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俺の人生ヘルモード  作者: 侘寂山葵
水晶平原
22/109

4−2


「おはようドリー。何してんの」


 早朝に。ゴソゴソ、と動く気配を感じて起きてみれば、なにやらドリーが昨日の種袋を漁っている。


『メイちゃんさん、お早うございますっ。いえ、種が一個行方不明になってしまいまして。ヨモギも一緒に一粒入れておいたのですが』

「昨日の頭に撒いた時に一緒に撒いちゃったのかもな。まあ仕方ないよ又一緒に買いに行こうな」

『本当ですかっ。さすが相棒、空きっ腹ですねっ』

「そうかっ。ドリーがお腹減ってるのは良くわかったから、そこは太っ腹と言って欲しかったな」

『はいっ。お腹が減りました』


 ――全く聞いちゃいなかった。


 未だに覚めない眠気を頭から追い出していき、着替えをして準備を整える。どうやらドリーがお腹を空かせているようなので、朝御飯でも食べに行こうかと思いドアを開けると、――何故かリーンが向かいの部屋から飛び出してきていた。


「メイー、助けてっ」

「え、何。どうしたの一体」


 部屋から飛び出してきたリーンは、まだ起きて然程経っていなかったのか、髪をクシャクシャにし、寝ぼけ眼から今にも涙をこぼれ落ちそうにしながら、俺の腕を引っ張っていく。リーンの慌てた様子に何事かと思い、部屋に入った瞬間――不覚にも唖然としてしまった。


「荷物がどうしても纏まらないのよぅ」

「――え、何これ。バカなのお前、いやバカですね」

『こ、これはひどいっ』

 

 部屋に所狭しと並ぶ、干し肉、樽、薬草、魔法水、その他諸々がリーンの部屋を占拠していた。


「だ、だって、ドリーちゃんもお腹空くだろうし、メイだってまだ育ち盛りじゃない。いっぱい無いと困ると思って。やっぱり準備って大切だと思うのよね私、どう?」

「どう? じゃねーよ。どう見ても持ち切れないんですけどこれ。というか何、リーンって今まで荷作り位した事あるよね?」

「あるに決まってるじゃないっ」

「何回位?」

「この前に一回よ」


 あ、駄目だこれ。そうだよ、改めて考えたらリーンって、お嬢様だったわ。

 多分普段の荷作りなんかはメイドとかにやってもらってるんだろう。思い出してみればブラム達との旅路は、二番隊が荷物を管理していて、リーン自身荷物は余り持っていなかった。


「でもこの前は出来て、何で出来なくなってるんだよ」

「あの時は旅に出るのが楽しみで〝少し〟時間掛かっちゃたけど。旅に出て何をしようか考えていたら、いつの間にか終わっていたのよね」

「そ、そうですか」


 どうも騎士を辞めてからのリーンは、糸の切れた凧の如く、どこかに吹き飛んで逝っている気がする。


 ――いや、待て、今考えれば。その片鱗は以前から垣間見えていた気がしなくもない……何かと世話を焼きたがり、寝起きに頭が爆発したままウロウロしたり、人の天幕にやってきて床を転げまわって爆笑したり、そういえばお姉ちゃんと呼べ、と訳の解らんこと言ってきた事もあった気がする。


 正直、騎士で居る時のリーンの冷たい雰囲気を見たことが有ると、そこら辺を忘れてた気がしてならない。そういえばリーンが騎士達に敬語使わず話している所も見た事がない。こやつ、どうやら猫被ってやがった様だ。


 少しだけゴンド爺さんが心配しまくっていた理由が分かった気がした。

 騎士でいた時期は違かったのだろうが、まず間違いなく幼い時から『アレ』だったのだと……まあ、こうやって、生き生きとしているリーンを見ていると、和まなくもないが――それとこれは話が別だ。


