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ぼっちデイズ  作者: シュウ
番外編
124/128

義理と本命

日本にはバレンタインデーというものがある。

女子が意中の男子にチョコをあげるというアレである。

女子は手作りだったり買ったものだったりとチョコはさまざまだ。


「はい、チョコ」

「おう。ありがとうございます」


俺は木村から手渡されたチョコを受け取っておじぎをした。

なんやかんやでもらうのは誰かからチョコをもらうのは初めてだった。

妹とかいる家庭だと、妹から『こ、これは義理チョコなんだからねっ!』って言われながらもらえるんだろうけど、うちは弟だし、母さんはチョコをもらっちゃいそうなぐらい男前だからくれるはずもない。

よってこれが初チョコである。


「おー。さすがー。紗枝ってば手作りですかー。乙女ですなー」

「いいでしょっ。伊織だって誰かにあげればいいじゃん」


後ろから姉さんがのぞき込んできて、木村のことをからかった。

それを聞いた木村が少し赤くなるも、さすがに茶化されるのに慣れてきたのか言い返していた。


「私はあげたい奴がいないもん。世の男子が悪い」

「手厳しいな」

「おっ。渡辺じゃ・・・うわぁ・・・」


さりげなくやってきた渡辺。

その渡辺の手には、紙袋2つにわたる量のチョコを持っていた。

チョコ1年分とか言われても信じそうなレベル。


「あーこれか? なんか学校に来るまでに貰ったからさ、途中で友達にもらった紙袋に入れて持ってきたんだけど・・・さすがにこれは多いな」


世の男子がそわそわと期待しながら生きているっていうのに、このクソ野郎は平然とさも当然のように受け取ってきたのだ。これは何か悪いことが起きてくれると嬉しいパターン。

ってゆーか、姉さんの目の前でチョコを見せびらかすってどうなの? 自分で姉さんルートを埋めちゃったようなもんじゃね?

もう徹底的にたたきつぶされてしまえばいいのに。


「うわぁ。渡辺ってばもらいすぎじゃね?」

「織田はくれないのか?」

「・・・逆にあげない」

「これが無かったらくれたってことか?」

「それはどうでしょうか?」

「どうなんですか?」

「元々あげるつもりは無いけどね。意中の男子にあげるんでしょ? 渡辺は意中の人じゃないもん」

「義理とかは?」

「私、義理とかにお金使いたくない派なんだよねー」


うわー。遠まわしに振られてんじゃん。ざまぁ。


「あれ? 伊織、チョコ準備してなかった?」

「さっ、紗枝っ!!」

「ヒューヒュー」


木村が吹けてない口笛を吹きながら顔をそらした。


「織田・・・誰かにあげる予定だったのか?」


渡辺がしょぼーんとした顔で姉さんに聞くと、姉さんの顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。

そして自分の机に置いてあったカバンから赤い箱を2個取り出すと、それを俺と渡辺に投げつけた。

渡辺は見事にキャッチ。俺のは変なところに飛んでいったので拾いに行く羽目に。これは酷い。


「義理だよ! バーカ!」


そう叫んで、姉さんは教室を出ていった。

さっきまでのはツンデレのツンだったのだろうか?

隣で笑いをかみしめている木村を見るところ、姉さんの態度が演技じゃないことはよくわかった。

ってことは、姉さんは俺と渡辺のためにチョコを持ってきてくれたってことか。これは高ポイント。


「おはよー。うわっ! 渡辺くん、チョコすごいねー」


遅れて教室に入ってきた吉川さんが、渡辺のチョコの量を見て驚いていた。誰でも驚くっての。


「はいこれ。いつもお世話になってます」

「あ、どうも」

「サンキュー」


吉川さんからもチョコをもらった。

・・・あれ?

俺と渡辺が貰ったチョコにはなんかすごい差があるように見えた。

俺のは赤い包み紙にくるまれたポケットティッシュサイズの箱。

渡辺のは同じく赤い包み紙にくるまれているのだが、PSPのソフトが入っているケースぐらいの大きさの箱。

この差はいかに・・・


「渡辺くん。それ本命だから」

「うん。ありがと」


普通に受け渡ししているようにしか見えないのだが、セリフが意味深すぎる。


「「えっ!?」」


俺と木村が同時に声を出した。

そして顔を見合わせた。

どういうことだってばよ!


「ちょ、ちょっと待って! 吉川さん! それが本命って、本命の意味知ってる!?」

「もちろん知ってるよー」

「渡辺も渡辺だろ! 『本命です』『ありがと』ってこの流れおかしすぎるだろ!」

「そうか?」


なんだこいつら・・・俺とは違う次元に生きてるのか・・・?


「私、渡辺くんのこと好きだもん」

「俺も結構好きだぞ」

「よかったー」

「いやいやいやいや! そこまで来たら付き合っちゃいなよ!」

「付き合うか?」

「うーん・・・もうちょっと考えさせて」

「おう」


俺と木村は呆然とした。

この二人はなんなのか、と。

吉川さんがおっとりしてるとは思っていたけど、ここまで意味不明だったとは。

そして渡辺もよくわかんない奴だとは思ってたけど、ここまでよくわかんないやつだったとは思わなかった。

でもこれって・・・


「はぁ・・・さっきのはホントに義理だから気にしないでね・・・だいたい義理チョコあげるだけでこんなに恥ずかしいってどうなの・・・ってなにこの空気」


教室に戻ってきた姉さんが、俺たちを見てキョトンとした。

これはそっとしておこ


「聞いてよ伊織! 渡辺と吉川さんが両思いなのに付き合わないとかわけわかんなくない!?」


そっとしておけよ! そこはバラすなよ!


「何、あんたら。そんなに好きあってるの?」

「まぁ好きって言われたら好きだな」

「うん。私もそんな感じかな」

「ふーん」


ほら、せっかく恋に目覚めそうだった姉さんが困ってるじゃん。


「じゃあ付き合っちゃえばいいのに」


ほらね。ここでまたツンデレ発動・・・してないな。


「でもまだ付き合うってどういうことかわかってないから、簡単に決めるのはどうなのかなーって」

「そんなの付き合ってから決めたらいいじゃないの。どうせ高校生同士の恋愛なんてそんなもんよ。結婚するわけじゃあるまいし」

「それもそうだな」

「でしょ?」

「じゃあ吉川。付き合うか」

「・・・うん」


笑顔で顔を見合わせる渡辺と吉川さん。

これで晴れてカップルになったってわけか。


「・・・なにこれ」


隣で小さく木村が呟いた。

大丈夫だ。俺も同じこと思った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しいです。


「渡辺を幸せに!」という声が多かったので、最後の最後に幸せにしました。

変なカップルになってしまったww


次回もお楽しみに!

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