温泉回
読者の皆さん!温泉回ですよ!温泉回!
R15をうまく使ってみました。
ある冬の寒い休日、渡辺からこんなメールが来た。
『一緒に風呂行こうぜ!』
これだけ送られてきた俺は、マジでこいつ頭おかしくなったのかと思った。
ここまで来たらもうこいつは狙ってメールを送っているようにしか思えなかった。というか俺のケツが狙われているようにしか思えなかった。
だがしかし俺がこのあと断り続けていると、ついにはメールから電話になって、押し切られてしまった。
俺ってば押し切られるのに弱いのよね。めんどくさくなって折れちゃうのよね。新聞の勧誘とか簡単に押し切られちゃうタイプ。だから勧誘は話を聞かないようにしてる。
そしてやってきたのは『千の湯』というレジャー施設のような温泉施設。
渡辺と待ち合わせをして、無料送迎バスに乗ってえんやこらえんやこら到着した。
バスの中で渡辺と二人で遊ぶのって初めてだよなーと思った。
到着して受付で鍵やら透明な棒やらをもらって、その棒とタオルやらが入った袋と交換する。
そして男湯へと進んでいく。
中はおっさんやらおじいさんやらちびっこやらがいてほぼ全員が全裸だった。当たり前か。
まぁもちろん俺も全裸だ。タオルで大事なところは隠してます。
「お前、めっちゃ良いからだしてるな」
「鍛えてますから」
俺が渡辺のからだを見て呟くと、渡辺は力こぶを作って答えた。
俺は思わず目をそらした。だって股間が丸見えなんですもの。羞恥心とかないわけ?
俺たちはドアを開けて中に入っていく。
湯気で視界が曇る。
超久しぶりに温泉に来たのだが、思っていた通りでビックリした。もうこれ以上温泉は進化しないんだなと思った瞬間でもあった。ルシウスがいれば変わるかも。
ルール通りに、まずからだを洗ってからお湯につかる。
「はぁー」
「あったけぇー」
お湯につかると思わず声が出る。これは人体の不思議である。大人がビールを飲んで『プハー!』と言ってしまうのと同じくらい不思議である。誰か解明してくれ。
「最近どうよ」
「俺はサッカーの大会終わったばっかだから、サッカーばっかりしてたぞ」
「結果は?」
「2回戦敗退」
「そんなもんだろ」
「2回戦でいきなり地区大会の前回の優勝校に当たったんだよ。仕方ないだろ」
「はは。言い訳乙」
「くじ運ばかりはどうしようもないだろ」
「マンガだったら勝利フラグなのにな」
「マンガみたいに上手くはいかねぇって。熱のいれ方が違うからな」
「ふーん」
「お前は?」
「俺? サッカーとかやってないし」
「ちげぇよ。木村とはどうなんだよ」
はぐらかそうとしたのだがむりでした。
俺と木村か・・・
特に変わったことはしてないんだけどな。
「特になんもないな」
「嘘つけ」
「嘘じゃねぇって。毎回しゃべったり蹴られたりしてるだけだって」
「うらやましいな」
「そこにだけ反応するんじゃねぇ。気持ち悪い」
「はいはい。そんじゃそろそろ出るか」
「えっ、もう出んの?」
「次は岩盤浴だ」
「岩盤浴?」
名前は聞いたことあるけど、全く知らん。
お湯から出て、専用の服に着替えながら渡辺が教えてくれた。
なにやらサウナみたいな感じで、石の上にタオルを敷いて寝るらしい。
・・・苦行か何かですか?
「俺熱いの苦手なんだけど」
「大丈夫だって。温度もいろいろあるからさ。低いところから行こうぜ」
とにかくダサいTシャツ短パンの服に身を包むと、違う場所に移動する。
途中で水を買って万全の体勢を整える。
「ここの中に名前を書いた飲み物入れておいて、好きなときに飲めるってやつな」
ちっこい冷蔵庫みたいのに入れておき、いざ出撃。
一番温度が低いところは雪が降っていたので、そこはさすがに避けた。どうやら水風呂的扱いらしい。
50度ぐらいのところに入る。中はものすごい熱気で満ちていて、からだがものすごい勢いで熱くなってきた。
渡辺の横のスペースにタオルを敷いて、そこに仰向けに寝転がる。
何をしたらいいのかと思っていると、渡辺が急に腹筋を始めた。
上半身を起こすもの。足を上げ下げするもの。足も上半身も上げるもの。
ここってこういうところなの?
