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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
117/128

カレーライス

母さんの命令もあってか、弟軍団もリビングへと集まった。

こんな中でいつも通りなのは、弟、母さん、浩一くんの3人だけだ。

母さんと浩一くんは、なんかもう『気にする』とかっていう類の概念が抜け落ちているのかもしれない。マイペースを貫きすぎて逆に怖いわ。

弟は表情がいつも通りすぎてわからないだけ。隣の可憐ちゃんは借りてきた猫みたいに大人しくなってる。

リビングにあるテーブルだと全員座れないということで、俺と渡辺と母さんはキッチン側のテーブルに座っている。こんなに家に人がいるのなんていつ以来だろう。・・・いつ以来とかじゃなくて初めてだな。酸素が薄い気がする。

母さんがカレーを皿に盛って、各々の前に置いていく。

そして全員に行き渡ったところで母さんが席に座って言った。


「はい、いただきます」

「「「いただきます」」」

「はい、召し上がれ」


カチャカチャと皿とスプーンがぶつかる音が聞こえる。


「うめぇ!」

「おいしいです!」


浩一くんと吉川さんがそれぞれ言うと、母さんが、


「でしょ? 母さんが作ったんだからおいしいに決まってるでしょ。ドンドンお食べ。旦那の分までたべちゃえたべちゃえ」


哀れなり父さん。

今日の夜ごはんはインスタントラーメンか鯖の水煮缶になりそうだ。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


そんな中、木村と姉さんは口も聞かずに黙々とカレーを口に運んでいた。

俺はカレーを口に入れてもごもごしながら、そんな2人を見ていた。


「で、渡辺くんはどの子が好きなの?」

「ブハッ!!」


俺はカレーを吹き出した。


「あんた何吹き出してんの! 汚いなぁ・・・ほれ、拭きなさい」


そう言って母さんから台ふきを受け取ると、そのへんに散乱したカレーを拭き取った。

これは母さんが悪いだろ。

なんでほぼ初対面の渡辺に恋バナふっかけてんだ。俺はテーブルにカレーぶっかけてるけど。あれ。俺今うまいこと言った?

とにかく、ここの3人にしか聞こえない音量で話しかけたもんだから、俺が変なところに詰まらせて吹き出したみたいに見えただろう。滑稽な話ですな! クソッ!


「んで? 誰が好きなの?」

「あの最後に来た子です」

「ふーん」


答えんのかよ!

いきなり初対面の友達の母親と一緒に恋バナしちゃう同級生ってどうなのよ?


「渡辺くんはMでしょ」

「なんで・・・わかったんですか?」

「女の勘よ」

「俺、お母さんもアリかもしれません」


何告白してんの? 


「またまた。渡辺くんは冗談が上手ね」

「ハハハハハ」

「ハハハハハ」


なんで和やかになってんだよ。

この手の連中は全く意味がわからん。母さんもそっち側の人間だもんな。俺とは違う人種なんだ。知ってた。

まぁ和やかに2人が話している中で、俺はカレーを食べ終わった。

それとほぼ同時に渡辺も食べ終わった。

あれ? 喋ってた分渡辺のほうが遅いと思ったんだけど、同時ってことはどれだけ食べるの早いんだよ。


「お前食べるの早すぎ」

「早食いには自信があるんだ」

「ここは早食い会場じゃないぞ」


そうは言ってもこの間に浩一くんは2杯目を食べ終わってるっていうね。

ここは何? カレーバイキングでもやってるの? しかも先着順。


「渡辺くん、おかわりは?」

「あ、大丈夫です。こう見えて小食なんで」

「お前、サッカー部なのに小食なの?」

「サッカー部と小食は関係無いだろ」

「運動してる人間はたくさん食べるって決まってるんだよ」

「そんなことないだろ。効率よくエネルギーをからだに回してるって考えるんだ」

「カロリーはどこ行った」

「あんたら仲良しね」


そんな俺と渡辺の会話を聞いていた母さんが割って入ってきた。


「仲良し? どこが?」

「親友ですから」

「あら。こんなのと親友なの? 疲れない?」

「失礼な」

「でもあんたが友達なんて連れてくるの初めてじゃないの」

「あー・・・まぁ」

「しかも女の子もたくさんいるし」

「これは成り行きで・・・」

「渡辺くん」

「はい」


母さんが改まって渡辺の名前を呼んだ。

その声に姿勢を正して答える渡辺。


「こんな息子ですが、仲良くしてね」

「それはもちろん」


本人の目の前でそういう話しないでもらえます? 小っ恥ずかしいんですけど。


「さてと。これはどうしてこうなったの?」


母さんがテーブル側の女子3人を見て言った。

さすがお母様。なんでもお見通しなのね。


「まぁそれはかくかくじかじかうんぬんかんぬん」

「あらま。とんだ修羅場ね」

「修羅場?」

「そうじゃないの。だって1人の子を2人が取り合ってるんでしょ? 立派な修羅場じゃない!」

「何興奮してるんだよ。気持ち悪い」

「明日から夜ごはん抜きね」

「ごめんなさい」


高速の謝罪人とは俺のことだ。


「で、どうすんのよ」

「それを話し合ってたところで、母さんが姉さんを連れてきたんだろ」

「だってそんな状況になってるなんて知らないもん」

「知らないもんって・・・いい大人が『もん』とか使うな」


あんたみたいなおばさんが使うと気持ち悪いったらありゃしない。


「とにかく話し合うしかないんじゃない?」

「簡単に言いやがって・・・」

「簡単なことじゃないの? 2人とも友達なんでしょ?」

「親友って言ってる」

「親友ならなおさらでしょ。ケンカしないなんてどうかしてるわよ」

「自分もそういう経験あるみたいな言い方だな」

「もちろんよ。人生始めて何年経ってると思ってんのよ。大先輩よ」

「じゃあなんかアドバイスしてくれよ」

「馬鹿ね。さっき言ったでしょ。話し合うのが一番の近道よ。ほら。お皿洗っちゃうから集めてきて」

「話し合いねぇ・・・」


そう呟くと、俺は食べ終わった全員分の皿を回収しに回った。


「おかわり!」


ただ一人。浩一くんが4杯目に差しかかろうとしていたので、それだけは回収しないで置いたままにしておいた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


かくかくじかじかうんぬんかんぬんって便利ですね。

この章で最終章になりそうな雰囲気を醸し出しておきます。

理由はかくかくじかじかですw


次回もお楽しみに!

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