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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
119/128

和解と進展

俺は家を出ると、吉川と織田のあとを追いかけた。

すっかり日も暮れて暗く寒くなった外を制服姿で走る。とても寒い。

このへんの地理は詳しくないので、今来た道を戻れと言われても、この夜道だと正確にあいつの家までたどり着けるかわからない。

それでも俺は2人を追った。

俺はサッカー部で鍛えた運動能力を生かして、すぐに2人に追いついた。

そして歩きながら織田に言い寄っている吉川の後ろについて歩いた。


「どうして木村さんにあんな態度とったんですか! 木村さんだって織田さんのことを思って言ったんですよ!」


吉川が一方的に言っているが、織田はガン無視だった。


「木村さんだって心配してます! 戻ってあげてください!」

「うるさい!」


織田の大声に吉川はひるんだ。俺もひるんだ。

ひるんだのだが、吉川は引かなかった。


「織田さんがそうやってツンツンしてるから木村さんだって困ってるじゃないですか」

「へぇ。紗枝のことかばうんだ。仲良しだもんねー」

「そんなこと・・・」

「私は紗枝と親友だと思ってたのに、紗枝にとって私は一番じゃなかったってことでしょ」

「そんなことないです!」


吉川が反撃なのか、大声を出した。


「木村さんはいつだって織田さんのことを考えてました。いつも私は2人が羨ましくって・・・。いつか私もそんな友達が欲しいなぁって思ってました」

「・・・・・・」


吉川の一人語りに織田も俺も黙ってしまう。


「そんなときに私を木村さんが遊びに誘ってくれたんです。織田さんが誘っても来なかったからってことで誘ってくれたんです。嬉しくて遊びに行きました。そこから木村さんと仲良くなったんです。でも木村さんと仲良くなればなるほど織田さんの機嫌が悪くなっていくのがわかりました。多分私が木村さんと仲良くしてるから嫌なんだろうなっていうのには気づきました」


まさかそんなことが水面下で起こっていようとは。我が親友の言うとおりだったな。


「でも木村さんは変わらずに接してくれました。織田さんなら気にしなくていいよって言って、遊びに誘ってくれたりもしました。私は断っていたんですが、それでも木村さんは何かあるごとに私を誘ってくれてました」


織田の顔を盗み見してみた。とても驚いたような顔をしているように見えた。

多分、織田も木村がそこまで吉川を誘っていたことは知らなかったようだ。


「私、誘われても断っているばかりだと木村さんに申し訳なかったので、一回だけ遊んだんです。もう私に構わなくていいよって言うつもりで、学校帰りに一緒に遊びに行きました。その時に木村さんが『今度は伊織も誘って3人で来ようね』って何回も言うんです。そんな木村さんに、私は構わないでなんて言えませんでした」

「えっ・・・」


吉川には聞こえなかったかもしれないが、俺の耳には織田の小さな驚きは聞こえた。


「だから私、頑張って織田さんと仲良くなろうと思いました。でも木村さんと織田さんの仲がドンドン悪くなっていくなら、私は仲良くなれなくても構いません。だから木村さんのためにも戻ってあげてください!」


そう言って頭を下げる吉川。

俺は吉川は明るくて面白い子だと思っていたが、今ので結構印象が変わった。周りとの関係を考える優しいやつなんだと思った。

その一方で、頭を下げられた側の織田は、戸惑っているのか、オドオドして困っているように見えた。

ここは俺が背中を押してあげるのがベストだと思って、俺は織田に声をかけた。


「ここで戻らないと木村が」

「渡辺くんは黙っててください!」

「あんたは黙ってて!!」

「ありがとうございました!」


まさかの2方向からの怒声に、俺のからだは過剰反応してしまった。

どうやら罵られたりして咄嗟にお礼を言ってしまうのは、ドMの特性なんだとか。うちの親友が言ってた。

俺は黙った。思わず顔がにやけそうになったが耐えた。


「はぁ・・・わかったわよ。もどるわよ。戻ればいいんでしょ」

「織田さん・・・」

「言っとくけどあんたのためじゃないわよ。紗枝のために戻るんだからね」


これが俗に言うツンデレってやつか。

吉川は今にも泣きそうな顔に見えた。よほど嬉しかったのだろう。

そして織田は織田で照れくさそうに頭をポリポリとかいていた。

そんな照れている織田を見て、不覚にもキュンときてしまった。


「ほら、行くわよ。紗枝が待ってるんでしょ」

「織田」

「何よ」

「俺と付き合ってくれ」

「イヤ」


即答。


「もうちょっと考えてくれてもいいじゃねぇの?」

「なんでこんな時に告白してんの? もっと空気読みなよ」

「空気読んだら付き合ってくれるのか!?」

「付き合わない」

「なんでだよ!」

「あーもううっとおしい! 近づくな! このまま帰れ!」

「ウヘヘ」

「何ニヤニヤしてんの。気持ち悪い。ちょっと寄らないで」

「もっと言って!」

「なんなのこいつ・・・超キモイ! 早く行くよ!」


そう言って吉川の手を取って走っていく織田。

引っ張られている吉川もどことなく嬉しそうだ。

置いて行かれた俺は、小さく笑って駆け足で二人を追いかけた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しいです。


長かったぼっちデイズも次回で本編最終回となります。


次回もお楽しみに!

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