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俺の人生ヘルモード  作者: 侘寂山葵
水晶都市クレスタリア
33/109

歩めば村へ駆ければ都市へ

 


 目覚めてみれば、時間はすでに朝【六時】朝日は昇り、鳥のさえずりが辺りから聞こえてきていた。

 眠い、凄まじく眠い。昨日は開放感に任せて遊びまくったせいで気がつかなかったが、身体の節々が痛い。

 確かにあれだけの戦闘をし、回復魔法任せに、怪我を厭わず突撃したのだから、当然と言えば当然だろうが、眠気と、痛みで起きる気力が根こそぎ奪われそうになる。


『メイちゃんさん、お早うございますっ』


 俺が目を覚ました事に気がついたのか、日課にしているドリー体操を行いながら、元気いっぱいに声をかけてきてくれる。

 仕方ない、ドリーに声をかけられたなら、起きるしかないだろう。

 嫌がる身体を無理矢理起こし、ドリーに挨拶を返す。


「お早う、ドリー。毎朝頑張ってるな」

『はいっ、メイちゃんさんもご一緒しませんか?』

「いや、俺まだ根っこが生えてない系の人だから、遠慮しておくよ」

『そうですか、相棒なら根っこなんてすぐですよっ』


 ドリー、俺はちゃんと人類の枠組みに入っているんでしょうか? 

 冗談なのか、本気なのかよく分からない励ましに礼を言い、最後に夜番をしていたのだろうドランに声を掛ける。


「お早うドラン、何してんの?」

「あ、メイどん、おはよう。――いんや、昨日は飯さ作ってもらったし、朝はおらが作ろうと思って」


 そう言われて、見てみれば。意外にもドランは手際良く、朝ごはんの準備をしていた。

 へー、上手いもんだな。なんか不器用なイメージがあったけど、ドランって結構家事とかできるのか。


「そう言えばメイどん。飯さ食ったら出発するんだろうけんども、あんまり南さ向かうのはよくねーと思うんだよ」


 ドランは片手で料理をしつつ、腰に差してあった地図を、地面に広げて見せた。そしてその太い指で地図の南部分をトントン、と差す。


「ここなんだけんども、二級区域が広がってんだ。そこさ通る位なら、早めに、南西に向かって進めば村があるんだで。後は村で馬車でも見つければ良いと思うだよ……おらとしては、そっちのほうが良いと思うんだけんども」


 ……うおおおおおッ!?

 正直舐めていた。そして今、俺の中のドラン株は鰻登りである。

 すげえ、そう言えば荷物持ちやってるって言ってたし、料理できてマッピングとかも出来るは当然なのだろうか。

 

 正直、基礎知識が違う俺では、中々地図を見ても覚えられないし、リーンに至っては、地図が違う方向で芸術作品になっている。ラングはよくわからないが、任せて行ってみたら自慢の修行場でした、とオチがつきそうで、任せるのは怖い。

 だが、ドランの地図を見れば丁寧に情報が書きこまれていて、俺でさえも直ぐに場所が判るほどの地図になっている。 

 マッピングも出来て、家事もこなせる荷物持ち。正直これだけで、俺の中で臆病、というマイナス評価を飛び越して輝いて見えた。


「大丈夫ですっ、完璧ですよドランさん。いやー凄いっすわ、尊敬しますっ」

「メ、メイどん。急にどうしたんだべ……気味が悪いんでやめて欲しいんだけんども」

「す、すまん、ちょっと取り乱した。――じゃあドランの言うとおりに進路は決めるって事で。

 俺はちょっと顔でも洗ってくるよ」


 いかんいかん、眠気覚ましと、上がったテンションを落ち着けないといかんな。

 俺は戸惑うドランにヒラヒラ、と手を振り川へと向かった。


 ◆


 昨日散々遊んだ、川に着き、バシャバシャ、と冷水で顔を洗う。

 いやーこれはスカっとするな。早朝だけど、気温も高いし、このくらいの冷たさで丁度い位だな。というか、季節ってどうなってるんだ? 起きたら日が昇ってたし、今まで暑い、と思っても寒い、とは感じた事はなかった。

