番外編・コラボ企画『ぼっちと神様』後編
ささっと神様は走っていこうとしていたのだが、俺たちに気を取られていたせいか、さらにその奥に控えていた女子2人のクロスボンバーによって仕留められてしまった。首折れるぞ。
神様は少し気絶していたもののすぐに目を覚ましたのだが、、女子2人に両腕を持ち上げられながらこっちまで戻ってきた。宇宙人捕まえましたー的な光景。
そしてそのタイミングで木村が目を覚ます。
「・・・あれ? 私どうして・・・」
「木村さんって言うの? 急に倒れたからどうしたのかと思った。大丈夫?」
「あっ、大丈夫。なんかありがと」
「いえいえ。神威君が言いたいことあるんだって」
そう言われた木村は、なんのことかと首をかしげて神様を見る。
キムラノヨウスガオカシイ。
なんでもう怒ってないんだ? 普段なら怒りが鎮まるまではすごい時間がかかるのに、今はあっさりと怒りの対象だった人物を見ている。
おかしい。
まさかあの黒髪美人さんが何かしたのか?
「あれはきっと覇気だな」
「お前はだぁってろ!!」
俺はボソッと呟いた渡辺を一喝した。これ以上事態をややこしくするな。
その張さん顔負けの『喝ッ!』に反応した黒髪美人さんが俺の方を向いた。横顔でも美人だったのに、正面も美人だ。
木村という彼女がいなければ惚れてた。そして勘違いして告白してフラれるところだった。
「あの、足、大丈夫?」
「えっ、あぁ。いつものことだし。大丈夫、です」
二人でアハハと苦笑しあったときだった。
「ちょぉっと待ったぁ!!」
何? ねるとん?
神様がそう叫んで、女子2人の拘束から抜け出して、俺の目の前まで来た。
なんかむかつく顔してる。
そしてすごい小声で俺に話しかけてくる。
「う、麗ちゃんと木村とはどういう関係なんだ?」
「は? 木村は俺の彼女で、その麗ちゃんっていうのか? そこの黒髪さんとは今ここで初めて会ったんだ。初対面だこのやろー」
「なんだ初対面か!」
いきなり気をよくした神様は、あはははーと頭悪そうに笑って俺の肩を叩いた。
「もし俺の麗ちゃんとなにか良からぬ関係がある人間だったら、この神たる俺の相棒のごきぶりんに相手させているところだったぜ! うははは!」
「俺の麗だなんて・・・ポッ」
「ご、ごきぶりん? ってゴキブリかよ。キモッ」
こいつ、神様とか言ってるけど、実はちょっと頭の変な人なんじゃないか?
深く関わらない方がいい気がしてきた。
しかし俺の言葉に反応した人間がいた。
「やっぱりキモイよね!? うわー! やっとまともな人に会えた!」
さっき神様にクロスボンバーをかました女子の片割れが俺の手をぎゅっと握って目をキラキラと輝かせてそう言った。
この人も美人だ。
そう思ってちょっと引き気味で手を握られていると、俺の手に手刀がバシッと降ってきて、握られていた手が払われる。
その手刀の主の木村がささっと俺と女子の間に入ってきて、無言で威嚇する。
「紗枝。なしたー? 大丈夫?」
「紗枝ちゃん、大丈夫?」
そんな木村の姿が教室の中から見えたのか、姉さんと吉川さんが心配して見に来た。
なんという総力戦。人数だけならこちらのほうが上。
しかし向こうは神様と武術の達人とネプチューンマンとミスター武士道。戦力が違いすぎる。
「あれ? 万希葉?」
「おー伊織じゃん。何してんの?」
「何してんのって、うちのクラスだし。ってゆーか紗枝のそばから離れたほうがいいよ。意外と紗枝って独占欲強いから」
「ちょっと伊織。いつ私が独占欲強いなんて言ったのさ」
「そんなの見てればわかるっしょ」
なにやら人が増えてきて、しかも片割れの女子と姉さんは顔見知りだったようだ。
このままでは会話に巻き込まれてしまう。一旦退避しよう。戦術的撤退だ。人ごみ、苦手。何が悲しくて学校内で人に囲まれなくてはならんのだ。
そう考えた俺は、得意の視線誘導を発動させて、誰にも気づかれることなくその場を離れた。
教室から少し離れたところにある自動販売機までやってくると、フゥと一息ついてズボンのポケットから財布を取り出すと、自販機に小銭を入れる。
ここは無難にコーヒーを・・・
ピッ。ガコン。
「ふははは! 神たる俺から逃げようなどと千年早いぜ!」
神たる彼が勝手に自販機のボタンを押した。
なんなんでしょう。この匠のなせる技。今日ここまで、俺をイラッとさせることしかしてない。
しかし神たる頭のおかしい奴に怒ったところで、どうせ効果はないのだろうから、怒るなんてことはしない。
俺は何も言わずにもう一度小銭を入れて、目当てのコーヒー(微糖)のボタンを押す。
隣ではガラナをごくごくと飲んでいる神様がいる。それを美味しそうに一気飲みすると、『げふっ』と盛大なゲップをした。
俺は神様のゲップよりも、ガラナを一気飲みしたことに驚いていた。
「ん? どうした? 俺の顔に何かついてるか?」
「いや、ガラナ一気飲みってすごいな」
「ガラナ、美味しいだろ」
「なん・・・だと・・・」
ガラナ。コーラやペプシと同じ炭酸飲料。しかしその味は格別で、劣化コーラや劣化ペプシだと思っている。不味くはないんだけど、美味しくない。同じ値段するならコーラやペプシを買ったほうがいい気がするレベル。
いや、待てよ。ドクペだってコアなファンや中二病の人が好んで飲んでるんだから、ガラナも似たようなもんなんだろう。そう解釈するしかない。世の中の摂理だな。
「そういえばお前、神様だかなんだか知らないけど、人の彼女の尻触るのはダメだろ。うらやまけしからんぞ」
「彼女?」
「木村だ、木村」
「なんだと! 木村の彼氏だったのか! それは悪いことをした! スマンっ!」
素直に頭を下げて謝る神様。意外と常識はあるのか。
ってゆーかさっき言ったはずなんだが。こいつの頭の中は下ネタのことしかないのか? 脳内メーカーとかやらせたら、『エロ:80%』『神:15%』『無:5%』とかって結果になりそう
「わ、わかればいいんだよ。と、ところで、どうだった?」
「それはもう柔らかかったぞ」
聞きたいことにすぐに答えてくれる。さすがエロ神様。
むしろそっちにしか頭が働いてないのだろう。
「まじで? どんな感じ?」
「こうプルプルとしてて、いつまで揉んでても飽きがこない感じだな。なのに引き締まってていい感じのお尻だった」
「それは興味深い」
「でも万希葉のほうがいい感じだ。木村とはちょっとの差だからしんぱ・・・ハッ!」
「ハッ!」
俺と神様は背後に何かどす黒いものを感じた。神様と共にゆっくりと振り返った先には・・・
言うまでもなかろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
これにておしまいです。
どうでしたか?
良ければ『さつこい』のほうも読んでいただ得るt、おじぃさんも喜ぶと思います。
ではではー




