コミュニケーション能力
リビングにいた木村を部屋まで連れてきた。
俺の部屋に家族以外の人間がいるなんて驚きだ。何年ぶりだろうか? わかんね。
「で、何してんだよ。ストーカーか?」
「あんたが人のことジロジロ見てたから追いかけてきたのよ」
学校から? 電車に乗って?
この人怖い。
「勘違いしないでよ。別にストーカーじゃないからね」
こういう時は大抵が墓穴を掘っているのだ。そしてこのときにツッコミを入れるとケガをする可能性がある。自分の部屋で痛い思いをするのは嫌なので黙っている。無言が正解なのだ。
「・・・で、なんで見てたのよ」
「いつ見てたっけ?」
「朝見てたじゃん」
あの時か。結構根に持つタイプなんだな。嫉妬深そうだもんな。浮気とかしたら殺されそう。
「なんで見てたのよ」
「あれは・・・正直に言っていいのか?」
「別に言っていいわよ」
「蹴らない?」
「蹴って欲しいの?」
「嫌です」
めっちゃ怒ってるじゃん。目線が怖いもん。ワニみたい。
覚悟を決めて言った。
「えーとですね、テスト勉強とかしてなさそうだなぁって思ったんです・・・はい」
「テスト勉強? してないわよ。だってみんなもしてないもん」
うはー。こいつバカでやんのー。
俺は心の中で笑った。
するとなぜか蹴りが飛んできた。
「ちょ、なんで蹴ったし・・・」
「なんか顔がムカついたから」
これは俺の両親に謝って欲しいレベル。
この世界に生んでくれたことを感謝してるんだぞー。
「ホントに勉強してねぇのかよ」
「そうよ。でもみんな点数取れてるのよね。すごいと思うわ」
「お前バカだろ」
「はぁ?」
「ごめんなさいっ!」
はっ! 目線の怖さに思わず謝ってしまった!
「いやいや。他の奴なんて勉強してるに決まってるだろ。マラソンで一緒に走ろうよって言う奴と同じ原理だよ」
「あんたにそんな友達いんの?」
「いねーよ! 悪かったな!」
「ソースは誰よ」
「ソースは・・・み、見てればそんなのわかるだろ!」
「あ、逃げた」
「逃げてねぇ! これは戦術的撤退だ!」
なぜか俺を見る目がかわいそうなものを見る目に変わってきた。
これはこれで嫌だ。
「ま、そんなことだろうとは思ってたけどね」
「ん?」
「勉強の話よ。だって伊織なんかいっつも90点台よ? 一夜漬けであれだけ取れてたらすごいもんね」
「今まで疑ってなかったお前がすごいよ」
バカなんだか違うんだかわからんな。でもただ一つ言えるのは、こいつはそんなことだろうと思っていなかったと言うことだ。あの汗は嘘をついている味に決まっている。舐めたら殺されるけど。
「で、今度からお前は勉強するのか?」
「それは無理」
「なんで。ノートとか教科書とか見て・・・」
「できると思う?」
自信たっぷりで言う木村だが、どこからその自信が湧き出てくるのやら。
木村はいつも授業中寝ている。よって黒板を写したり、教科書に書き込みなんかしているはずもない。
オタクというのは結構真面目な人間が多いと思っていたんだけど、リア充のほうが濃く影響されてしまうみたいだ。リア充こえぇな。
「そこでよ。私は考えたの!」
何SOS団団長みたいなこと言い出してんだ。
「あんたのノート貸して」
「俺はどうやって勉強すればいいのかな?」
「コピーしてあげるからそれで勉強しなさいよ」
「普通逆じゃね?」
「コピーのノートなんて見にくいでしょ」
「いやいや。それ借りる側の人間のセリフじゃないよね」
「いいじゃない。テストなんて所詮は赤点以上ならみんなおんなじでしょ」
「おんなじじゃないです」
「あーもーめんどくさいなー。いいから貸しなさい」
そう言って机の上に置いていたノートを取り上げる木村。
これは横暴だ。警察に連絡すれば勝てる。裁判でも圧勝だ。
「これ。お兄ちゃんのノートです」
「ありがとー」
「ちょっとまてぇーい!」
なんでお前がいるんだー!
さりげなーく人のカバンからノート取るってひどくなーい?
「いい弟さんね」
「そうですね。ってそういう問題じゃないから。お前も早く出て行けよ」
「お兄ちゃん。友達は大切にしないとダメだよ」
「友達じゃねぇし」
「違うの?」
そう言って木村のほうを見る弟。
弟に見つめられた木村は、
「友達よ」
「えぇー・・・」
「なによ。友達じゃないの?」
「だって俺、リア充の友達とかいらんし」
「そんな・・・」
「お兄ちゃん」
弟が声を大にして言った。
「友達は大切にしないとダメだよ」
「なんで二回言ったし」
「大切だからよねー」
異様に仲良しになる木村と弟。
なんで俺だけ置いてかれた感が強いんだよ。こんなところでもコミュ力が必要とは・・・
おそるべし日本。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
仮面ライダーウィザードの滑り出しがいい感じですね。
あの中二っぽい感じはたまらなく好物です。
シャバダビタッチヘンシーン
次回もお楽しみに!