 今は夏って事か? この辺は、リーンに聞いてみないといけないな。

 

 本当リーンには助けられてるよな。どう考えても記憶喪失なんて信じていない癖に、敢えてこちらに追求する事もしないでくれている。

 まあ、リーンは結構サバサバした所があるし、どうせ「あら? そんなつまらない事どうでもいいじゃない」とか言いそうだ。それに、もし本当の事を話そうものなら「……メイ。大丈夫? ついに頭のほうが『アレ』な感じになってしまったのね。でも大丈夫よっ、きっと治るわ」とか言われるに違いない。ぜってー言わねー。

 

 あれやこれやと、考え事をしていると、どこからか妙な声が聞こえてきた。


「――フンッ! フンッ!」  


 ――あれは、ラング? 声につられて視線を向ければ、川下にラングの姿があった。ラングは、川の中に入り、片手を振りながらスクワットをしているようだった。

 え? ばかじゃないのあいつ。なんで昨日の今日で朝からトレーニングとかしてんだ。すこしは休めよっ!


 ……でもやっぱ強さの秘訣はあのトレーニングなのだろうか、俺もちょっとは修行的な事をしたほうがいいのかな?

 こんな事を悩む辺り、どうにもラングに毒されかけている気がしなくもない。


「メイぃ、おはようー」

『メイちゃんさん、みっけっ』

 

 突然背後から声をかけられ、一瞬ビクリ、としてしまった。振り返ると、相変わらず髪の毛が凄まじい事になっている寝起きのリーン。更にはその頭に乗っかり、俺を指さしてくるドリーがいた。

 

 リーンの調子は大分良いみたいだな。きっと寝起きに、ドリーが回復魔法でも掛けてやったのだろう。

 しかし、毎回毎回、その頭はどうにかならんのか。寝相が悪いのか、髪の癖なのかはわからないが、毎朝たいへんそうだな。

 でも何でドリーまで一緒にいるんだろうか? お腹でも減って川の水を飲みに来たのかね。


「お早うリーン、ドリーは水飲みに?」

「私は顔を洗うのと、髪をどうにかしようと思ってね」

『私はその助手に任命されましたっ』


 そういうやいなや俺の肩に飛び乗り、右隣に座り込んだリーンの髪の毛を指ですき始める。リーンはリーンで、髪の毛に水を少しずつかけ、前髪を押さえている。


「おい、お前ら。俺が動けないんですがねぇ」


 ドリーがリーンの頭に手が届かなくなってしまう為、俺は動くに動けなくなってしまった。

 我慢できなくなり、モゾモゾ、と動いてみると。


『メイちゃんさん、動いちゃ駄目ですよっ』

「メイ、大人しくしててよね」


 こ、こいつら……。

 どうせこういう時は何を言っても聞きはしないのだから、と自分に言い聞かせ、少しの間じっとしている事にする。

 キャッキャ、と声が聞こえてくるが、気にせずにボケっとしていると。


『完璧です。自分の才能が恐ろしいですっ』

「そうね、私も出来たわっ」


 肩からドリーの重さが消え、もう動いても良さそうなので、二人の様子を確かめる。

 ――ッ!? 

 リーンの赤い髪が、前髪の一部を残し、三つ編み状に纏め上げられて、背中に垂れ下がっていた。残った前髪は自然に両脇に分けられ、さらり、と風で靡いているのが見て取れる。


 くそっ、なんてこった。不覚にも可愛いと思ってしまったじゃないか、有難う御座います最高ですドリーさん。

 

「どう似合ってる?」

「全然……似合っております。すいません」

「ふふふ、褒められちゃった。――でもまだ甘いわよっ、これを見なさいッ」

『じゃーんっ』


 ――ッッツ!? 


