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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
32/128

夏休みボケ?

逃げ帰ったあの日から、時が止まることもなく、ひきこもりつづけた夏休みが終わってしまった。

極力外に出ず、ごみ投げとトイレと食事の時以外は部屋からも出なかった。

毎度思うんだけど、味気ない夏休みだ。

・・・今年はいろいろあったか。

木村からの連絡が怖くて、ケータイの電源は切りっぱなしだ。

だからメールが来てるのかどうかもわからない。

だから電源をつけるのもちょっと怖い。

告白されて怖いってどうなのって思うかもしれないけど、怖いものは怖い。

人との馴れ合いを極力避けてきたのに、急に告白だなんだと言われたら怖いってばよ。

まぁなんにせよ、夏休み明けの学校には行きたくない。正確には木村に会いたくない。

どんな顔して会えばいいのかわからん。

大体、本州の学校は8月いっぱいは夏休みなのに、北海道は8月半ばまでとかどんな嫌がらせだよ。国家内差別だよ。朝の子ども劇場が毎回最後まで見れないんだ。くやしい。

こんなことを言っていても何も変わらないので、とりあえず下に降りて朝ごはんを食べるために、リビングの食卓に座る。


「あれ?」


いつもなら目の前で先に座ってるはずの弟の姿がない。

まだ夏休みなのか?


「あいつまだ夏休みだっけ?」

「違うわよ。お兄ちゃんと同じで、今日からだけど・・・おかしいわね。ちょっと様子見てきて」

「めんどくさ」


文句を言っても効果は無いので、小さく愚痴を言ってから立ち上がって弟の部屋へと向かった。

部屋の前まで来た俺は、とりあえず部屋の外から呼びかけてみる。


「おい。いつまで寝てるんだ。遅刻すんぞー」


・・・へんじがない。ただのしかばねのようだ。

弟がしかばねになってると、それはそれで問題なので、ドアを開けて中に入る。


「おい・・・って起きてるなら降りてこいよ」


中に入ると、ベッドの上に座ってボーッとしている弟が居た。


「あ、お兄ちゃん」

「なんだよ。眠りの家にでも行ってたのか?」

「うーん・・・わかんない」


これはおかしい。

いつもなら『眠りの家? なにそれ?』とか言ってきそうなもんだが、今日はそれが無い。

どこか魂が抜けてしまっているような感じだ。


「んー・・・熱はないみたいだな。ご飯食べれるか?」

「あ、もうそんな時間なんだ。下に行かないとお母さんが心配するね」


そう言って立ち上がると、フワッとした足取りで階段を降りていく。

途中で落ちたりでもしたら危ないので、後ろについて階段を降りた。

食卓につくと、朝ごはんは準備されていて、それを弟と二人で食べた。

食べている最中は特に変わったところはなかったが、それでもちょっと気が抜けてる感じもした。

夏休みボケというやつだろうか?

それならそれでいいのだが、真面目な弟がそんなのにかかるとは思えなかった。

やっぱり何かあったのだろうか?

しかし今は食事中だし、母さんもいる。あとで聞いてみることにした。

そして朝ごはんを食べ終わり、自分の部屋に戻る途中の弟を部屋へと連れ込んで聞いてみた。


「なんかあったのか?」

「うーん・・・お兄ちゃんと紗枝ちゃんはケンカしちゃったの?」

「えっ!?」


まさかの小細工なしのど真ん中ストレートに驚いて、強振で空振りしてしまった。

もしかして俺のことで悩んでたのか?


「ケ、ケンカ?」

「うん。最近、紗枝ちゃんからも連絡無いし、ウチに遊びに来なくなっちゃったし・・・」

「いや、まぁその・・・なんてゆーかさ、大人の事情ってやつ?」

「もしかして僕が悪いの?」

「いやいや。お前は全然悪くないって。むしろ関係ないってゆーか・・・」


言ってることは正しいはずだ。

嘘はついてない。


「僕が紗枝ちゃんとお兄ちゃんの邪魔しちゃったからなの?」


弟の声は震えていた。

こんな弟を見るのは初めてだった。

いつもは無関心そうに世界を見ているような弟が、今にも泣き出しそうな目をして俺のことを見ている。

もしかすると、こいつは俺と木村が距離を置いているのを、自分のせいだと思い込んでるのか。それでちょっと悩みすぎてボーッとしてるのか。

俺は、そんな弟の頭に手を置くと、そのまま頭を撫でた。

こうするのは実に何年ぶりのことだろうか。小さいときに転んで泣いた弟を励ましたときにやった以来だと思う。


「安心しろ。お前は悪くないって。これは俺と木村の問題だから。またあいつも遊びに来るから。安心しろ」

「ぜったい?」

「絶対だ。だからあんまり難しく考えるな。悩みすぎるとハゲるぞ」


俺の言葉を聞いて安心したのか、それともリミッターが外れたのかわからないが、弟は俺に抱きついて泣いた。

こんなに悩んでたなんて予想外だった。

俺は泣いている弟の頭を撫でながら、木村と話をしようと心に誓った。


「ぐすん。鼻水ついちゃった」

「わっ! バカ! これから学校行くんだから制服に鼻水付ける奴があるか! ほれ! 鼻かめ!」


元気が出たのやらなんなのやら。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


さてまた一波乱。


次回もお楽しみに!

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