「よし、すぐ返してきなさい。いいかリーン……良く聞くんだ。この袋に入るだけ。――この袋に入るだけだ。わかったな。もし出来なかったら次からお小遣い制にするからな」

「――ッ、お小遣いッ、私からメイに? 任せてっ」

「なんで今の流れからそうなったしっ」


 リーンの持っていた布袋を手渡し、注意したのだが、なぜか彼女は、やる気に満ち溢れた表情で、俺に阿呆な事を言ってきた。このままじゃ、絶対帰って来たら荷物が増えてそうな予感がしたので、山に向かう準備を終えて、お腹を空かせてぐたり、っとなったドリーと朝御飯を食べた。

 その後リーンと共に必要な分を残して店に返しに行く為、宿屋と道具屋を荷物を抱え往復する事となった。


 当然の如く店主には嫌な顔をされてしまった。俺は頭を下げ、五十ゴル程迷惑料を渡しどうにか納得してもらう。


「リーンの所為で怒られたじゃん」

「ご、ごめんね。――そ、そうだッ、それよりも先ず今回の依頼を、メイにも登録して貰わないといけなかったわ」


 わざとらしい話の替え方にはあえて触れなかったが、続くリーンの言葉には思わず眉をひそめてしまう。


「え、リーンが依頼受けてるんじゃないの」

「それじゃ駄目よ。ちゃんとメイも、この依頼を受けてますって登録しないと。最初に小さい金属板もらったでしょ」


 リーンに言われ袋の中から四角い金属板を取り出してみる。名刺程の大きさで中央に刻印が描いてあるのが特徴的だ。


「これだよね」

「そうよ、それは【走破者情報証】と言って、そこに最初にメイが書いた情報と【命力】を登録してあるの。後はそれを持って行って、私と一緒に依頼を受けますよ、という登録をすれば大丈夫なの。もしやっていないと依頼を成功させても、私一人でやった事にされちゃうわね」

「ほー了解。覚えとくよ。――それじゃまずは斡旋所に行こうか」

『命力って聞くと何だか相棒の名前みたいですね……ここは、やはり相棒への親愛を込めて、めぃぢから、と言う呼び方を世界に広げていきたいですっ』


 ド、ドリーそれはやめてっ。なんだか分からないけど、その発音がすげーむかつくっ。


 とりあえずドリー達と斡旋所に向かう事にした。――斡旋所は宿屋に近い為五分も経たずにたどり着いてしまう。


 い、いきなり捕まったりしないよな。恐る恐る、斡旋所の中に入り、リーンを先頭に受付に向かう。


「依頼の人数追加をしたいのですが。内容は少し先の山腹洞窟にいる、モンスターの討伐です」

「はい、ではお連れ様の許可証をそこの水晶にかざしてくださいね」


 リーンに促されるまま、受け付けにある水晶に許可証をかざす。一瞬刻印が光るが直ぐに消えてしまった。これでいいのかな?


「はい、これで依頼人数追加は完了しました。後、誠に申し訳ございませんが。九日程前に四級の走破者が一人、四日前に同じく四級の方が二人受けて行かれたんですが……多分亡くなっておられるかと思うので、もし見つけたら許可証だけ持ち帰っては貰えませんか? 任意なのでその時の状況で、余裕がありましたらお願いします」