 ドリーの黒い根が、腕を残し、肘から先、三つ編み状に纏め上げられて、後方に垂れ下がっていた。そしてプラプラ、と風で靡いているのが見て取れた。

 

「可愛いでしょ、私がやってあげたのよ」

『どうです相棒っ』


 ……ん? うん、俺にどうコメントしろと。

 リーンは自信満々に可愛いと言い切り、ドリーは俺の言葉を今か、今かと待ちわびている。

 え、これ可愛いの? 俺が可笑しいの? 肘の先から三つ編みが垂れ下がっていたらシュールすぎると思います。

 しかし、ドリーに顔があったらきっと瞳をキラキラ、と輝かせ、俺の言葉を楽しみに待っているだろう、という事は、想像に難くない。


 ――待て、ここは百歩譲って……いや、別に譲らなくてもドリーは可愛いのは当然だけども、仮に、仮りにだ。

ドリーの可愛さが百満点中、百だとしたら、あの不思議な三つ編みのシュールさで十、下がったとする、そうするとドリーの可愛さは九十になってしまうわけで……ん? 九十あれば十分可愛いよな。うむ、間違いないな。


「ドリーはやっぱ可愛いなっ。でもいつものドリーの方が可愛いと思います」

 

 ビシッ、と親指をつきたてドリーを褒める。

 色々考えた結果、俺にはこれが限界だった。


『ひゃほーい、やりましたよ、リーンちゃんっ! ――ですが、相棒の好みならば仕方ない、戻すとしますっ』


 俺の言葉に喜び、しゅるしゅる、と根っこを元に戻して、肩に戻ってくるドリー。

 はは、どうやら俺は上手くやれたようだ……。


 安堵の溜息を吐き、相変わらずスクワットを続けるラングに声をかけて、皆でドランの所に戻ることにした。


 ◆


 ドランの所に戻り、彼の作った朝飯を食べたが、正直、昨日俺が作ったものよりも数段上手いスープで、これからの食事と地図は彼に任せようと決意を固める。

 

 上手い食事に箸も進み、早くも食事を終える。

 その後。出発の準備を整え、焚き火や、ゴミの後片付けをし、ドランが意見してくれた南西に向かって出発する。

 

 のんびりと平原を歩いている途中、ふと、疑問に思っていた事をラングに向かって尋ねた。


「なあ、ラングって魔法使えないの? 見たことないんだけど、使ってるとこ」

「自分は戦闘中、魔法を使っておりますぞ。自分の篭手、脚甲は中々の業物でしてな。

身体能力強化、強度強化、部分攻撃力強化、の刻印が入っていて、状況に応じて魔力を流して使っておる。

なので他に割く魔力はないのだが、我が肉体のみで十分だ。

ちなみに魔法印は最も威力の高い右足につけてありますな」

「そんなの出来んのか、全然知らなかったよ。通りでラングの蹴りって威力が高いはずだ」


 今まで何度かラングの蹴りを見たけど、どうやってあの威力出してるのか不思議に思ってたんだよな。――あの威力にはそういうタネがあったのか。


「メイ殿、モンスターが来たようですな。自分が行きますので、お任せを。ドラン、ほれ、行くぞ」

「ええ、おらもか? ちょ、ちょっと待ってくんろ、ラングどんっ。ひいいい」


 顔を向けると、南側から草狼七体、それに追われる突撃牛が二体程やってきているのが見える。

 それに気づいたラングは、ドランを引きずりモンスターに向かって突撃していく。

 

「おー避けられとる、避けられとる」

「なんか本当に師弟みたいになってきたわねあの二人」

 

