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ぼっちデイズ  作者: シュウ
一章
26/128

励ましと肉食系

今日一日の授業が終わり、放課後。

教室内の雰囲気はいつもと違い、ピリピリ・・・いや、無関係な人間のほうが多いので、平凡な毎日に刺激を与えて欲しいとか考えているのか、ワクワクも含まれていた。他人の不幸は蜜の味ってやつだ。

いつものように銀河美少年の如く颯爽と帰ろうと、カバンに素早く勉強道具を入れて立ち上がった。


「・・・・・・はぁ」


と思ったが、小さくため息をついて座り直した。

そりゃあ隣でこんなに深刻な顔されたら帰れないわ。

普段ならこんなことはしないんだけど、気分だ。なんとなくそういう気分だっただけだ。深い意味はない。

隣の木村がチラッとこちらを見た。


「何してるのよ。帰ればいいじゃない」

「別にいいだろ。帰ろうが残ろうが俺の勝手だ」

「・・・好きにすれば」


何もせずにただ並んで座っているだけの俺たちは、下校していく生徒や部活している生徒たちからは不思議に見えるのか、変に話しかけても来ないし関わりもしない。多分あの噂も効いているんだと思う。

いくら噂がどうであれ、俺と木村は付き合ってもいないし、付き合う気もない。少なくとも俺は無い。

でもこんな顔をされたら気まずい。


「帰らねぇの?」

「・・・うん」

「なんで? ここにいたってドム子とかは来ないと思うぞ」

「ふふ・・・ドム子ね。あいつはいいのよ。こっちから投げたようなもんだし」

「じゃあなんでまだ残ってるんだよ」

「・・・わかんない」


俺は深く考えることが苦手だ。特に人間関係なんてものは『とりあえず』だけで済ませておくのが一番だと思っている。

その『とりあえず』の一線を超えた人間同士が友達になったり恋人同士になったりするんだと思っている。

要するに、学校での人間関係なんてものは所詮うわべだけの付き合いなのだ。だから深く考えるのは間違いなんだと思う。イジメとかもその延長だろう。


「もうあいつらのことなんて忘れれば?」

「何それ。告白? 俺が忘れさせてやんよーみたいな?」

「ちげーし。どこをどう聞いたらそう捉えられるんだよ。あんなうわべだけの友達ならいないほうがマシだろ」

「なんかあんたが言うと説得力あるわね」

「ぼっちなめんな」


友達が居ないことに関してはスペシャリストだからな。


「あんなやつでも私の友達だったのよ。それがまぁ・・・あんなことするとは思ってなかったわけよ。私って人を見る目無いんだなーって思ってたのよ」

「そんなこと考えてたのか」

「知らないで話しかけてきたの?」

「お前が考えてることなんて知らん。わかろうとも思わん」

「意味わかんないんだけど」

「とにかくだ。俺の隣の席でそんな顔されるのは困る。授業に影響が出るから自重しろ。それを言いたかったんだ」

「・・・ぷっ」


ナニコイツ。ワライヤガッタ。


「ホントあんたって変よね」

「変とか言われても嬉しいタイプの人間じゃないんですけど」

「なんか元気出てきたわ」

「・・・不本意なんですけど」

「細かいことはいいのよ。やっぱり私もまだ見る目はあったようね」


よくわからないけど、なにやら元気がでたということで良かった。全く励まそうとかそういう意図はなかったんですけどね。まぁ結果オーライだろう。


「じゃあまた帰ったらメールするわ」

「メル友はやめたんじゃなかったのかよ」

「別にいいでしょ。友達なんだし」

「いつ友達になったんだよ」

「ちなみに弟くんとはもう友達よ」

「おのれぇ! うちの内部から攻めて来るとは卑怯だぞ!」


メールを無視しようものなら弟からのネチネチした精神攻撃が来ること間違い無しだ。


「ふふふ。こう見えても肉食系なのよ」

「だったら肉でも食ってろ」

「それはどうかなー」

「ちょっと意味わかんねーし」

「紗枝ー。ちょっと良い?」


と、木村と話していたところへ、あの夏希とやらが乱入してきた。

もう最初の第一声から俺のことを無視しているあたり、きっと俺の姿は見えていないのだろう。ぼっちのことは真のリア充には見えないのか?


「あ、夏希・・・」


ちょっと顔を曇らせる木村。

やっぱり気まずいのだろう。


「紗枝ってさ、あんなに怒るんだねー」

「へ?」

「いや、紗枝って結構大人しいイメージだったからさー、驚いちゃったよー」


木村が大人しい・・・だと?

こいつが見ている木村は残像だ。質量のある残像だ。きっとこいつの実力はヤムチャ並みだな。クリリン並みの俺にはちゃんと木村がうるさい系のキャラだって見えてるもんね。

逆にお前らはどんだけうるさいんだよ。木村が大人しく見えるってどんだけだよ。


「まぁ・・・うん」

「そこでなんだけどー、これからどっか行かなーい?」

「えっ、いいの?」

「いいのってゆーか・・・あたしたち友達じゃーん」


まさかの友達認定。

木村も俺と同じくぼっちになったのかと思って、バカにしてやろうとも考えてたのに・・・


「友達・・・」

「げっ! もしかして友達じゃなかった系?」

「違う! 違う違う! 友達だし! 超友達!」

「でしょー! じゃあ行こー。あー・・・そっちのオタッキーも来る?」


この誘い方は『うわぁ。なんか付いて来ちゃった・・・』ってなる誘い方だ。

誰がその手に乗るか。


「いや、俺は」

「あーこいつは関係ないから気にしないで」


ぐぬぬぬ。自分で断るのは抵抗ないけど、他人に勝手に断られるのはとても悔しいですっ!


「そう? 紗枝と仲良しなのかと思っちゃったー。ごめんね」

「いいのいいの」


ごめんねってなんだよ。謝ることでもないでしょ。訂正してくださいー。


「じゃあ行こっかー」

「うん」


完全に立ち直った木村は失礼女と一緒に教室を出ていった。

全く・・・俺が出る幕もなかったな。

放っておいても大丈夫なら放っておけばよかった。やれやれだぜ。

と思っていたら、木村が廊下から顔だけ覗かせて俺に言った。


「ありがとね。またメールするから」


言い終わると答えも反応も見ずにまた戻っていってしまった。

なんだかなぁ。このままメールとか来なければいいのになぁ。

とりあえずは今日のネトゲはとても集中出来そうな気がした。

あ。帰りにアイス買って帰ろ。ネトゲしながら食べよーっと。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


これにて第一部完っ!

次回から第二章のスタートです。


次回もお楽しみに!

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