同窓会
これにて最終回です
8年後のお話
「ほら。お前の化粧が長すぎるせいで遅れそうなんだから急げっつってんだろ!」
「別に私のせいだけじゃないでしょ!」
「わかったからちょっとは急げや!」
俺と紗枝は、普通に歩けば10分かかる道中をあと5分で到着しなければならないため、軽く駆け足で走っていた。
これから同窓会なのだ。高校の。
もうかれこれ8年前か。懐かしいな。
こんなに懐かしいメンツが集まるってことなのに、紗枝の野郎が化粧に時間が掛かりすぎて遅れそうなのである。
「化粧は女の命なのよ? わかってるの?」
「化粧なんてどうでもいいだろ。すっぴんでも可愛いっての」
「・・・もう」
ふん。ちょろいな。8年も一緒にいれば扱い方も分かってくるってもんだ。
とにかく急ぐ。
待ち合わせ場所のちょっと洒落たバーに着いたころには、待ち合わせの時間を10分も過ぎていた。
席に向かうと、俺たち二人を除いて10人ぐらい集まっていた。
そこには渡辺と吉川さん、それに伊織ちゃんの顔もあった。他には川崎とか当時は腐女子コンビとして俺の中で有名だった二人もいた。あとはわからん。
「おーひさしぶりー」
「やっほー」
「遅いぞー」
渡辺と吉川さんの挨拶のあとに、伊織ちゃんの苦情も飛んできた。今日の幹事は伊織ちゃんなのです。
「悪い悪い。責任は全部紗枝のせいだ」
「うわっ! これはひどい!」
「ひどくねぇよ。全然事実だろうが」
こんなやりとりを交わして、全員揃ったところで伊織ちゃんの進行の下さっそく飲み食いが始まった。
最初はもちろんビール・・・なのだが、
「あ。私ウーロン茶で」
「えっ!? 紗枝ちゃん、飲まないんですか!?」
「木村って一番酒飲みだったじゃねぇか」
「いやぁ飲みたいのは山々なんだけどさー・・・」
そう言ってお腹をさする紗枝。
はい、そうです。
去年木村と結婚して、木村の苗字が変わりました。だから呼び方も紗枝になった。
そして3ヶ月前に紗枝が妊娠してるのがわかった。
俺も一児の父となるんだから、ちょっとは緊張するってもんだ。
「マジで?」
「マジマジ」
「私は知ってたよ」
「伊織にはなんでも話してるからねー」
「えへへ」
照れる伊織ちゃん。大人になっても紗枝大好きは変わってなくて安心した。
「まぁなんにせよおめでとー!」
「ありがとー!」
そう言って抱き合う吉川さんと紗枝。
「お前も一児の父親かよ。なんか信じられないよなー」
「俺も信じられないわ。お前はなんかそういう浮いた話無いのかよ」
「俺か? さっぱりだな」
「めっちゃモテるんじゃないんですか?」
「それが練習ばっかで出会いもクソもないって。遠征とかでこっちにもいないし」
「さすがプロは違いますなー」
渡辺は高校から続けていたサッカーをそのまま極めた結果、Jがつくリーグで活躍しちゃっている。
あの緑のユニフォームで有名な誰でも知ってるチームだ。
吉川さんと付き合っていた渡辺だが、結局長くは続かずに、1年ぐらいで別れた。それから二人とも誰かと付き合ったという報告は聞いていない。
吉川さんは獣医をしているらしくて、美人な獣医ということでそれなりに名を広めているようだった。
一方伊織ちゃんは・・・
「いやーウチは旦那がうるさくてさ」
「もう大恋愛したくせに何言ってんのよ」
「紗枝たちに比べたら私のなんてただの恋愛よ」
「でも医者だよね? そう考えたら羨ましいなー」
「吉川さんだって獣医じゃん」
伊織ちゃんは玉の輿のごとく、年上のお医者様と結婚したんだとか。
大学の時に入院しちゃって、そこで担当医をしていたのが今の旦那様なんだとか。
さすが伊織ちゃん。抜け目ないぜ。
「どっちも医者かー。それに比べてうちは・・・」
「おい。その目線やめろ。平々凡々でも良いではないか」
・・・どうせ俺は一般企業で普通に営業してますよ。
それなりに給料ももらってるんだからいいじゃないですか。
「そうよ。最終的には平凡が一番なんだぞー」
「伊織が言うと全然説得力ないよねー」
「そうそう」
「渡辺が言ってもあんまり変わんねぇよ」
玉の輿とプロサッカー選手。
急に大金が入ってくるんだもん。ここはこいつらの奢りでいいんじゃね? 10万ドルポンと出してくれよ。
楽しい時間というのはあっという間に過ぎていってしまうもので、もうそろそろお開きの時間になりそうだった。
「このあとどうする? 私らはどっかで飲む予定だけど」
「私も行きたいけど・・・」
「そうだな。ここはからだ優先にするのが一番だな」
「だよねー・・・はぁ」
「大丈夫だって。私らは逃げたりしないからさ」
「そうだよ。紗枝ちゃんの子どもが生まれたらまた集まろうよ! その時は出産おめでとう会とかでさ」
「俺はシーズン中じゃなければいつでも大丈夫だぞ」
「じゃあ渡辺はなかなか誘えねぇじゃねぇか」
一同アハハハと笑った。
「じゃあ俺らは帰るとするか」
「うん」
「気を付けて帰れよ」
「またねー」
「何かあったら連絡しろよ」
「おう」
「じゃあねー」
俺と紗枝は手を振る3人に手を振り返した。
「楽しかったね」
「だな」
「私も行きたかったなー」
「バカを言うな。今はお腹の子のこと優先に動きなさい」
「行く時は急げとか言ってたくせにー」
「それはそれ。これはこれだ」
「ズルーイ」
俺と紗枝は、駅までの雪道を転ばないように気を付けながら並んで歩いた。
それからしばらくして、俺と紗枝の間に元気な男の子が生まれた。
おしまい
ここまで読んでいただきありがとうございます。
というよりもここまでお付き合いいただいてありがとうございました。
題材が『ぼっち』ということで、結構共感をしていただいたみたいで作者冥利に尽きます。
まぁ後半からリア充展開ばっかりで、本編完結時には『爆発しろ』のコメントが多すぎて爆笑しましたw
皆さまからの感想で頑張れた分もありましたので、とても感謝しております。
まさかジャンル別ランキングですがこんなに上の方に鎮座出来るなんて思ってもみませんでしたw
なんとお礼をしたらいいものか・・・←小説書けよ
えー残念ながら(?)次回作は『ぼっち』とは関係ありません。
でもオタク要素はそれなりにあるはずなので、こちらもお付き合いいただけると嬉しいです。
短いものではありますが、あとがきとさせていただきます。
それではシュウ先生の次回作にもご期待下さい!
次回作もお楽しみに!