 ドランの力強い攻撃は、素早い狼に容易く避けられ、それをみたラングが「ちがーーう、もっと腰の回転を生かし、鎖に力を伝えてだな」等と騒いでいる。

 うーん、中々当たらん……お? 牛に当たったぞ。

 ――ッ! おいおい、当たった場所が吹き飛んだぞ。どんだけ力込めたら、あんな風になるんだよ。

 俺は思わず顔に出して驚いてしまう。そして、それをみたドリーが師匠という言葉に感化されたのか、指をチッチッチ、と振りながら、語りだす。


『っふっふっふ、まだまだトカゲさんは甘いです【葉のように舞い、枝のように刺す】これが基本です』

「何それ、初めて聞いたんだけど」

『そうでしょう、これは代々伝わる大樹の秘伝なのですからっ。相棒には特別に教えてあげましたっ』

「おお、何だかカッコイイな、所で代々伝わるって、結構ご先祖様とかいるんだなドリー」

『……? 今から伝えていく予定ですっ』


 どうやら、まだ初代のようだった。


 未だ二人は戦闘中、ラングは特に手を出さず、ドランのみがドタドタ、と狼を追いかけ頑張っていた。

 じっと眺めて待っていると、ジリジリ、と太陽に照りつけられ、ジワリ、と汗がにじみ出てくる。

 ――暑い、今まではローブに刻まれた刻印の魔法で快適に過ごしていたが、穴だらけになったお陰で魔法を掛けてもすぐに穴から抜けてしまい、意味をなさなくなっている。

 次の村でローブ直せるといいんだけど。小さい村とかじゃ無理そうだよな、結構良い素材使っているみたいだし。

 そういえば暑いで思い出したが、リーンに聞かなきゃいけないことがあったんだ。


「なあ、リーン。滅茶苦茶暑いんだけど、季節とかってあんの?」

「そりゃあるわよ、今は火の後月ごげつよ。メイって本当になにも知らないのね」


 リーンはやれやれ、と溜息を吐きつつも、季節について説明をしてくれた。

 

 簡単にまとめると、どうやら季節は木、火、風、氷、で大まかに分け、そこから月毎に前月ぜんげつ中月なかづき後月ごげつと分かれているらしい。

 要は『春夏秋冬』が三ヶ月毎に変わる、と俺にとってはわかりやすいわけ方になっているようだ。

 

 なんか本当にわけわからんなこの世界。ある程度馴染み深い習慣で俺としては助かるんだけど……。

 十二時間区切りの一日、四つの季節、太陽に月。今まで聞いた情報を簡単に並べただけでも、わけがわからなくなってくる。

 異世界なのか、似たような星なのか、考えたって答えは出そうにない。

 今は、理解しやすい習慣に感謝する位しか俺に出来る事などないだろう。

 

 ……? 不意に何か気持ちの悪い視線を感じ、辺りを見回す。

 

 仲間以外には戦闘中のモンスター、後は大空を飛んでいる黒い鳥が一匹だけ。

 なんだあの鳥、カラスみてーだな? なんか嫌な視線を感じた気もしたけど、他には何もいないし気のせいか?

 これがドリー、リーン、ラングが感じたのなら、もう少し気にはするが、所詮俺である。間違いなくただの気のせいだろうと納得する。


 やっぱり獄級から出たばかりで少しピリピリしてんのかね? 腕を伸ばして背伸びを一つしながら深呼吸……よし、どうやら、戦闘も終わったようだし、出発するかね。

 

 結局ドランは数体倒せたらしいが、ついに我慢できなくなったラングが参加して大暴れ、一瞬で決着が付いてしまった。

 だがドランにしてみれば、自分が数体でも、戦い、倒せた事に感動しているようで「ラングどん、ありがてぇ」と、しきりにお礼を言っていた。

 死骸から結晶もきちんと回収し、一同、移動を再開する。


 ◆


 二日程歩いた所で、ドランの言うとおり、村に到着した。村では道具、食料の補充、装備の修理、必要な事をつつがなくこなしていく。

 だが、残念な事に俺のローブは修理しようにも素材がないそうで、直せなかった……しかし、防具屋のおじさん曰くクレスタリアまでいけば大丈夫との事なので、あと少しの我慢だろう。


 宿を取るかで皆に相談してみたが、ここの村には『高速馬車』があるから、さっさとそれに乗ってクレスタリアまで、目指した方が良いと言われ、泣く泣く風呂を諦め先を急ぐ事になる。

 『高速馬車』は魔法使いの御者が三人で扱うそうで、足の速い馬に身体能力強化、回復魔法、馬車自体には刻印を掘り込み強度強化、振動緩和、の魔法を掛けながら走る高速馬車の名に恥じぬ物だ。


