唐突な追放展開
「ちょっと、待ってください!一体どうしてですか、いきなり追放を言い渡されても納得が出来ません。私の母が『アイリス・アルザリア』だからですか!」
唐突すぎて、一瞬だけ絵文字みたいな顔になってしまったじゃないか。
お母さん、娘すら王都に出禁をくらうなんて一体なにをしでかしたんですか?
まぁ、アニメであらましは知っているんだけど。
私の知っているアニメ通りの歴史なら、現皇太子殿下の婚約者だった母は、その素行の悪さを理由に婚約破棄を言い渡され、ヒステリックを起こした末に貴族学校で大暴れして王都を追放された。
前世の母に、昔の話を聞こうとすると少し恥ずかしそうにしていたのを覚えているけれど、今はその必要すらない、お母さんの悪行という名の黒歴史を私は知ってしまっているから。
なんだかごめんねお母さん。
「アイリス・・・ラトナス卿の娘か、なるほど通りで・・・」
と、なにやら納得した様子を見せるのは魔法適正審査の審査官だ。
そしてラトナス卿は、未だ邂逅を果たせていないお爺ちゃんの事だ。
「質問に答えると、君の母の所為だとも言えるし、そうでないとも言える」
お母さんの所為でもあるし、お母さんの所為ではない?
どういう意味だろう・・・まさか!
私には実は、育ててくれていたお母さんの他に生みの親がいる的な!?
しかし、私の全く的外れな予想はすぐに修正された。
「君の母親が起こした、問題行動の問題ではなく、君が母親から受け継いだのであろう才能が問題なんだ」
才能、タレントって事?
災では無く才って事?
私がお母さんから受け継いだ才能と言えば、この溢れんばかりの美貌以外は思いつかない。
なんだろう、問題を起こす才能とかかな?
「君の魔法適正は、古代神聖魔法と呼ばれる種類の魔法で、新制神聖魔法を聖なる力とするルトリア教は、古代神聖魔法の適性を持つ者の聖地への踏み入れを禁じている」
古代神聖魔法?新制神聖魔法?
二つ目のは完全にギャグだよね?
「そして、この王都もルトリア教の聖地だ」
要約すると宗教上の問題って事?
だからって引き下がるわけにはいかないんだけど。
「それだと、毎年私みたいな追放者が何十人と出ているんですか?」
「いや、年に一人か二人だけだ。それに、王都へ入れないだけで国外追放って訳じゃない。使える術も多くてほかの魔法よりも芸達者だ」
審査官は私の質問に、まだ訊いていない事まで教えてくれた。
毎年何人かはいるらしいし、無難な質問は予想できるのだろう。
ほかの魔法よりも芸達者で、王都以外なら住む場所にも困らない。
私が、普通に何の目的もなくここへ来ていたなら、帰って今日の晩御飯を堪能できたかもしれないけど、私はお母さんを王都へ帰らせてあげたい。
その為には、引き下がるわけにはいかないし、もう一つ訊くべきことがある。
「あの、それが母から受け継いだ才能と言うことですか?」
「そういうことだ」
私の質問に、何かを知っているのであろう審査官はそう答える。
つまりは、お母さんの魔法適正も古代神聖魔法だったと言うことだけど、それだと辻褄が合わない。
魔法適正検査は10歳の誕生日の一週間前に受ける。
それは昔から、貴族も平民も例外なくだ。
そこで王都から追い出されたのなら、16歳だったお母さんが王都の貴族学校で大暴れすることなんて無いはず・・・考えてみても私には答えが出せない。
お爺ちゃんなら何か知っているはずだよね。
「今すぐに了承できるほど私は王都について知りませんし、とりあえずラトナス卿、お爺ちゃんに会わせてください」
「分かった」
そう言うと審査官は部屋を出て、お爺ちゃんに会えるよう手配してくれた。
渋い顔をされると思っていたから少し意外だった。
そして、審査官にお爺ちゃんが待っている部屋の前に案内された。
この扉の向こう側にお爺ちゃんが、アニメでも少ししか出てないし本当に人となりが分からない。
緊張しながら意味もなく扉に向かって一礼をする。
「よし」
扉のノブに手をかける。
『次回、エリス死す。」じゃ無いと良いけど・・・
心の中で冗談を言いながら、ノブを握った手に力を込めた。
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