

「そうですか・・・」


お互いに小さくため息をついた。

なんか疲れる。

今日登校してからずっとこんなんで、キョドりまくりの緊張しまくり。

絶対に俺との接し方に慎重になりすぎてて、逆に酷くなってる。これはひどい。

そんな俺と木村は周りからどう思われてるのかと思ったけど、案外気にされてないみたいで、木村の友達が『紗枝のテンション高くない?』って思われてたぐらい。

そういえば、前よりも木村が俺と学校で話すようになった。

今までは『話しかけたら殺す』って言われてたのが、『話しかけてもいいけど大きい声で話さないで』ってぐらいまで許可された。

そしてなによりも暴力が減った。これで幻の左と黄金の右をもつ俺の足は無事にサッカー界にもたらされることになりそうだ。あとはサッカー界からの要請を待つだけだな。

そんな俺の安定しつつある学校生活に、変化が起きた。いや、変化はもう起き始めてるんだけど、さらに変化が起きた。


「木村」

「あ、渡辺」

「一緒に帰らね?」


やたらと木村を狙っていると思しき、渡辺(わたなべ)という男が頭角を現してきたのだ。

渡辺は、結構硬派なところがあるみたいで、あんまり騒いでる印象はないが、それが逆にクールな感じに見えるらしく、女子からの人気はそれなりにあるっぽい。俺ペディア参照。

黒髪短髪にスラっと高い身長、部活はサッカー部。うまいのかどうかはわからない。

まぁ俺としては木村がそっちに流れていくことで、俺の自由な時間が増えていくからいいんだけど・・・いや、ちょっとさみしいかな。ちょっとだけね。カトちゃんが言うぐらいのちょっとだけよ。

ぼっち歴が長いと、友達との付き合い方っていうのもわからないし、木村と遊ぶよりもまだネトゲしてたほうが楽しいのは事実だ。

しかし、木村のことを(弟の)友達認定してしまったがために、離れて行かれるとちょっとさみしいかなーって思うんだわ。

飼っていたハムスターに逃げられる感覚。もしかすると『ヘケッ!』とか言って大将君とかと地下基地で遊んでるのかもしれないけど、脱走された人間側からするとさみしいものである。ハムスターなんて飼ったことないけど。イメージイメージ。

そんな渡辺に好意を寄せられている木村なのだが、どうにもその好意に気づいていないらしく、適当に断ってばかりいる。


「あ、ごめん。今日用事あるんだ」

「そっか。ならいいや。またな」

「うん。ばいばーい」


どうしてこんなに急に木村にまとわりつくようになったのか。

それは俺にはわかる。

多分、あのドム子とのケンカで見せた木村を見てしまったからなのだと俺は考えている。

普段は大人しい(木村の友達談)木村が、あんなに激情している木村を見てときめいたのだろう。

いわゆるギャップ萌えってやつな。

もう『心臓がチクリ』とか優しいもんじゃなくて、『ズキュゥゥウウウン!!』ってぐらいの衝撃だったのだろう。

そしてそんな渡辺は、木村に断られるたびに、俺をチラッと見ては舌打ちをしていく。

俺のことを見てくれるなんて、なんて優しい奴なんだ。

このクラスの人間が俺のことを人間扱いしてくれたのは初めてだ。

なんて嬉しく思うほど俺は出来た人間じゃない。

そこまで頭がお花畑だったらぼっちなんてやってないっつーの。

とにかく渡辺には殺意以外を覚えていない。

いつも頭の中では暗殺日記とデスノートが開かれているのだが、いまだに効果は見られなかった。

俺は帰る仕度を済ませて、教室のところに溜まっていたリア充どもが居なくなったのを見計らって席を立った。


「私も帰ろーっと」

「あ、紗枝帰っちゃうの? じゃあ私も帰るー」


どうして同じタイミングで帰るし。

俺が気にせずに廊下を競歩ペースで歩くと、木村がトテトテと小走りで追いかけてきた。


「紗枝ー。歩くの早すぎー」


こいつもう歩いてませんよー。両足が浮いてる瞬間がある時点で失格だからね。これ市民マラソンペースだからねー。

そんな俺の心の声も虚しく、木村の友達は追いかけるのをやめた。

そして木村が追いついてきた辺りで、俺は競歩ペースの歩きをやめた。


「なんでついてくるんだよ」

「べっ! 別に私の勝手でしょ!」

「大きい声出すなって言ったのはどこのどいつだよ」

「あんたが悪いんでしょ」

「なんで俺のせいになってるんだよ。俺ん家まで付いてくるつもりだったのかよ」

「ダメなの?」

「ダメだろ。それストーカーだろ」

「友達の家に行くのが犯罪なの?」

「いやいや。犯罪じゃないけどさ。犯罪じゃないけど、一応俺の許可取れよ」

「行ってもいい?」

「ダメ」

「ほら。結局断るんじゃないの」


そういう問題じゃないでしょ。


「木村」

「げっ」

「渡辺。どうしたの?」

「どうしたのじゃないだろ。俺とは一緒に帰れないって言ってたのに、そいつとは一緒に帰るのかよ」


こんな廊下の真ん中で喋ってるから目立つんだって。

こいつ本当に隠す気あるのか?


「渡辺と一緒に帰ったら楽しいの?」


すごい質問だ!


「楽しいかどうかって聞かれると・・・」

「なんか渡辺ってあんまり笑わないじゃん? だからよくわかんないんだよねー」

「やーっと追いついたー。渡辺も一緒に帰るの?」


まだ追いかけていたのか、追いついてきた木村の友達が渡辺と木村を交互に見た。俺は安定のスルー。ホントに俺のこと見えてないんじゃね? 俺、ステルス迷彩着てたっけ?


「私はもう帰るよ。玄関までなら一緒に行く?」

「あ、うん」

「よーし。じゃあ三人で玄関まで行こー!」


木村の友達が間に入って、渡辺と木村の腕を取って玄関へと向かっていった。

そして俺は安定のスルー。パート2。

俺は少し距離をとって、後ろに続く形で玄関へと向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけるとモチベーションが果てしなく上がります。


渡辺くんはいろいろといろいろなキャラです。

僕の作品には普通のキャラは出てきません。


次回もお楽しみに!

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