サカサマ
「学校の屋上って、こんなに広かったんだ」
思わず声に出して呟く。屋上に登ったのなんて、入学式の後の学校案内の時振りだった。それに、その時は先生と生徒で溢れかえってたから空を見ないと屋上だってこともわからないくらいだった。
ギィギィなる扉を閉めて、上に登る。
「すご、漫画とかでよく不良が昼寝してるとこだ」
妙な感動を覚えて、次は柵に近づく。
「こんな感じで、アニメの主人公ってご飯食べるよね」
希望か何かを掴むように空に手を伸ばす。もちろん横に話し相手の友達はいないし、語る未来もないのだけど。
うんうん、と一人で頷いて、ポケットから紙を出す。実は結構、書くのに苦労した。私はあんまり字が綺麗じゃないし、何を書けばいいかわからなくて。でもこれは上手くかけたと思う。伝えたいことも、伝えられるはず。そんなことを考えていたら、急な突風。
「うわ、これ飛ばされちゃわない?あ、だから靴の下に置くのか!」
納得して、ローファーを脱ぐ。綺麗に揃えて、あ、でも下に置くから一旦砂とかとった方がいいかな?まあいいか。
「よい、しょっと」
うわ、がしゃがしゃうるさ。結構揺れてるけど、これで安全性とか大丈夫なのかな?
「さて、それじゃあいきますか」
不思議と何も感情は湧いてこなかった。強いて言うなら、こっち側は思ったより狭いなってくらい。だからそのまま柵を押した勢いに任せて倒れる。
そして私は、逆さまに空を抱いた。