表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
胃袋掴め!? ~高校男子は思い通りになりません~  作者: 井吹雫
1章 ~甘いものは好きかしら?~
7/11

(5)

「……嫌?」


 そう言って少しずつ身体を迫らせてくる鈴香さん。


「嫌っていうか…」


 そんな鈴香さんとは対照的に、思わずたじろぎ、引け腰になる僕。

 ……だってここベッドの上だし!

 近いし! 

 当たるって!

 思わず視線が下の方へと行きそうになる。

 だけどそれを必死に堪えながら、僕は後ろへ身体の重心を傾ける。


「……」


 今全国の初体験をこれから迎えるであろう男子たちに問い掛けたい。

 この状況で僕は身を委ねて任せてもいいのだろうか?

 やっぱり初めては男たるもの、リードしたカッコ良いシチュエーションを想定しているのではないのだろうか。

 ……このまま流されたら、僕はあらぬ方向へ開拓されてしまうのでは!?

 なんて一瞬のうちに想像がキャパ範囲を超えそうになってしまったが、そうしている間にも鈴香さんはどんどん僕に距離を近づけてきている。


「あの……、すずっ、かさん」


 声の出し方ってどうやるんだっけ。

 いつも出来ていた事ができなくなる状況を、僕はまだ経験した事が無い。

 だけど段々と詰め寄ってくる鈴香さんとの距離に、ついに僕はバランスを崩してしまった。

 そこへすかさず、覆いかぶさってくるかのように近づいてくる鈴香さん。


「……ねえ、こういったお礼は、嫌?」


 あっ、もうだめだ。

 僕は新たな扉を開く。

 父さん、母さん。

 ばあちゃんにそこら辺の虫さん。

 こういった初体験を経ても、僕は変わらず過ごす事をお許しください。

 事態はベッドに横たわる、いたいけな男子高校生。

 一方そこに覆いかぶさるような形で見下ろしているのは、きっと経験豊富なのだろう。

 黒髪ロングの爆にゅ……失礼。

 たわわなサイズをお持ちの、だけどどこか華奢ではかなげな大学生のお姉さん。

 そんなお姉さんに耳元でゆっくり囁かれて、ついに僕も理性が限界を迎えた瞬間。


「ふっ……、フェクショおおおおン!」

「あっ!」


 さらりと長い鈴香さんの黒髪が、見事僕の鼻元をくすぐり、盛大なる特大くしゃみをかましてしまった。


「…はえ?」


 そしてその僕のかましたくしゃみの衝撃に驚き、バランスを崩した鈴香さんが視界から消えている。

 一瞬何が起こったのか分からない様子ではだったが、僕はそのままゆっくりとベッドから起き上がる。

 すると、真横に生足。

 それは見事なまでの美しい生足。

 ……なんで生足?

 視線を向けると、なんと鈴香さんが顔面から床にダイブし、ベッドから落ちてしまっていた。


「あわわわわっ! だだだっ、大丈夫ですか!?」


 事を理解し、慌ててベッドから降りて鈴香さんを起こ……したのは良かったが。


「……おっふ」


 うっかり素直な感想が口から洩れてしまった。

 ベッドから落ちた際にテーブルの上の物も見事ひっくり返してしまったらしく、鈴香さんは飲み物をびっしゃりかぶってしまっていた。

 その姿に釘付けとなってしまったが、即座に僕は我へと返る事ができた。


「わああああっ!」


 目の前でびしょ濡れになっている鈴香さんとばっちり目が合い、思わず叫んでしまった僕は、咄嗟に自分の視界を手でふさぎ「何も見てません!」と叫び、後ろを向く。

 正直無理があるのは分かっている。

 鈴香さんは飲み物で着ていた服がスケてしまい、中のものまでしっかり形が分かってしまう程の状態。


「とにかく着替え! 着替えましょう!」


 そう言って僕は、鈴香さんに着替えるよう促した。

 だけど鈴香さんは、微動だにうごこうとする気配がない。

 まるで僕の様子を見ながら、何かを考えているかのよう。

 ……なんていうのは違っていた。


「…勝佐君のいる前で着替えるの?」


 静かにそう呟いた鈴香さんの声で、ハッと気が付く間抜けな僕。


「そんな訳ないじゃないですかああああ!」


 大慌てで鈴香さんの部屋から出て、急いで扉を閉めてもたれかかった。


「とにかく拭ける物持ってきますから!」


 とりあえずこれは緊急事態!

 落ち着くんだ僕の心臓!


「その間に鈴香さんは着替えて下さい!」


 だけど最早今さら冷静になれる余裕もない。

 だから精一杯僕は必死に、声を張り上げる。


「脱衣所とかにタオルとかありますよね!?」


 正直鈴香さんの返事を聞く余裕すらもない。

 それ程までに今起こった出来事は、情報量が多すぎて僕の処理能力は限界を迎えていた。


「急いで取ってきますから!」

「あっ、待って…」


 もしかしたら今の声も、現実かどうかが分からない。

 それほどまでに僕の頭の中はいっぱいおっぱい……失礼。

 いっぱいいっぱいだった。


「タオルタオル、タオルー!」


 鈴香さんの家の中の構図なんて知らない。

 だけどなぜか一直線に脱衣所までの道が分かる。

 この下半身に集中してしまう出来事をすぐさま消し去るように、僕は新たな能力でも身に付けたのだろうか。

 階段を降りて、廊下を転び、脱衣所へと入った僕はなんとびっくり。


「…なんじゃこりゃああああ!」


 なんて叫びたくなるような出来事が、再び目の前に現れ、驚愕しながら固まってしまった。



また1時間後に続きを投稿します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