「分かりました。見つけたら出来るだけ持ち帰ってみます」

「有難う御座いました。ではお気をつけてー」


 受付のお姉さんの声を背中に受け、一先ず外に出る。


「んー。じゃあメイ。歩いて行くのもあれだから、近くまで馬車に頼んで行きましょうか」

「それもそうだな。だけど近くまで行ってくれる馬車ってあるのかね」

『そうですねー。危ないって話ですもんねっ』

「まあ言ってみて駄目だったら歩いて行きましょ」


 リーンの言葉に従い、俺達は馬小屋がある村の出入口に向かっていった。


 ◆


 ガタゴトと馬車に揺られ、幸先が良いスタートを出来たことに少しだけ嬉しくなった。しかし早朝に起きたのに、なんで出発が十時になるんだよ。リーンの奴め……。


「いや、本当良かったな行ってくれる馬車があってさ。結構進んだのにまだ着かないみたいだし」


 二台程断られたが、三台目の御者は村の者らしく「この村の為にもなるんだ、連れてってやるよ」と、男前のセリフを吐きながら了承してくれた。


「そうね。でも最初に聞いた話からするとそろそろ着くはずよ。降りる準備だけはしておかないとね」


 道中、横合いに見えている山を眺めながらリーンと共に降りる支度を始める。――準備が終わる頃にはゆっくりと馬車の速度が落とされるのを感じた。


 どうやら二時間ほどの長さだったようだ。馬車は山のふもとに止まり、俺たちは御者にお礼を言って降りると、馬車は逃げるように今着た道を走り去っていく。


 警戒しながら山に近づいてみる。どうやら横幅は広いのだが高さはそうでもないらしい。見上げてみればそう遠くない位置に山頂付近が見えている。山腹までならそれほど苦労しなさそうだな。


「確か少し先に獣道があるからそこを登っていけば、山腹の洞窟に着くらしいわ。私が地図を持っているから案内するわね」


 その言葉に、今日の〝アレ〟なリーンを確認したせいか、嫌な予感しか感じない。


「なあ、ちゃんと地図〝見れる〟んだよな。迷ったりしないよな」

「もうっ、そこまで酷くないわよ。ちゃんと〝見れる〟から安心してってば。もっと年上を頼るべきだわっ。それに騎士の時も地図位〝見た〟事あるんだからね」


 未だ、嫌な予感は拭えないが。流石に騎士団の時に案内役をやった事があるなら大丈夫だろう。


 俺がそんな事を考えている内に、リーンは山の麓を見て回っている。

 ――お、どうやら目的の獣道を見つけたようだ。

 近づいて見てみれば、確かに獣道らしき物が見えた。道幅が狭く、とても進み難そうだ。

 道の横合いは腰ほどの高さの草が生い茂っているし、頭上は木々のせいで太陽光が入りづらく、足元の見通しが悪い為木の根でも踏みつければ簡単に転んでしまうだろう。

 沼での経験がなかったら絶対俺はこけていたな。


 目の前ではリーンが大剣を振り回し邪魔な木や草などを、取り除いてくれている。後ろから進む俺にはとてもありがたかった。


『メイちゃんさん、先の方に分かれ道があるみたいですよ』


 ドリーの声に足元を見ていた俺は頭を起こして、前を進むリーン横から顔をのぞかせ確認してみる。――確かにドリーの言ったように、別れ道があるようだ。


「リーン。二手に別れてるけど、どっちに行くの」

「えっと、ここがこうだから。こっちに行って。あっ、こっちからのが近いわね。メイ左に進むわよ」

「あいよー」


 リーンが一生懸命地図に何かを書き足しているのが見えるが、内容までは後ろから見えなかった。――左へと進路を決めた俺達は先へと進んでいくが、ドンドン道が険しくなり、前方には草が所狭しと生えていて、先に進んでいいものか少し悩んでしまった。


「リーンこの道大丈夫」

「大丈夫よまかせてっ」


 バッサバッサと切りながら答えてくれる。うむ大丈夫ならいいんだが。――しかし進みにくいな。


 転ばないように慎重に進んでいると、ふと肩のドリーが興味深そうに辺りを見回しているようだった。


「何見てるのドリー」

『いえ、私のお仲間さんがいっぱい居るなと思ってですね。――でも少し樹の皮ツヤが足りていませんねっ、そうでしょう? 相棒』

「そ、そんな肌つやみたいに言われても。わからんから」

『ふーメイちゃんさんは、まだまだですね。そんな事じゃ良い男樹にはなれませんよっ』

「え、何それ。初めて聞いたんだけどその単語」

『今考えましたっ。流行らせようと思いましてっ』


 さも普通の単語ですよ、と言わんばかりに言い放つもんだから、ここでは当たり前の単語だと思ってしまったじゃないか。


 俺の声が聞こえたのかリーンは少しさみしそうな声を出して俺に話しかけてきた。


「あら、ドリーちゃんとお話? 私も聞こえたらいいのに……」

『リーンちゃんっ。言葉だけがっ。信頼の証じゃないんですよっ』


 おおー。良い事言ったぞドリー、流石だな。――だけど残念だ、そんなに自慢気に腕を奮っても俺が通訳しないと伝わらないぞ。――流石に俺の口から言うのは恥ずかしいので勘弁してくれドリー。


