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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
110/128

猛省

木村兄からちょっと部屋から出ていてくれと言われ、俺は大人しく部屋から出た。

また部屋から出されてしまった。

もしかすると木村の部屋との相性が悪いのかもしれない。きっと磁石S極とS極なんだろうな。木村はなんともないみたいだからきっとN極なんだろう。姉さんはS極。吉川さんはN極。そして渡辺はM極だな。

性的な意味で。

前は外に出されてしまって、木村兄の突拍子もない変態行動に圧倒されて逃げ帰った形になったが、今回は帰るわけにはいかない。木村とはここで向き合っておかないといけないと思うんだ。ここで逃げたらもう元に戻らない気がする。

それにしても、あんなに怯えたような木村を見るのは初めてだ。

トラウマになるぐらいまでショックを受けていたとは思ってもみなかった。

ただちょっと友達から馬鹿にされたくらいじゃん。そう思っていたのだが、木村にとっては『くらい』ではなかったんだと思った。

俺はそこまで友達の必要性を感じないからけっこう楽観視してるのかもしれないけど、木村からしてみればかなり重要なことだったのかもしれない。というか重要なのだろう。

きっとそのへんの食い違いが今回の鍵になってるんだと考える。

・・・だからと言ってもどうこうできることじゃないだろ。

俺、こう見えても今まで友達なんていた試しがないから、木村の気持ちになって考えることなんてできねぇし。逆に木村も俺の気持ちなんて分からんだろ。そう思う。

一人になるだけで、こんなに考えるとは思わなかった。

そう考えたら、熱がある木村はもっと考えられないんじゃないか?

一番の理解者の木村兄だって、木村の気持ちなんてわからんだろ。分かってたら下着漁りなんてしないだろうし。

ってことは、木村ってあんだけ悩みやすいくせに、誰にも相談しないのか?

俺は相談するほど悩んだりしないけど、木村は俺とは違って、人間関係とかめっちゃ大事にしそうだもんな。だから姉さんが色々言われて、ここまで怒れるんだろうし。

ちょっと落ち着いたほうがいいのだろうか?

木村にも落ち着く時間を与えたほうがいいのだろうか?


・・・木村と距離を置いたほうがいいのだろうか?


俺は木村がそうしたいって言うなら、そうなってもいいと思う。

こんなモヤモヤしたまま傷を舐め合ってても仕方ないし。


「はぁ・・・ハッ!」


って、すげぇマイナス思考になってるし!

俺らしくもない!

ちょっと路線変更だ!

話を元に戻そう。

えっと・・・そうそう。姉さんと吉川さんのことをどうするかを考えればいいんだ。

そうすれば木村との仲もなんとかなる!・・・よな?

一度考えてしまうと、悪いことがよぎってしまってそっちの方向に引きずり込まれてしまう。

何回考えても何度思考しても全然いい方向に考えがまとまらない。

俺はしゃがみこんで天井を見つめた。

廊下の壁がとても冷たかった。フローリングの床も冷たかった。まさか今さらになってこんなことを思うぐらい、頭がごちゃごちゃしていたんだと改めて思った。

少し落ち着こう。

そして木村と話そう。

話したところでまた言い合いになったら、いつもみたいに俺が折れよう。

俺が折れれば話はつながるんだ。

よし。そんで木村の話を聞いて、それから考えよう。

余計なことは考えずにまずは木村に謝ろう。

俺は大きく息を吸って、ゆっくりと息をはいて深呼吸した。ロングブレスダイエットじゃないよ?

俺が覚悟を決めたときに、部屋の扉が開いて、木村兄が中から出てきた。まるで手術が終わって家族のもとへ現れる医者みたいな感じだった。

俺はその家族さながらに、木村の様子を木村兄に聞いた。


「木村は大丈夫なんですか?」

「・・・泣いてたよ」

「すんません・・・俺のせいです。言いすぎました」

「わかってるんだね」

「はい。だから木村に謝ってきます」

「ダメだ」

「え?」


まさかの解答に、俺は目を見開いて木村兄を見た。


「君を紗枝に合わせるわけにはいかない」

「えっ、ちょ、待ってください。こうなったのは俺のせいだし、だから謝りに行かせてくださいよ」

「君は紗枝を泣かしたんだよ?」


俺の知っている木村兄とは違う木村兄が目の前にはいた。

真剣な目で、俺のことをまっすぐに見つめてくる。

『俺はノンケですが、食われるつもりはないです!』なんて冗談を言えるような雰囲気ではない。

俺はその視線に耐え切れなくて目をそらした。

実際に泣かしたのは俺が原因だ。だから否定もできない。

俺が黙っていると、木村兄が口を開いた。


「せっかく来てくれたのに悪いけど、今日は帰ってくれないか? なんなら送ってくよ」

「・・・わかりました。一人で帰ります」


俺はそう言って、木村兄が差し出した俺のカバンを受け取ると、大人しく階段を降りた。

だって反論できないんだもん。

真面目モードの渡辺なんか比じゃないくらいに、木村兄の真面目モードは真面目だった。

なんか・・・考えてることの全てが見透かされてるような気がしてならなかった。

事実を突きつけられて怖かったのかもしれない。

俺は小さく『おじゃましました』と言って玄関を出た。

前に来たときよりも寒くなった冬直前の空気は、とても冷たかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しいです。


シリアスだ・・・

コメディ要素が無くなってきたww


次回もお楽しみに!

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