表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の人生ヘルモード  作者: 侘寂山葵
肉沼の森
7/109

2−6

 


 

 キャンプ地を歩いていると、隣で案内してくれているリーンが話しかけてくる。


「とりあえず、武器は今持ってるのでいいかしら、防具はどうする?」

「んー俺が鎧なんて来ても、きっと重くて動けそうにないし、とりあえずはいいよ」

「それもそうね、じゃあ軽そうな手甲と脚甲だけ準備しておくわ、後、メイには今から魔法を使えるようになってもらいましょうか」


 その言葉を聞いた瞬間思わず彼女の肩を掴み揺さぶってしまった。


「使えんのッ、俺が魔法使えるの? 本当だな、期待するからな」

「ちょ、ちょっとまって、落ち着いてっ、使えるから」


 思わず興奮してしまった自分を諌める。でも仕方ないじゃないか、せっかく苦労して出てきたのに、再度あの地獄に戻るのだ、少しでも助かる可能性を上げたいだけなんだ。――いやー魔法か、楽しみだなチキショウ。


「そうかーついに、魔法なんてものが使えるようになってしまうのか」


 色々と妄想が膨らむ、やはり魔法という響きにはどこか不思議な魅力があるのだろう。


「でも、メイはそんなに魔力多いほうじゃないみたいだし、とりあえず一つ二つ位よ、覚えられて」

「魔力が少ないって、見ただけでわかるの?」

「わかるわよ、そういう魔法があるの。最初に見つめてた時に確認したから」


 とりあえず、よく分からないので適当に返事をしておく。


「一つ二つか、そんなに覚えられるんだろうか、一日しかないのに」

「何を言っているの? 魔法なんて覚えるだけなら簡単じゃない」

「そうなの? なんかやたら長い呪文を、むにゃむにゃ唱えてるイメージあるんだけど」


 どうやら俺のイメージしてる魔法とは少し違うようだ。隣を歩くリーンが一つの天幕の前で立ち止まる。そして中に入っていくと数冊の本を持って戻ってくる。


「とりあえず、メイがどの魔法と相性良いかわからないから、基本的な属性の『下位永久魔道書』をもってきたのだけど、どれがいい?」


ドサドサと下ろされている魔道書なるものを見ても、よく分からない


「どんな魔法があるか全くわからないから、どれがいいと言われても……、その『永久魔道書』ってのが、なんなのかすら、わからんのだが」


 リーンは俺が記憶喪失なんかではないと、わかってはいるが、どの程度の情報を知っているのか、測りかねているようで、ある程度、知っている定で話てくる。「あら、そうなの?」と言いながら、ずらりと本を横に並べている。


「じゃあ説明はもう少し後でしてあげるから、今ある、火、水、土、風、雷、氷、の中でどれがいいか選んで?」


 うんうん唸って考えこみ、しばらくして、俺は雷を選択した。沼にいるあいつらは基本肉の固まりばっかりなのだから、電撃と言う選択は悪くない気がする。


「じゃあどんなタイプの魔法がいいか言ってみて、私が選んであげるから」


 使い勝手の良さそうな飛び道具と、自身の攻撃力を上げる魔法はないかとリーンに聞くと、彼女は雷の魔道書と思わしきものを手に取り、パラパラめくっている。


「これと……これかしら、とりあえず、メイ、ここのページに手の平を置いて」


 言われるがまま右手を置くと、リーンがなにやら呪文を唱え初め、しばらくして俺の手の甲に指を押し付け最後の言葉を放つ――――「その身に宿れ『ボルト・ライン』」


 すると俺の右手の甲に熱が走り、紫色に薄く輝く刻印のようなものが浮き出てくる。


「おめでとう、雷に適正はあるみたいね、じゃあ『魔法』と『魔道書』の説明をするわね、ここまで来れば説明が楽だもの」


 リーンはそう言うと、何も知らない俺に、丁寧に説明をしてくれた。

 

 ◆


 彼女の話も終わり、自分なりに理解はした。だが、まだ多少不安もあったので、一先ず頭の中でまとめてみることに。


 この手の甲に出てきた刻印は、魔法を簡易化し魔力を視認する為のもので、魔道書は呪文をこの刻印に入れる為の物。つまりこの刻印は『魔法の倉庫』みたいなものらしい。

 入れておける魔法の数は、自身の魔力の大きさによって変わり、大きければ大きいほど入れておける魔法の数が多くなるとの事。

 簡単な目安としては、刻印の色が青に近ければまだ空きがあり、いっぱいになると赤くなる。

 現在俺の手の甲の刻印の色は紫。つまりさっきの『ボルト・ライン』と言う魔法が一個入って、半分近く埋まってしまってるということだ。


 そしてもう一つ説明を受けた『永久魔道書』とは、その名の通り何度も使える魔導書で――値段もかなりお高いとの事。

 一般的に使用されているものは、そこまで高くないらしいが、一回使ってしまうと入れた魔法を戻すまで使えなくなってしまうといったデメリットがあるんだとか。

 彼女達は状況によって魔法を入れ替える必要がある為、下位のものではあるが、国から永久魔道書を渡されているそうだ。


「でも、本当に覚えるだけなら簡単なんだな、もっと難しいもんだと思ったのに」

「大昔はさっきメイが言っていたみたいに、長ったらしく呪文を唱えてたみたいよ、でも戦闘中に長々呪文唱えられる人なんて少ないでしょ? 昔からモンスターの数の方が人よりも圧倒的に数が多かったから『魔道士』達が呪文の省略に研究を集中したお陰で今があるのよ」