 ◆


 下らない話している内に大分奥まで来たようだ。もう完全に道じゃなくなってきているんだが、進んでる方向は大丈夫なのだろうか。


「リーン、道は大丈夫なの」

「大丈夫よ。きっと」

「迷ってませんかリーンさん」

「へ、平気よ。たぶん」


 ヤバいっ、こいつ自信がないぞ。


「ちょっと地図見せてみろって」

「やめてっ。恥ずかしいじゃないっ」

「どうやったら地図見せて恥ずかしくなれるんだよ」


 リーンの地図を取り上げてみれば……そこには汚い落書きのような物がびっしり書かれていた。


「おい、このやろう。落書きする時は違う紙でやりなさい」

「なにを言っているのよっ。ここのギザギザが、丸に向かって、四角になるのよ。わかるでしょ?」

「わかるかっっ」

『おおおー相棒、鬼才あらわる……ですねっ』

「ドリー残念ながら奇才過ぎてよめーねんだって」

「そんな事ないわよ。メイったら一回、目を医者に見てもらったほうがいいわ。私……心配よ」

「俺はあなたの将来が心配ですが、薬でも飲まれたらどうでしょう」

『相棒っ、バカに付ける。えっと……うんたらかんたらなので、薬は効きません』


 こ、答えは出てるのに何故途中がわからないんだドリー。


 ――だがやはり、リーンの危険度の級を少々上げねばなるまい。想像以上所じゃないわ、この人。


「でもほら見て見て。あの先の方、少し開けてるみたいよ。やっぱり私のほうが正しいのよ。きっと」


 確かにかなり先の方を見つめてみれば少々開けた場所になっているようだが……。リーンは喜び勇んで走っていったがどうなんだ?


 急いで追いかけてみれば、リーンが自信満々の表情を貼りつけこちらを見ている。


「どう、出たじゃない」

「嗚呼、出たな……滝に。リーン俺達が行く場所は?」

「洞窟よっ」

「ここは?」

「た……滝?」

「じゃあ、どういう事でしょう」

『お水が飲みたかったっ』


 惜しい、ドリーそれは答えじゃなくて願望だな。


「なんでよりにもよって、気を付けないと駄目な場所に行くかね君は」

「ま、待って誤解なのよ」

「誤解ってなにさ」

「き、きっと地図が悪かったのよ。それか、筆記用具の調子が悪いのね……」


 こ、こいつ。自分自身が一切。全く。これっぽちも信じてない言い訳をしてやがる。素直に謝ればいいのに……。


「もう許さん。滝に放りこんでやるっ」

「ちょ、まってメイ。ご、誤解だわ」


 どうせ魔法で乾くのだし、本当に滝に放りこんでやろうと思い近づいたその時――。


 ――ザッバァン


 滝壺に何かが飛び込み、驚いて見ていると妙な男が滝壺から現れた。


「まてえええいっ! 婦女子に無礼を働くなど言語道断っ。モンスターめ、このラング・ラッドが許しなどしないぞっ」

「え、何、本当待って。どういう事だよ」


 何やら滝の上から人が降ってきて、見事着水。そのままヨジヨジ、と水から出てきてあのセリフだ。シュールすぎんだろこれ。


 降ってきた男を見ると、身長は180程あり、上半身は茶色のタンクトップと同じ形の服を着ていて、下半身は映画か何かで見たことがある黒のカンフーズボンを履いている。手足には灰色をした手甲と脚甲を付けているのだが……顔は鼻と口が少し前に突き出していて、本来顔の横にある耳は頭の上に付いていた。耳の形は少々長く、少し尖っている。後ろには尻尾が見えていて、恐竜の尻尾の如く根元の部分から先に向けて、徐々に細くなっている様だ。手足、尻尾、頬、耳などの部分には、日に焼けた後の芝生色をした短い毛がフサフサと覆っている。そして服の上からエプロンの如く前に布をデロンと垂らし、なぜか前部分には大きめのポケットがついていた。