よくわからなかったので、俺もちょっと腹筋とかしてみたのだが、すぐにめんどくさくなってやめた。継続は力なり。俺は力なし。
10分ぐらい入っていたのだが、俺は暇になってきたので、先に出ることにした。
サウナから出て水を飲み、近くにある休憩所みたいなところで寝転がった。
あんな熱いところに長時間いるとか意味わかんね。そんなに熱いところが好きなら本州の夏とか経験すればいいのに。
汗だくのからだを冷ましながら、近くに置いてあるファミ通を手にとって読んでいた。
ふーん。モンハン4の新しい武器か。スラアクと一緒じゃん。武器よりもモンスターに力入れろよな。希少種とか亜種とかばっかりで、レイアとレウスなんかネタ切れじゃん。もう一匹あんな感じのカッコイイ飛竜種入れるだけで今まで使わなかった武器とか属性とかが広がりんぐだと思うんだけどな。
そんなことを考えながらファミ通を読んでいると、渡辺が戻ってきて横に座った。
「お前出るの早すぎ」
「お前腹筋しすぎ」
お互いに文句を言い合う。
「いつも腹筋してんの?」
「まぁな。でも俺ここ来たの3回目」
「3回目? そんだけであんな常連ぶった行動できんの?」
「そんなもんだろ」
「ふーん」
「じゃあ本題な」
「本題?」
「木村とヤッた?」
「・・・お前、そんなことをこんなところで聞いちゃうわけ?」
「ってことはヤッたのか! ヤッんだな!」
「大声出すな! まだヤッてねぇよ!」
渡辺の大声に大声で対抗してしまい、周りに居た老若男女の視線を集めてしまう。
「・・・おほん。静かになさい」
「悪かった。ってかまだヤッてないのか」
「ヤッてねぇよ」
「ヘタレ」
「別にいいだろ」
「木村も待ってるんじゃね?」
「そんなことないだろ。そんなこと微塵も感じねぇし」
「いやいや。前に女ってのはめんどくさいんだぞって言ってたのはお前だろ」
「・・・確かに言ってたな」
俺も木村とそういうことしないといけない時期なのかしら・・・
俺ってばまだ18未満だから見れないじゃん。だから『できない』とか言えないんだろうな。
「そういう渡辺は姉さ・・・伊織ちゃんとはどうなんだよ」
「あー・・・特に進展はないな」
「お前だってヘタレじゃん」
「でも吉川とはここに来たぞ」
「・・・は?」
「いや、これってデートって言うのか?」
「いやいやデートでしょ!」
何こいつ! 吉川さんとそういうところまで進んでたわけ!?
「吉川さんとなんでそういう関係になったし」
「学校帰りに一緒になることがあってさ、寒いから温泉とか行きたいよなーって話をしてたら、一緒にここに行くかーってことになって」
「どういうことだってばよ」
「俺もよくわかんないんだよ。でも岩盤浴から出てきた時の吉川はなんかエロかった」
「あ。汗だくの女子ってなんかエロイよな」
そう言って二人で岩盤浴の扉が並んでる通路に目を向けた。
汗だくの女子を視界に入れる。うん。エロイ。
女性限定の岩盤浴が多いのがわかった気がした。
「じゃあ吉川さんと付き合うのかよ」
「いやそれだけで付き合うって決めるのは安易だろ」
「でも吉川さんって、いいお嫁さんになりそうだよな」
「そうやって揺さぶるとか反則じゃね?」
「決めるのは渡辺だから、そこまで伊織ちゃんが好きなら揺らがないはずだ」
「うわぁ・・・超揺れるからそういうこと言うのやめてくれ・・・」
このままなら渡辺が落ちるのは時間の問題だなと思った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
温泉回はいかがでしたでしょうか?
渡辺の恋模様が浮き彫りになってきました。
吉川さんがどんな気持ちなのかは読者のみなさんに判断をゆだねますw
では次回もお楽しみに!




