後編・あれからとこれから
完結予定でしたが、今回短めで、まだ続きます。
◇◇◇幕間◇◇◇
息子の手術が終わり、境は、廊下でうなだれる義父に告げた。
「遼太の義手と義足は、無事に装着できました」
境林太郎は医用工学の先駆者である。
まさかその技術の実践を、息子で試すことになるとは思っていなかったが。
「……すまなかった」
義父は深々と頭を下げた。
「お義父さんも、これからは本業を全うしてください」
「ああ……」
義父の本業は、住職である。
タナトスとエロスの融合などと言って、ここしばらく趣味を優先させていた。
結ぶ。
縛る。
これらは人間にとって、原始時代から獲得されたものだ。
ただしその目的は多岐にわたり、一部呪術にも使用されてきた。
捕縛行為もまた、罪をしばり、人を犯罪へと誘う魔を、封じていたのだと言う。
神経線維と人工の手足を結びつける境の技術も、何かを封印していたのか。
◇◇◇翌朝◇◇◇
昨夜の大立ち回りのあとは、遼太もさすがに疲労したようで、終電で自宅に帰ると、そのまま爆睡した。
田中は……どうなったっけ?
まあ、いいや。
朝、登校前に父の研究所に赴く。
遼太の父境林太郎は、しばらく大学の研究室にいたが、研究費が削られたのと、大学から起業する許可を貰ったので、自宅の近くに研究所を造った。
「義手に三か所、義足に六ケ所の破損がある。何したの、お前?」
父に手足の状態を診てもらうついでに、遼太はコトのあらましを伝えた。
拉致とか爆発とか聞いても、林太郎は驚かなかった。
「ま、よくあることだな」
その一言だけだった。
だが。
「十六の誕生日で、大企業の跡取りになる、なんて俺にはピンとこないけど……」
遼太のセリフに林太郎の目が光る。
「十六で跡取り? 爆発……跡取りを巡るお家騒動……ああ」
「何か知ってるの?」
「多分、その企業って……」
父が名指しした企業名を聞き、遼太の顔つきも変わった。
◇◇◇一か月後◇◇◇
その後、遼太も田中も、表面上はいつも通りの生活に戻った。
遼太は文化祭に向けて、編み物の仕上げにかかり、田中は、一族現当主から、跡取りとして認められたそうだ。
「ただね、俺に何かがあったら、本家の長子が跡取りだって……」
塾であった時に、田中はそんなことを言っていた。
「じゃあ、まだ安心できないじゃん」
田中はへらへら笑って言う。
「そんときはまた、よろしく」
「いやだ!」
遼太はふと思い出し、田中に一枚のチラシを渡す。
「何コレ? 文化祭?」
「そうそう。ウチの高校、日曜日は外部にも公開するから。俺は作品の展示会場にいるよ」
田中を呼んだ遼太は、ある計画を立てていた。
次回、完結(希望)
誤字報告、いつも助かっています。
感想ありがとうございます!! 全部読ませていただいてます!!
完結したら返信いたしますm(__)m