メガネ
一章と二章の間ぐらいにいれようとしていたお話です。
最近、目が悪くなりました。
きっと夜な夜なパソコンばかり見ているからだろうと思います。
というわけで、メガネを買った。人生初メガネ。
まぁそんな常にメガネをかけるようなぐらい視力が落ちたわけじゃないから、かけるのはせいぜい授業中ぐらいだ。
まぁ・・・なんとまぁ・・・どうしてこうなった。
「うわぁー。マジで何も見えなーい!」
「うっそぉー! あたしもかけるー! あれ? 超見やすいんですけど!」
「伊織ってば目悪いんじゃん!」
「あたしもメガネ考えようかなぁ」
「伊織ってメガネかけたら頭良く見えるんじゃね!?」
「マジで? ・・・どう?」
「いや、俺の見込み違いだったわ」
「なにそれー!」
あぁ・・・俺のメガネが弄ばれている・・・
隣に座るバカのせいで、俺のメガネがリア充共のおもちゃにされてしまっている。
『ははは。メガネよ。諦めるんだな』
『や、やめてくださいっ!』
『なんだ? 逆らうのか? だったらこうだ』
『ひぃっ! そんなに強くしちゃ、ダメっ!』
『ははは。もう少し力を入れてもいいんだぞ?』
『なんでもします! なんでもしますから、フレームを曲げるのだけはやめてくださいっ』
『ははは。勘弁してやろう。その代わり、レンズに指紋をつけてやる!』
『あっ・・・私、もうお嫁にいけない・・・』
そっちのおもちゃではないな。
とりあえず俺のメガネは今、伊織ちゃんの顔に装着している。
そもそもどうしてこうなったのかというと、
メガネをかけて授業に備える
↓
木村がかけてみたいという
↓
貸す
↓
木村がかける
↓
伊織ちゃんがメガネ木村を発見
↓
俺のメガネだとは言えずに、うっかり自分のだと言ってしまう
↑
今ここ
これって、俺のメガネは返ってくるのだろうか?
ここまで来ると、木村に対して怒りとかよりも、メガネが戻ってくるかどうかのほうが心配になってきた。
どうしてみんなメガネを珍しがるの? 能力でメガネ好きにでもされたの? ブリっ子ポーズでもしちゃったんでしょ。馬鹿だなー。
そんなことよりももう授業始まるんですけど・・・
隣に座る木村は、笑顔のまま友達とメガネを見つめている。心無しか冷や汗をかいているような気がしなくもない。
俺はもうメガネは諦めようかと思って、授業の準備をし始めた。
ここまで来たら諦めるしかないでしょう。だって取り返すのは無理ですもん。
ここで俺が『返して!』とか言ったところで誰も聞いてくれもしないし、聞いてくれたところで俺のメガネだって信じてくれるはずもない。
これは時間が経って木村にメガネが返ってきた頃に返してもらうより他ない。
しかし木村にメガネが返ってくる様子もない。
あれ? これ俺のメガネであってるよね? 木村のメガネじゃないよね?
その時、衝撃的なセリフが聞こえた。
「お前指紋つけるなよなー」
「わりぃわりぃ。ついうっかりレンズ触っちゃった」
うっかりで済めばメガネ拭きはいりませんよっ!!
ちょっとふざけんなよ。メガネに指紋ついたら取るの大変なんだからな。
指についてた油とかでなんかビローンって伸びるし、ホコリとかもくっついてるから拭きにくいし。
メガネを汚されることがこんなにも嫌なことだとは思わなかった。
俺はそろそろ我慢できなくなってきたので、依然固まって見ているだけの木村にコソコソっと声をかけた。
「おい木村。そろそろ返してもらえよ」
「あっ、うん」
硬直を解いた木村が、身を乗り出して声を発した。
「そろそろメガネをー・・・」
声ちっさっ!
ビックリしたわー。マジでビックリしたわー。
そんなんで彼ら彼女らの耳に届くと思っているのか?
「バカっ。もう少し大きい声で言えよ」
「バカって何よ。気持ち悪い」
「気持ち悪いってなんだよ。俺のメガネだろ。早く返してもらえよ」
「わかってるわよ」
ホントにわかってるのかよ。
そして木村は再度声を発した。
「そろそろメガネ返してくれない?」
「あーごめんごめん。メガネどこだ?」
「あれ? メガネどこ行った?」
「さっき誰かかけたままどっか行ったの見たよ」
「「えっ!?」」
俺と木村は同時に叫んだ。
そして木村が俺の方を向いて、ぎこちなく笑った。
俺も笑顔で応じる。
そして言う。
「取り返してきなさい」
「で、ですよねー」
木村はすぐに立ち上がると、寂しそうな背中を向けたまま廊下へと飛び出していった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いて頂けると嬉しいです。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくねー
ぼっちくんにメガネをあげようと思ったのですが、没になったお話でした。
彼にメガネはまだ早かった。
次回もお楽しみに!




