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ぼっちデイズ  作者: シュウ
二章
29/128

木村と弟

どう考えてもおかしい。

夏休みが半分以上過ぎていることはどうでもいいんだ。

残りの夏休みは、宿題も終わったし、扇風機が働く部屋の中でネトゲ三昧するんだ。

いやいや。俺が言いたいのはそこじゃない。

どうして木村が俺の部屋で漫画を読んでいるのかということだ。

前に来たときから一週間は経っているんだけど、毎日のように押し掛けてくるわけ。

なんでも漫画の続きを読みたいからとのこと。漫画喫茶じゃないんだけど。

なんなの? 幼馴染みにでもなったつもりなの? 俺は認めないからね。

木村専用の場所となりつつある本棚の横では、いつものように木村が壁に寄りかかりながら体育座りをして漫画を読んでいる。


「あのぉ・・・」

「今いいところだから発言は自重してね」

「あ、じゃあいいです・・・」

「ん」


あれれぇ? なんかおかしいよぉ?

僕の部屋なのに木村さんのほうが主導権を握ってるよぉ?

こんな感じで、いつも俺からの発言は遮られてしまう。質問すらままならない。

確かにあのマンガは面白い。そして楽しんで読んで好きになってくれるのもとても嬉しい。

自分が好きな作品を勧めて、他人がそれにハマってくれた時の高揚感はたまらない。

しかし。しかしだ。

何もウチで読むことないよね。貸してあげるから自分の家で読めよ。

もちろんこれはもう木村には言った。

その時の答えは


『重いじゃん』


とのこと。

なんだこいつ。何様のつもりだ。

『私ぃー、お箸よりも重いもの持ったことないのぉ』ってやつか!?

お前が持ってるそのカバンは何キロなんだよ! 箸よりも軽いんだろうな! それともお前が使ってる箸は鉛で出来てるのか? それとも純金製なのか!? 

・・・脱線してしまった。

持って帰ればいいじゃんね。そのほうがゆっくり読めるし、夕方になって『そろそろ帰れー』とかって言われずに読めるんだよ? 移動時間とかも気にせずに読めるんだよ?

もちろんこれも木村に言った。

そしたら


『なんかこうやって毎日本読みに来るのって楽しくない?』


だってさ。

んなわけねぇだろぉ!!

毎日毎日来られるこっちの身にもなってみろってんだ!

来るたびに弟から『やったね。お兄ちゃん』みたいな目で見られるんだぞ? あれ、なんかちょっと辛いわ。

それに俺と木村はそういう関係じゃないでしょ。ただの・・・百歩譲って友達だとしよう。その友達だって毎日は来ないでしょ。

もちろんそれも木村に言ってやった。

そしたら木村が


『細かいことは気にしない方がいいよ?』


ってさ。

そんなに細かいことか?

これって俺の夏休みの生き方を大きく左右することだと思うんだよね。

人の人生を大きく左右するようなことは、たとえ神様でもしないと思う。だって神様は見てるのが仕事だもん。

たとえ国会のトップが入れ替わろうとも、たとえ国と国の間にある島の取り合いをしていようとも、たとえ発売日に欲しかった商品が売り切れていようとも、神様は何もしてくれない。ただ見ているだけだ。

そんな神様でもしないようなことを、木村は平然とやってのける。そこにシビレも憧れもしない。一体何様のつもりだよ。

と、たった今言ってやった。


「木村様よ」


うわぁ・・・こいつめんどくせー。


「今、めんどくさいとか思ったでしょ」

「思った。超思った。思ったからこんな嫌な奴の目の前からさっさと消えてください」

「だが断る」

「勘弁してくれよ・・・」

「別にあんただってパソコンいじってるだけでしょ?」

「そうだけどなんか落ち着かねぇじゃん」

「じゃあどっか出かける?」

「出かけたくない。夏休みとか人多いじゃん」

「まぁそうだけど・・・せっかくの夏休みよ? どこも行かないつもり?」

「そんなに行きたいならお前の友達と行けよ。無理に俺を誘う必要とかないって」


こいつだって友達いるんだろ。

たとえば夏希ってやつ(苗字知らない)とか、あのドム子・・・はもう友達じゃないんだっけ。他にも伊織(苗字知らん)とかいるじゃん。


「だってみんな彼氏と一緒に出かけてるんだもん」

「じゃあお前も頑張って作れよ」

「ふんっ」


なんなのこの子・・・


「とにかくいい加減にしてくれ。どうせ宿題とかやってないんだろ? 家帰ってそれやってろよ」

「えっ、あんたもう終わってるの?」

「もちろんだ。だから帰ってくださいー」

「わからないところがあるんだけど教えてくれない?」

「だが断る」

「別に良いじゃん。じゃあ写させてよ」

「それも断る」

「ケチー。弟くんに言いつけてやる」

「あっ! ちょ・・・っとそれは勘弁してください・・・」


こいつ、俺が弟に弱いの完全に知ってるな。

弟はこういう時は常に精神攻撃を仕掛けてくる。

俺はあの無機質な目で見られながら言い寄られるのがすごい苦手だ。

なんか頭がおかしくなってくる。


「・・・わかったよ。プリント持ってきてんのか?」

「持ってきてないから、勉強は明日からね」

「・・・もう好きにしてくれ」


俺はこれからも弟と木村のタッグに勝つことはできないような気がした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


純粋だけどよくわからない弟です。

一日おきの更新です。


次回もお楽しみに!

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