外伝 肉沼の主
――はるか昔、まだグランウッド王国が生まれ出ていない時代。
辺境にある村の更に外れた川岸。
そこに代々傭兵家業に身をやつす一家が住んでいた。
父の名はケヴィン・グラード。
長男のガル。
双子の兄弟、リズとラズ。
父のケヴィンは代々続く傭兵団を率いて、長男に自分の技を叩き込みながら日々の生きる糧を稼ぐ。
子供たちの母親など遠の昔に死んでおり、ケヴィンは自身が受けてきた教育のままに子供を育てる。
『弱肉強食』『弱者に生きる資格など無い』
彼自身そんな教育を物心付く前から受けておりそれが当たり前の事だと信じきっていた。
長男のガルは、父親の教育を受け、その才覚をメキメキと伸ばし、どんどんと力を付けていく。
だが代々才覚を伸ばす為だけに、近親婚を繰り返した弊害が、如実に現れた子どもがいる。
リズとラズ
彼らは幾ら食べても肉は付かず、どれだけ体を苛め抜いても、その体は脆弱なまま。雨に濡れただけで体を壊し床に伏す。
父親であるはずのケヴィンは既に双子を見限っており、ろくに食料も与えず放置するだけ。
そんな弟達を見ても兄であるガルは、虫けらでも見るような目付きで彼らを蔑む。
リズとラズは泥水を啜り、皆が食べ終わった残飯をかき集め必死で生き残っていく。
傭兵団の皆からは、日々虐待を受け。枝でも折る気軽さで手足を折られ嬲られる弄ばれる。
嗚呼――――! 神様、なんでこんなに僕たちは弱いのでしょう!
嗚呼――――! 神様、俺達が強ければこんなに惨めな思いをしなくていいのですか?
嗚呼――神様どうか【僕達】《俺達》に希望をください。
翌日、戦死した父ケヴィンの死体が家に送られてきた。
リズとラズはその死体を見て、これが神の贈り物であると確信し、神に感謝を告げる。
すでに兄弟は絶望で狂ってしまっていた。
父親の死体に付いている手足を右と左に二人で分け合っていく。
お互いの体を父の物と交換していく。
自らの手をもぎ取ろうとも、足を裂こうとも日々の虐待で痛覚など死んでしまっており、双子の体はなにも感じ無い。
手足のバランスが合うはずもなく体が上手く動くはずもない。
嗚呼、そうか、まだ一人いるじゃないか。
寝入るガルを刺し殺し、また手足を引き千切る。
普通の人間ならばそんな事をすれば死んでしまうだろう。
だが双子は人間としては弊害であり例外。
散々と傷めつけられても生き延びた、双子の肉体はすぐに親、兄の肉体を自分の物に変えていく。
次は胴体が足りないねラズ。
まてまて、まだ頭も足りやしないよ。
双子は傭兵達を喰い尽くす。
全ての傭兵を食い尽くし、近くにいる人々も食い殺す。
延々と人間を喰らい。
どれだけの時が流れただろう。
僕達より強い人間がいなくなってしまったねラズ。
それもそうだねリズ。
じゃあ【僕の】『俺の』体を食べるといいよ。
唯一の愛しい肉親に、お互いの体を勧め合う。
兄弟はお互いに足を分けあい、上半身同士繋がりあう。
双子は一つになって更なる強さを求め続ける。
彼らの住む場所には肉の沼地が出来ていた。