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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
115/128

空振りの挑戦状

ピンポーン


「ハッ!」


インターホンに過剰反応した渡辺が小さく声を上げた。

驚くのも無理はない。だって来るのが早いんだもの。

可憐ちゃんが電話してから5分と経っていない。


「おい、来たぞ?」

「・・・あぁそっか。ちょっと行ってくるわ」

「が、頑張って!」


吉川さんが胸の前で祈りを捧げるかのように手を組んで応援してくれた。

俺はまっすぐに玄関に向かった。

玄関を開けると、目の前に木村がいた。

思わずニヤけそうになったが、ケンカしているということを思い出して、ニヤけそうになる顔を無理やり押さえ込んだ。


「・・・来ちゃった」

「ぶはっ!」


思わず吹き出してしまった。

何その遠距離恋愛中に彼女が内緒で会いに来たみたいなセリフ。

ニヤけそうなのを押さえていたせいか、余計に笑いがこみ上げやすくなっていた。

俺が顔をそらして笑っていると、木村が照れたように食いかかってきた。


「ちょっと何さ! 人がせっかく来てあげたのに、いきなり爆笑とか酷くない?」

「いやいや。そのセリフ選びはダメだろ」

「むー。ひどい」


そう言って頬を膨らませる木村。

笑いが落ち着いてきたところで、改めて木村の顔を見た。

昨日に比べて熱もなさそうな顔をしている。いつもの木村の顔だ。

その木村が頬をへこませてニコッと笑った。


「熱はもう大丈夫か?」

「うん。ありがと」

「別に何もしてないし」

「それもそっか」


エヘヘと笑う木村。

いつもどおりだ。

俺が思っていたよりも木村は怒ってないみたいだった。

もしかすると無理してんのかもしれないけど、こうやって自然に笑ってくれるってことは、そう理解していいんだと思った。


「あのね、お兄ちゃんのことなんだけど・・・」

「まぁそれはあとで聞くわ。とりあえず上がれよ」

「うん。お邪魔しまーす」

「はいどーぞ」


俺は木村を連れてリビングへと向かう。

その時にバタバタと音が聞こえた。

あいつら見てたな。それだけ心配してたってことにしてやろう。

途中で木村が俺の手を握ってきた。俺は少し驚いたが、その手を握り返すと、木村がエヘヘと笑った。


「おっ。仲直り成功か?」

「紗枝ちゃん」

「カレンにも感謝してくださいよ」

「あ、どーも久しぶりっス」


渡辺は爽やかな笑みを浮かべて。弟は聖母のような微笑み。可憐ちゃんはツンデレ全開。浩一くんは特に挨拶だけ。

それぞれがリビングに入ったときに声をかけてきた。

吉川さんを除いて。

吉川さんはモジモジとしながらこちらをチラチラと見ていた。


「よしっ」


そう小さく隣に立つ木村が言った。

俺の手を離して吉川さんの元にトコトコと近づいていくと、吉川さんの前にしゃがみこんで手を取った。


「吉川さん」

「き、木村さん、その・・・」

「ごめんね」

「いや、その、私の方こそ・・・ごめんなさい」

「吉川さんは悪くないよ」

「そんなことない! だって、織田さんとケンカして木村さんのこと困らせちゃったし」

「友達なんだしケンカの一つや二つするもんでしょ?」

「友達・・・」

「うん。私ら友達でしょ?」

「・・・うん。うん。友達、です」

「うんうん」

「うぅ・・・木村さーん・・・」

「おーおー。泣くほど嬉しかったか。よーしよしよし」


木村に抱きついて泣く吉川さん。

木村が困ったように吉川さんの頭を撫でて介抱していた。

木村は頑張った。

直前まで握られていた木村の手が、少し震えていたのだ。結構勇気を振り絞ったのだろう。

そう考えると木村も木村なりに今頑張っているのであろう。

せっかく出来た友達だ。仲良くするがいいさ。

そう思って渡辺を見ると、うっかり目が合ってしまい、微笑まれた。勢いよく目をそらした。気持ち悪いったらありゃしない。


「結局仲直り出来たんスか?」


空気を読むつもりもないのか、浩一くんがストレートに聞いてきた。

その質問に答えるべく、木村の方を見ると、今度は木村と目が合ってしまい、微笑まれた。


「できたよ」

「そうっスか。おめでとうございます」

「おう」


そう改まって言われると照れくさいのなんのって。

その言葉に続く形で、今度は可憐ちゃんが口を開いた。


「ふふふ。全部カレンのおかげですね! 感謝しなさい!」


立ち上がってテンションアゲアゲで言う可憐ちゃん。


「あ、そうそう。電話なんだけどさ、最後なんて言ったの?」

「はい?」

「いや、最後音割れしてて全然何言ってるかわかんなかったんだよねー」

「なん・・・だと?」


かなりショックを受けている様子の可憐ちゃん。

そりゃ無理もない。必殺技出したのに、相手がゴム人間で電気無効だった時のエネルみたいな感じだろう。


「それでなんて言ったの?」

「うっ・・・う、うわぁあああ!! もうやめてぇええ!!」


そう叫びながらリビングを出ていった可憐ちゃん。

階段を登った音が聞こえたので、多分弟の部屋に逃げ込んでいるのだろう。

爆笑している浩一くんを横目に、弟が立ち上がった。


「お兄ちゃんも紗枝ちゃんももうケンカしたらダメだよ?」

「わかってるよ」

「心配かけてごめんね」

「じゃあ僕、可憐ちゃん追いかけてくるね。浩一くん、行こ」

「おう。じゃあ末永くお幸せにー」


微笑んでいる弟とヒラヒラと手を振る浩一くんはリビングを出ていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


なにかとリア充爆発しろなニュースが多い中で、一人黙々と作業用BGMを聞きながら書いてました。

爆ぜろリア充!弾けろ・・・特に面白いのが思いつかなかったw


次回もお楽しみに!

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