表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第4話:君との幸せな毎日

 始業式の日は遅刻をせずに学校に着くことが出来た。目覚ましをかけていたし、優しい石原さんが電話で起こしてくれた。



 「おはよう!宙くん」

「おはよ〜」


 僕は周りを見渡す。石原さんはそっと僕の手を握った。こんな可愛い子と付き合っていたら、周りの視線が僕らに集まる。それが、とても恥ずかしかった。


 周りの視線を避けるように下を向いて歩いた。不思議なことに、下を向いていても、視線が集まっていることは分かる。そして、僕が一番危惧していたことが起こった。


 「あ、あんた、星華と付き合ってんの?」

石原さんの友達は僕を向いてそう言った。僕は石原さんから慌てて手を離す。


 「いや、付き合ってないです」

僕は周りに知れ渡るのが嫌で、嘘をついてしまった。


 「あっ、そう。じゃあ星華またね!」


 「またね〜!」

石原さんは笑顔で去っていく友達を見送った。



 「今、付き合ってないって言ったよね?何で?」

石原さんは、さっきの笑顔とは一変して、少しムッとした表情で言った。


 「周りに……周りに付き合ってる事が知れ渡るのが嫌で」

僕は正直に不安を打ち明けた。


 「そんなに周りを気にしてたらしんどいよ。今しかできない事しようよ!」

それを言われるのを待っていたかのように即答した石原さんは、か弱い拳を固めた。


「そうだね」

と、僕は返事をした。これは気持ちの問題だと気づいた。今を大切に。幸せだと思って生きれば、周りに何を言われようが幸せに生きれると思った。

 

 僕らは再び手を繋いで教室に向かった。周りからの視線も気にしない。気にしない。


 廊下で、次のデートプランを決める話になった。石原さんの提案で水族館に行くことに。




 放課後、案内されて宇宙研究部の部室に行くと、そこは僕にとって最高の場所だった。まず入ると、部屋は暗くなっていた。プラネタリウムの投影機が置かれていて、壁や天井に星が映っていた。そして、憧れの何百万円もする天体望遠鏡や、宇宙に関する資料が置かれていた。


 僅かな明かりの中でそんな憧れの物を眺めていたら、突然パッと明かりが付き、目の前にピエロの仮面を被った人が出てきた。


「「!!」」

突然出てきたピエロとその距離の近さに新入部員は驚く。声を出す間もなく、ピエロはジャグリングショーを始めた。2・3年生が歓声を上げる。それにつられ、新入部員も歓声を上げた。


 僕は何が起きているのか全く理解が追いつかなかった。ここは、宇宙研究部だよな?と頭の中で反復していた。何も知らない人は、演劇部か何かだと思ってしまうだろう。


 そのまま、3分ほどでショーが終わった。そしてピエロが仮面を取って、こう言った。

 「皆さん、ようこそ実力が全ての宇宙研究部へ」


 どこも、実力を問われる部活には見えなかった。だが、それが大誤算だった。


 初日から宇宙に関する問題を集めた入部テストが行われた。これが、入部人数を絞るためのテストらしい。人気の部活の人数が少ない理由はこれなんだと理解した。


 入部テストには合格したが、不合格だった人の気持ちを考えると悲しくなってくる。これで、宇宙に関わる人生を左右される人もいるだろうと思うと……いや、同情はしていられない。僕もこれから落とされる可能性があるわけだ。油断はしていられないなと思った。


 帰りの電車で、石原さんに抜き打ち入部テストのLINEをすると「大変だったね」というメッセージと、Fightと書いている可愛い犬のスタンプが返ってきた。すごくパワーを貰った気がする。


 夜は石原さんのおかげでモチベーションが上がったまま、押し入れに眠っていたテキストを出して、宇宙研究に関する勉強をした。入部テストで答えられなかった内容を重点的に勉強した。


 学校も勉強も、宇宙研究まで……今まで生きてきた15年間で一番幸せで最高の日々を送っている。それもこれも石原さんに再会したから始まった。つまり、全て石原さんのおかげだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