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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
116/128

みてるだけ

『善は急げ』と『急がばまわれ』

この二つは両極端なことわざだ。

姉さんをこの場に呼び出してウサ美ちゃん解決法を実践するか、それとも作戦をじっくりと練りに練って万全の体勢で挑むか。

どちらにしろ、この問題は木村と吉川さんがメインになるわけで、俺と渡辺は蚊帳の外と言ってもいいくらい蚊帳の外だ。スタンド使いとそうでない一般人ぐらいの差がついている。

だから俺と渡辺は話し合いには参加しても、意見を出すことも無ければ議論することもない。というよりできない。


「うーん・・・」

「むむむ・・・」


唸る二人。

そんな二人を俺と渡辺はキッチンにある椅子に座りながら見ていた。

リビングにあるテーブルに肘を付いて悩んでいる木村と吉川さん。

俺と渡辺はカツゲンを飲みながら見ていた。

一応二人にも聞いたのだが、二人揃って答えはNOだった。カツゲン嫌いなのかね?

二人の方を黙ってみていた渡辺が視線はそのままで俺に話しかけてきた。


「どうする?」

「どうするもこうするもないでしょ。俺たちに出来ることはないですわ」

「なして女口調?」

「なんとなく」

「ふーん」


こんなどうでもいい会話をするくらいしかすることがない。

だから二人の会話を見ていると言っても過言ではない。

そう考えてみると、俺、渡辺と二人きりだと何話していいのかわかんないや。

共通の話題もなければ共通の趣味があるわけでもない。あ、サッカーの話題とかならできるけど、そんなタイムリーで盛り上がれるサッカーの話題が都合良くあるわけでもない。

だからと言って、


『若島津と若林ならどっち派?』

『うーん・・・ポジション的に松山かな』

『あ、マジで? それがアリなら俺はサンターナだわ』

『サンターナターンとか練習したべ?』

『反動蹴速迅法なら練習した』

『雷獣シュートとかもやるよな』

『やるやる』


みたいな会話が渡辺と続くとは思えない。ワールドユース編なんてきっと見てないもん。

それか


『トシとヒロならどっち派?』

『うーん・・・ポジション的にマルコかな』

『あ、マジで? それがアリなら俺は松下だわ』

『ワンツーカウンターとか練習したべ?』

『神谷の片足ガクってなってからのスルーパスなら練習した』

『軸足閉じる練習とかもやるよな』

『やるやる』


みたいな。

・・・これはわかんねぇよな。キャプテン翼より渡辺がわかんない可能性が高い。

となると話せる話題がない。

どうしたものか・・・


「むむむむ・・・」

「どうした?」

「ん?」

「いや、いきなり唸り出したから」


思わず心の唸り声が聞こえていたらしい。困ったものです。


「別に。お前と話すことないなぁって思って」

「まぁ話したいことを話したい時に話せばいいだろ。無理に話すことないだろ」

「TPOをわきまえるってやつだな」

「それを言うならTOPだ」

「お前、それ頂上だから。TPOであってるから」

「細かいことは気にすんな」

「それボケてるんだよな? そうなんだよな?」


無言で答える渡辺。

そんなところ無言にしたって全然伝わらないんでしゃべってもらえます?

無言ということは肯定と受け取るからね。このバカ。

どうせ間違えただけなんでしょ。このバカ。ツッコミ入れてやらないんだからねっ。


「どうなると思う?」

「えっ、何が?」

「木村と吉川」

「あー」


どうなるんでしょうね?

俺が予測できるならあの二人はもう姉さんと仲良くなってると思うんだけどね。

木村は意外と自分のことには疎いから気づかないんだろうけど、吉川さんは吉川さんでちょっと空回りしてる感も否めない。

でも一番の原因は姉さんの過剰なまでの嫉妬だろう。姉さんどうしたんだ? 生理か?

生理ならイライラしてても仕方ないって思えるけど・・・


「ただいまー」


その時、我が家のお母様がご帰宅なされた。

ってもうそんな時間かよ。

時計を見てみると、時刻は6時。24時間で言うと18時。

知らないうちにここまで時間が進んでいたとは。時が加速したのか? もう少ししたら世界が一周して新しい世界が構築されるんだろうな。そこでも俺はオタクだろう。運命なんだから仕方ないさ。


「お、お邪魔します」

「は?」

「伊織!?」


まさかの来客だった。

母さんと一緒にリビングに入ってきたのは、紛れも無く、姉さんこと伊織ちゃんだった。

それに気づいた木村が思わず声を上げていた。


「なんか家の前でウロウロしてたから、入ってもらった。あんたのクラスメイトなんでしょ?」

「いや、間違ってないけど・・・どうして姉さんがここにいんの?」

「えっと・・・」


言いにくいのか、口をもごもごとさせていた姉さんだが、木村の隣に吉川さんがいるのを発見して、急に険しい顔になった。

あちゃー。


「どうして吉川さんがいるの?」

「え、えっと、これはですね」

「また私を除け者にしてたんだ」

「伊織?」

「紗枝も紗枝だよ。どうして私を除け者にするの?」

「私は除け者になんかしてないじゃん。勝手に伊織がそう言ってるだけでしょ?」


両者にらみ合って動かない。脳内では激しいバトルが繰り広げられているのかもしれないが、俺らには普通ににらみ合っているようにしか見えない。

その膠着状態を解除させたのはまさかの母さんだった。


「ケンカ? とりあえずお腹減ったからご飯食べない? 今日はカレーよ」

「はぁ? 何言ってんの? こんな状況でよくそんなことが言えるな」

「つべこべ言わないで手伝いなさい。幸人もいるなら幸人の友達も呼んでみんなで食べなさい」

「そんなこと言ってる場合じゃ・・・」

「いい? これはお願いじゃなくて命令よ。母親命令。いいから呼んできなさい」

「・・・わかったよ」


全く。家の主には勝てる要素が見つからない。尋問は拷問に変わってたってわけか。

とりあえず休戦することにしたのか、木村と姉さんは睨みを利かせていた状況を解いて、並んで座っていた。

まぁひとまず収まったって感じか。

俺はその様子を見て、弟を呼びに行くために階段を登った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しいです。


伊織ちゃん久々の登場!

だがヒステリック!w


次回もお楽しみに!

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