夢枕
兄貴の命日。
線香をあげて、大好物だったケンタッキーのチキンを60ピース供えた。喜んでくれているだろうか。
兄貴は高校生の頃、病気でこの世を去った。
優しくて面白くて、最高の兄だった。だから俺は耐えられなかった。毎日泣いた。おかしくなるくらいにわんわん泣いた。
そんな俺ももう大学生だ。時間が解決してくれるわけではないが、なんとか俺も前に進み始めている。泣いてばかりじゃ兄貴が心配して成仏できないからな。
そんなことを考えながら、俺は60ピースのチキンを食らいつくした。さすがに腹がパンパンだ。兄貴、いつも誕生日にこんなに食ってたのかよ。どんな胃してんだ。
その晩、夢で兄貴に会った。
嬉しそうな顔をしている。もしかしてチキンのお礼を言うために、わざわざ会いに来てくれたのか?
そう思っていると、兄貴がニコニコしながら口を開いた。
「あそこの信号の角の喫茶店、潰れたろ」
えっ?
「あれ俺だよ」
それだけ言うと、満足そうに消えていった。
兄貴⋯⋯
もしかして悪霊になってる?