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ぼっちデイズ  作者: シュウ
六章
102/128

ドMには旅をさせろ

学校へ行くと、朝一番に渡辺に連れ出された。

引っ張られるがまま何事かと思っていると、いつもの人気のない例のところではなく、教室を出たすぐのところで渡辺に両肩を掴まれた。

今回は最初から真面目モードの渡辺だった。最初からクライマックスかよ。めんどくさい。

てか何これ? ちょっと状況把握できないんですけど。

教室を出ていく時にいつもの二人がこっちをチラッと見て、ニヤニヤと顔に不気味な笑みを浮かべていた。どうか俺だけは助けてください。渡辺と川崎のカップリングでもして楽しんでてください。お願いしますからぁ!(涙声)


「ちょっと話がある!」

「うん。それ先に言おうな。うん。」


どうせそうだろうと思ってたけどさ。

でもこんなところでいいのかい? 人様に聞かれたくない話ならもっと違う場所に行った方がいいのではないかい?

それどころではないようで、渡辺が息を荒らげながらゼーハーしていた。

何、からだの中の悪魔が目覚めそうなの?


「実はな・・・」

「おはよ」

「ありがとうございますっ!!」


・・・は?

こいつ急に何言ってんの? 妄想全開か?

ふと挨拶の主を探してみると、渡辺の後ろに姉さんこと伊織ちゃんを見つけた。きっと姉さんが挨拶の主だろう。

よく見ると、姉さんは渡辺の反応にケラケラと笑いながら教室の中へと入っていった。

当の渡辺は、下を向いて恥ずかしそうに照れていた。

そして教室の中から椅子ごと倒れるような音が聞こえた。どうせあいつだろう。これで渡辺受けは確定だな。攻めは俺じゃない方向で。


「で?」


依然意味不明な渡辺に俺は問いかけた。


「・・・もう気づいてるんだろ?」

「え、なんのこと?」


マジでわからないんですけど。


「・・・前にな、夢の中に織田が出てきたんだよ」

「織田? 信長? 信奈? どっち?」

「戦国武将じゃねぇよ。織田だよ。織田伊織」

「織田伊織? ・・・あっ」


どっかで聞いたことある名前だと思ったら、姉さんではないか。


「で、姉さ・・・伊織ちゃんがどうかしたのか?」

「お前・・・織田と名前で呼び合う仲なのか・・・」


とても恨めしそうな目で俺を見てくる渡辺。

恨めしいぞ・・・恨めしいぞポルナレフ! デーボかよ。


「いや、名前しか知らなかった時からこれで呼んでたから、定着しちゃって」


『今では姉さんと心の中で呼んでます』なんて言えやしないよ。これは墓まで持っていくんだ。恥ずかしいもん。


「んで、伊織ちゃんがどうかしたのか?」

「・・・もしかすると、俺、こ、恋しちゃったのかもしれん」

「恋? お前何言ってんの?」


アレか? 魚の鯉と恋愛の恋を勘違いしてんのか?

しかし最初からクライマックス状態を維持している渡辺がそんな冗談を言うとは思えない。

だとすれば、マジで恋?


「・・・えっ、マジで?」

「・・・本気と書いてマジ」


古いな。ゲッツより古いな。俺は結構好きだけど。


「伊織ちゃんのどこが好きなんだよ」


確かに伊織ちゃんはカッコイイ。そして何より美人だ。

木村と比べても大人っぽく見えるし、そこらへんの女子高生と比べても上を行っていると思う。

そしてあの人頭いいんだよな。なんか前のテストでもさりげなく俺のテストの点数見て鼻で笑ってたから、俺もさりげなく見てやったら、なんか上1桁が9とか書いてあった。絶対先生脅してテスト内容聞いたんだよ。

・・・ん? 脅す?

はっ! まさか!


「渡辺! お前ふがっ!」

「バカ! 大きな声出すな! わかってるんだよ! 俺だってわかってるんだよ!」

「ふがふがふが」


渡辺に口を抑えられながらフランドールごっこをしていたのだが、圧倒的に渡辺の声の方がでかかった。圧倒的声量ッ! さすがサッカー部。

声量を押さえ込んだ渡辺が、声を落として話し始めた。


「いやさ、その・・・なんてゆーの? お前にこんなこと言って通じるのかわかんねぇんだけどさ」

「じゃあ聞くのやめようか? 巻き込まれたくないし」

「いや嘘です。聞いてください」


めんどくさいやつめ。


「前に夢に織田が出てきたんだ」

「どうせ夢の中でボロクソに言われたんだろ」


ツッコミ待ちの意味も込めてボケた。


「・・・なんでわかったんだよ」

「わー。俺ってばエスパー」


相手の手札とか見えちゃうのかなー。


「・・・ってゆーかそれだけで惚れたの?」

「わ、悪いかよ」

「バカじゃねぇの?」

「バッ、バカっていう方がバカなんだぞ」

「黙らっしゃい!」


渡辺に一喝して黙らせた。

こいつ、意外と惚れ癖があるのかもしれない。

『あれ? ちょっと楽しいかも』

って思って、

『意識しすぎてるなー』

って自覚して、

『あいつのこと好きだわ!』

ってなっちゃうやつな。

この場合っていうのは、たいていが思い込みであって、いざ告白とかしちゃうと失敗するケースが多い。

人間を疑うことから始める俺が言うんだから間違いない。


「お前はちょっと恋しすぎだ。AKBを見習え」

「いいだろ。俺の恋なんだからあーだこーだ口出しするなよ」

「だいたい木村の時だって、そんな感じで『夢の罵られ生活』とか言って爆死してたじゃん」

「今度のはマジだって。木村より織田のほうがサディスティックっぽいもん」


ぽいもんじゃねぇよ。あの人はマジだって。

プレイ中に瀕死まで追い込んでそうだもん。怒った時の目からそんな感じがする。


キーンコーンカーンコーン。


「あ、じゃあそういうことだから!」


と、そう言った渡辺は、景気よさげな顔で教室の中へと戻っていった。


「そういうことだから、って・・・」


どういうことだってばよ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いて頂けると嬉しい限りです。


渡辺は惚れやすいです。


プロフィール欄を更新しました。


次回もお楽しみに!


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