 俺見たことあるぞ、こういう生き物。


「不届きなモンスターめが。カルガン流の技で貴様を退治してくれるわっ」

「なんだって、カンガルー?」

「カルガン流だっ。行くぞっ、モンスターめ」


 そういうとラングと名乗った男は、地面に尻尾を打ち付け、その反動を生かし、凄まじい速さで突っ込んでくる。


 ――ちょ、早過ぎるぞこいつ。


『相棒右へっ』


 ドリーの言葉に従い右へ翔ぶ。――直後今まで居た場所に轟音が響き、地面がへこんでいる。直ぐ様武器を抜き、上中下の三段突きを放つ……が、右腕で裁かれ体が泳いだ所に、右足で前蹴りを放たれる。


 ――不味いっ。


『グランドホール』


 俺の耳元に轟と鳴る風切音が聞こえた。ラングの足元を見ると、小さな穴が開いている。どうやらドリーがラングの軸足付近に穴を開け態勢を崩してくれたらしい。


 すかさず距離を離しジリジリとこちらを伺っている。


『相棒こいつ少しだけ強いです』

「了解。俺にとっては格上って事だな」

『いえ、相棒には私がついています。だから負けませんっ』


 頼りになる相棒のお陰で、少し落ち着きを取り戻す。――リーンはどうなっているんだ。彼女の助けが入るなら大分楽なのだが。


「リーンは見えるか、どうなっている」

『少し戸惑っているようですね。一応相手は助けに入って来たつもりなので、攻撃していいか迷っているのでしょう』


 ならリーンの助けは無い、と思ったほうが良いだろう。無闇やたらに期待してヘマを踏みたくはない。


 ジリジリとお互いに距離を測りながら、時計回りに円を描きながら移動する。


『ボルト・ライン』


 俺の解き放った雷光は真っ直ぐラングに向かって襲いかかった。――ラングは再度、尻尾を地面に打ち付け、右に翔び、雷光から逃げられてしまう。


 よし、計画通りだ。今の雷光に反応して避ける隙に、腰の袋にエント・ボルトを掛けてある。


 来い、最初に来た様に真っ直ぐ向かって来いっ。


 俺の願いを聞き届けるかのように、ランドはゆっくりと尻尾を振り上げると、鞭を叩きつけた様な音と共に地面に叩け付け、飛び掛ってきた。


 ――来たっ。直ぐさま腰の袋からラングに向かってエント付き鉄粉を撒き散らしす。宙に舞い散った粉は青白く光りながら、バチバチと音を鳴らし、向かってくるラングに振り注ぎ動きを鈍らせる。


 今なら行けるっ。右腕に持った槍斧を、動きの鈍ったラングに向かって片手で突き出す。――だが再度ランドに右腕で外に払われ、体が揺らぐ。目の前のランドは痺れてるにも関わらず、無理矢理身体を動かし、左拳で殴りかかってきている。


 大丈夫、俺にはもう一本の手が有るっ。


「頼むドリー」

『おまかせっ』


 

 そのまま揺らぐ身体を左に傾け、ラングの拳を掻い潜る。――同時にドリーが拳を振り上げクロスカウンターを――見事顔面に叩き込んだ。


「見事……」


 そう呟くとラングはゆっくりと身体を倒し、意識を失ったようだ。


「か、勝った。まぐれ臭かったけど勝ったぞドリー」

『ふふふ、大勝利っ』



 ◆



「申し訳ないぃ。申し訳ないぃぃ」


 倒れたランドを木に縛り付け、ウォーター・ボールが当たらぬように、頭上の木に撃ちラングに水を被せてやった。

 無理矢理起こして事情を説明したら、現在目の前で正座して、謝っている図に落ち着いていた。


「このお詫びに自分に出来る事があったら何でもっ。なにとぞーなにとぞー」


 やばい、こいつめんどくさい系の人だ……。






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