「魔道士って言うとサイフォスさんみたいな?」


 リーンは俺の言葉に一瞬、きょとんっとした顔をして「ちょっと違うわね」と言った。


「サイフォス隊長は『魔法使い』――メイ、魔道士と魔法使いは違うのよ? 『魔法使い』は単純に、自身と杖に魔法を刻みこんで魔法を主力に戦闘などをする人たちで『魔道士』は魔法の使い方、技術、新しい発見に力を注ぐ人たちの事を言うのよ」


 リーンは俺にそう教えてくれると、魔道書の新たなページ開き、次の魔法を手に刻みこむ。俺の手の刻印は二つ目の魔法が入ったせいか今は赤々と光ってる。


「今入れたのは『エント・ボルト』手で触れたある程度までの大きさの無機物なら一定時間、電気を纏わせることができるわ。とりあえず今覚えた魔法を使いに行ってみましょうか」


 俺は待ってましたとばかりに、すぐさま広間に出発する。「使ってみてダメそうなら変えればいいしね」と言いながらリーンは魔道書を抱えて着いて来る。




 ◆◆◆◆◆



 キャンプ地から少しだけ離れた場所に移動すると、リーンは五十センチほどの地面から突き出た岩に指を向ける。



「じゃあ、とりあえずあの岩でも狙ってみて、右手を狙いたい場所に向けて刻印に意識を集中し『魔名〈マナ〉』を言葉に出してね。コツは目標と手が細い線で繋がっているのを想像するといいわね」


『魔名』とは魔法の名前のことだろう、そう理解した俺は言われた通り岩に向かって右手を突き出し頭の中でラインを描く。



「なんだかドキドキしてきたな、よしいくぞっ『ボルト・ライン』」


 俺が魔名を口に出すと岩に向かって細い雷のラインが出来る。


 直後、――紫電が走り、鳴り響く雷鳴。魔法を受けた岩の中央付近に穴が空く。空いた穴の周りは黒くなっていて、辺りには焦げた臭いが漂う。



 俺は半ば呆然として自分の右手をまじまじと見る。



「メイ、刻印を確認してみて」


 呆然としたまま右手を見ると、なんだか少し光が弱まっている。


 リーン曰くこの光の強さで残りの魔力が大体わかるらしい。俺じゃ今の雷は撃てて五、六回らしい。


「まあもう一個の方はもう少し使えるでしょうね。試してみたら? 右手で触れて魔名を言えば良いから簡単よ」


 そう言われ自分の槍に右手を触れ『エント・ボルト』を使う、槍に青白い光がまとわりつき、バチバチと音が鳴る。試しに槍を地面に刺すと、刺した周りに地面が焦げていた。


 リーン先生が仰るには『エント・ボルト』はある程度の範囲までなら地面に掛けることも出来るし、『ボルト・ライン』の方は慣れてきて、ラインを正確に意識出来れば雷を曲げる事も可能らしい。


『エント・ボルト』は仲間に気を付けないと、地面に設置するのは難しいし。


『ボルト・ライン』は線を引いてから発動する為、一瞬だが発動まで時間が掛かる。だがかなりの応用が効く魔法だった。


「まっ……魔法……最高」


 一人で悦に浸っていると、肩に乗ってるドリーが突然暴れだし俺の頬をペシペシ叩く。


「なんだよっ、いきなり、ちょっ、やめろ落ち着け」


 ドリーは肩から根を外し降りると。リーンが置いておいた魔道書近くまで行き、二冊の魔道書のページを開きその手を置く。


「なんだよ、お前も魔法覚えたいの? つか、お前に口なんてねーじゃねーか」


 俺の言葉を聞いたドリーは指をチッチッと振り、リーンに向かって、さあやってくれとアピールしている。リーンはドリーを見ながら「水と土の魔導書ね、別にやるだけならやってもいいのだけど」と言いながら少し困った顔をしている。


「最初にメイと居た時に確認したけど、ドリーさんは魔力ないは……あれ? 結構、魔力があるわね。四つは入れられそうじゃないっ」


 俺より多いじゃないか、羨ましい、「おかしいわねー?」と小首をかしげながらドリーの指示するままにリーンは魔法を入れていく。ドリーの手の甲にも刻印が刻まれドリーは満足そうに俺の肩に戻ってくる。


