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第3話:君との再会!?

 「はぁ、はぁ、やっと着いた」


 僕は時間を見て、絶望した。下を向いて歩いた。どう説明すれば良いのか……正直に言うしかないのか。はたまた、道路の真ん中に座る猫を助けた、と嘘をつくか。どうしよう、正直に……


 「宙くん、初日から遅刻?」

高校の入学式に遅刻してきた僕は顔を上げた。聞き覚えのある優しい声。


「元気してた?」

なんとそこには、石原さんがいた。相変わらず可愛いって答えが先に出てくるのが僕らしい。


「元気だけど、どうしてここに?」

僕は首を傾げた。


「どうしてって、私もここの新入生だよ」

創星高校の校舎を指さした。


「え?本当に?」

僕は声を弾ませた。同時に、何かのドッキリ企画かと思った。


 父の転勤で遠くへ転校したはずの好きな人との驚きの再会。しかも、これからは同じ高校に通う。こんな事があるだろうか。ドラマみたいな展開だ。


 「遠くへ転校したんじゃなかったの?」と僕が聞くと、石原さんは「そうだけど、こっちに戻ってきたんだ。看護学科に通うために」と答えた。


 そうだ。創星高校には普通科以外にも看護学科があったんだ。


 僕は普通科を選び、宇宙研究部に入る事を決めていた。ここは宇宙飛行士や研究員を目指す人が8割も通う、宇宙研究が最先端の高校だ。


 中に入り、ボードに貼られているクラス分けを見ると同じ1組だったらしい。彼女はもう知っていたらしく、「こっちだよ!」と僕を呼んでいる。


 本当は遅れてでも入学式に参加すべきなんだろうが、途中で式に入っていくには勇気がいる。僕には、そんな勇気は微塵もなかった。


 教室に着くと、当たり前だがまだ誰もいなかった。僕らが入学生で初めて教室に足を踏み入れた。そして、また2人きりになった。こういうときに勇気を出して告白すべきなんだろう。神様が告白のチャンスをくれたようだ。


 勇気を出して告白しようとすると、緊張で胸が張り裂けそうになった。喉で声が突っかかる。


 LINEを交換したこと。一緒に星を見たこと。弁当を交換したこと。僕が君に宇宙飛行士になりたいと言ったこと。君が星に何を願ったか気になって眠れなかったこと。君の転校に絶望したこと。恋が実らなかったこと。そして、君と再会したこと。


 数少ない大きな思い出を思い出すと、君ともっと素敵な思い出を作りたいと思えた。


 枯れてしまった恋の木にもう一度思い出という花を咲かせたい。


 ここで告白しないと後悔する。そんな思いで、精一杯告白した。


「あの、石原さん」


「ん?」


「好き、です。付き合って……ください」


僕が緊張に言葉を押しつぶされながら言い終えると、石原さんは泣き始めた。


「どうしたの?」

僕が聞くと、石原さんはぽろぽろ泣きながら答えた。


 「実は……秘密にしてたことは、宙くんと幸せになることだったんだ。でも、転校が決まってたから……諦めたの。でも、宙くんのことを諦めきれなくて。それで宙くんもずっと私のこと好きだったんだな、って思うと、嬉し、くて」


 僕もつられて泣きそうになるのをこらえる。


 「僕ら一緒に幸せになろうね」


 「うん。絶対だよ」


 僕は石原さんの手を握った。告白してよかったと思えた。



 「もしかして、ここの新入生?」

女子生徒の声が聞こえてきた。慌てて手を離した。入ってきたのは、創星高校の先輩のようだ。


「そうです」


「入学式は参加してないの?」


「ち、遅刻……しちゃって」


僕は口ごもる。すごく言いづらかった。


 入学式に遅刻してきて、しかも参加しないのは、流石に駄目だったか。先生に伝えられ、入学初日から怒られると思っていた。


 しかし、先輩は思いがけない言葉を発した。


「告白、大成功だね!」

先輩は1人で拍手した。


「私は灯田愛瑠。君が勇気を出して告白してたの、見ちゃった」

僕は自然に顔が赤くなる。2人きりだったと思ってたので、すごく恥ずかしかった。


「遅刻したことは内緒ね。遅刻の理由は、3人で道路の真ん中に座る猫を助けたことにしよう!」


僕らは一緒になって笑う。灯田さんは後輩思いの優しい先輩のようだ。あと、何気に僕と同じ遅刻理由を考えていて気が合いそうだった。


 灯田さんは担任の先生にも説明してくれることに。素敵な先輩とも仲良くなる事が出来た。高校生活は最高の形でスタートした。これから学校に通うのが楽しみだ。

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