 普通の馬車でいけば一週間はかかるクレスタリアまでの道のりを、三日で駆け抜ける、というのだからかなりの物だろう。

 だが、お値段のほうも中々のもので、一人銀貨五枚程取られてしまう。

 速度の事も考えればかなり安い、気がしなくもないが、どうしても銀貨、金貨を使うとなると手が竦む俺は、根っからの小市民なのだろう。


 馬車に揺られる三日間は時折休憩で村に立ち寄る以外は走りっぱなし。その割には振動緩和の魔法が効いているおかげか、意外と揺れず、不自由はない。

 まあ、暇を持て余したラングとドリーが修行と称して、ノリノリで拳の打ち合いを始め、ドリーが捌いた拳が俺の頬に直撃した事以外は概ね平和な旅路だったといえよう。

 仕返ししてやろうとも思ったが、ドリー必殺の『平和突き』が炸裂し、ラングは目を押さえゴロゴロ、とのたうちまわるハメになったので、指差して笑ってやるだけで満足した。

 

 曰く、『命までは取らない有情の突き……それが平和突きなのですっ』らしいが、ピースで目潰しはどうかと思うぞドリー。


 

 ――馬車から顔を出し、御者と話をしていたリーンが俺に向かって声を掛けてくる。


「メイ、もう着くみたいよ。クレスタリアに入る前に降りないと、ちゃんと覚えてる?」

「おお、そういやそうだったな。じゃあ俺はここで一旦降りるから、リーンはそのまま馬車に乗って行くって事でいいか? ラングとドランは宿でも取っておいてくれると助かるんだけど」


 そう言われた二人は、少し訝しげな顔をするも、頷いてくれる。

 非常に、助かる。二人に説明してもいいのだが、今そんな時間もないし、落ち着いた時にでも話をした方が良いだろう。

 

 馬車を止めて貰い、一人降りる。

 

 俺を置いて走りゆく馬車の先にキラキラ、と光を反射する都市が目に入ってきた。


 「クレスタリアすげえええ」『クレスタリラすげえええ』


 ドリーと共に都市に向かって叫び声を上げてしまう。

 城壁のかわりに外に向かって飛びている堅牢そうな水晶が都市を囲み、遠目に見える家々は乳白色の石材で作られ、その上から水晶の板で覆われているようだ。

 

 街の中心は、地面が高くなっているのか、そこだけ一段高くなっていて、そこに堂々と美しい城が居を構えている。

 透明なはずの水晶は、内部に入った蒼、白の石材の色を映し出し、城そのものがまるで、空と雲で出来ているようだった。

 獄級で感じた水晶の印象は、冷徹な氷。だが、クレスタリアの印象はまるで異なり、暖かく明るい雰囲気を醸し出している。

 

 ワクワクと歩みを進めていくと、眩しく反射していた光が、都市に近づくにつれ少しづつ弱まっていくのが分かった。

 

 おー凄いな。眩しいんじゃないかと思ったけど、光が反射する方向まで、ある程度考えて作られてるのか。

 水晶都市って聞いたから全部水晶かとも思ったけど、流石にそんな事したら透けて大変だもんな。

 でもなんでわざわざ建物を作ってから水晶板を重ねてあるんだ? 面倒なだけなのに。それとも何か理由があるんだろうか。


 街並みと同じく水晶で覆われた門前で、リーンを待つ。だが、ただ待つのも暇だ。ここは暇つぶしも兼ねて、ドリーと共に謎の解明を試みてみる。


「問題です。なんでわざわざ水晶で覆ってあるんでしょうか?」

『はいっ』


 ビシッ、と見事な挙手をするドリー。


「ドリーさんどうぞ」

『キラキラしているっ』

「それは感想です」


『はいっ。ツルツルしていて気持ちがいいっ』

「それも感想です」


『透き通る水晶が、人々の心を濁らせない。

もしくは青くて水みたいなので美味しそうっ』

「前半は良い事言った感じで、相棒感心しました。後半はお腹が減っているだけだと思います、では魔水をあげよう」

『おお、正解の報酬ですねっ。いただきますっ』


 なんだかドリーが幸せそうなので、もうこれが正解でいい気がしてきた。


「メイ、何やってるのよ門の前で」

「いやちょっと未知への探求を。そんな事より、リーン、どうだった?」

「大丈夫みたいね。斡旋所に行ってみたけど、メイに賞金とかは掛かってないみたいよ」

「本当にっ!? 良かったよ、俺だけ入れないとかなったらどうしようかと……」


  ほう、と安堵の息を吐き、俺はリーンと共にクレスタリア入り口へと向かって歩いていく。




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