「だから、アホかっお前どうやってそれ発動させるつもりなんだよ」


 ドリーは俺の言葉を聞くと、人差し指を一本立てる。指先が光り初め、その光で空中になにやら書き始める。魔道書に付いてた刻印のようなものを書き終わった瞬間、ドリーの指から光が溢れ俺を包む『フィジカル・ヒール』ドリーの刻んだ魔法の一つだった。疲れきっていた俺の体に力が戻って行く。


「まじかよっ! 相変わらず、すごいなドリーは」


 俺に褒められたドリーは「そうだろう、そうだろう」と言わんばかりに手を振り、嬉しそうに手をくねらせている。


「凄いわね、刻印を魔力で書いて魔名の代わりにするなんて」


 なにが凄いかは分からなかったが、なんとなく凄いと言うことはわかった。


 

 ◆◆◆◆◆



 日が暮れて来て、モンスターが来る恐れもあるので、俺達はキャンプ地に戻る。


 夕飯を騎士団連中と一緒に食べ、周りと談笑する。たまにドリーを見て忌々しそうな目付きで見てくる奴もいたが、今面倒を起こすのは絶対にまずいので我慢する。


 晩飯を食べていたら、すっかり辺りも夜になり俺とドリー用に仮説された天幕で布を被り横になる。ドリーは肩から離れ、俺の横で何が楽しいのかゴロンゴロン転がっている。


「だーーーーやめろっ、やかましい寝れんだろ」


 あまりの騒がしさにドリーを諌めると、しょうがねーなと、言わんばかりに大人しくなる。なんて奴だ。


「……なあドリー、明日になったら、また〝あそこ〟に入らないと行けないんだよな」


 聞いているのか、いないのか反応はない。


「今度は俺がお前を助けてやるからな」


 ドリーは、イランイランっと手を振り、眠ってしまう(というか眠るんだろうかこいつは)たぶん照れているのであろう相棒を放っておき、俺は目をつぶる。すぐさま睡魔が訪れ意識が沈んでいく……





 ◆◆◆◆◆


 



 ペチペチ  ペシン  パシン  


 なにか変な音が聞こえてくる、意識が浮き上がって来て目を開ける。ダメだ後二時間寝かせ……〝バチィイインッ〟


「イテーよッ!!」


飛び起きると、ドリーが親指を立てている。


「やりやがったな、この野郎、」


ドリーに跳びかかり、腕をガップリと組む。もちろん即効で力負けし、横に捻られコロンと転がった。――先にはリーンが俺に指を向け爆笑していた。


「おはようございやがります」

 

 少々口調が乱れるが、とりあえず朝の挨拶は欠かさない、そんな礼儀正しい男なのだ。


「あ、あら、おはよ……ッう。おはよう」


「いったい、そこで何を、していやがってるんです?」


「お、起こそうと思って、声を掛けたけど――なんど起こしても起きないから、ドッ、ドリーさんに頼んで眺めてたら、メイが腕一本で、コロンって……フフッ、コロンだって、もうだめっ、おかしいったらないわ」


 再度爆笑、――――「てめえらっ! もう絶対に許さねー絶対にだ!」もちろん躊躇いもなく跳びかかり、そして再度リーンにも転がされる。


 黙って立ち上がり服を払う。


「女性相手に、本気を出す訳にはいかないな、今日の所は勘弁してやろう、感謝したまえ」


 紳士な俺はそう言い残し天幕を出る。空を見上げ、ああ今日は狐の嫁入りなのだろう、〝雲ひとつない〟のに……雨が降ってやがる、ちくしょう。


 背後から聞こえてくるバタバタという音と、笑い声を背に朝飯を食べに向かった。




 ◆◆◆◆◆




 ドリーとリーンはしばらくしてから合流してきた、一緒に朝飯を食べ、天幕を撤去する。渡された手甲と脚甲を装備し、武器を背負う。


 俺はブラムの号令に従い集まり、遂に沼の前に集合する。


「いいかお前らっ! 今から肉沼に入る。ここを落とすまでは外に出られると思うなよッ、今回は幸いにもメイと、ドリーの嬢ちゃんが、ここの最奥まで一直線で案内してくれるッ。ここまで状況が整ってるんだ、これで攻略できないってんなら、お前らは唯の役立たずだ。『我らが剣は國民の為に、我らが盾は王妃の為に、揺るがぬ信念で敵を打ち倒せ』」


 ブラムに続いて、騎士団全員で復唱している。俺はボケッとブラムの横に立ち、肉沼の森を眺める。ドリーは相変わらずのマイペースでシャドーボクシングをしている。――どうやら、やる気は有るようだ。



 騎士団の気合い入れも終わったのか、ブラム、リーンは先頭に、俺とドリーはその後ろ、中程にアーチェを据え、サイフォスが後方を固める。


 俺達は総勢十八名と一本で隊列を組み『肉沼の森』に突入したのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