76話_魔王の正体
察しのいい読者様は既に予想していたかも知れませんが、とうとう魔王の正体が明らかになります!
翌日、再度レオナの所に行き、魔国を出て帰国することを伝える。
「あら、残念ね。もう少しいてれても良かったのに。あー、もっと早く帰ってくれば良かったわ。」
「いやいや、そうしたら私達が帰国するタイミングが早まるだけだよ。」
「それもそうね。今のこの国だとあなた達がここに居るだけでも危険だものね。」
心配してるのは私達のこと?それとも魔国の国民のこと?
「どっちもよ。あなた達がやられる所は想像付かないけど怪我くらいは流石にするでしょうし。…するわよね?あなた達一応人間よね?」
そこを心配しないで欲しい…。いや、今では怪我無く制圧する自信もあるけどさ。あはは。と曖昧にしているとレオナの横からヴィヴィが顔を出した。
「サクラ。セレスによろしく伝えておいてちょうだい。」
「ヴィヴィ。…分かったよ。」
私の返事に満足したのかヴィヴィは一つ頷いてから姿を消した。
「んじゃ、次あなた達が来る頃には他種族も受け入れる、どこにも戦争を仕掛けないような国にしてみせるわ!」
「ははは、全員魅力で洗脳するとかじゃ無いよね?」
「あら、その考えは無かったわ。なかなか良さそうじゃない。」
しまった。余計なことを言った。魔族のみんな逃げて!
「とまあ冗談はこれくらいにしておいて、…死ぬんじゃないわよ。死んだら貴女の血を飲み干してやるからね。」
良かった。冗談だった。
…激励してくれてるのは分かるけど八重歯を見せて血を飲み干すなんて言わないでください。私の首筋を見ないで!舌なめずりしないで!
「じゃ、行ってくるね!」
「ええ、行ってらっしゃい。」
なんだか最後に弄ばれた気がしないでも無いけど、無事に魔国への侵入任務が終わった。
―――
道中、魔物に襲われつつも瞬殺して魔道車を進める。数日が経ち、魔国とブルーム王国の国境を越えて母が防衛している村まで戻ってきた。もちろん角と尻尾のアクセサリーは外してある。
「サクラ、おかえりなさい。大きくなったわね〜。」
「母さま、ただいま。…別に大きくなってないよ。」
成長期は過ぎてるし、太ったわけでもない。もちろん胸も成長してないがこれは母の遺伝子だから仕方ないだろう。…なにか寒気が?
「サクラ?お母さまは侮辱された気がするんだけど〜?」
「いや、無事に帰って来れて良かったなーって思っただけだよ?」
あ、相変わらず鋭い!帰国しても油断ダメ!絶対!
「セレスちゃんはどこかしら〜?」
「セレスは用事があるみたいで先に帰ったよ。」
「そうなのね〜。残念だわ〜。モフモフしたかったのに〜。」
クッションかな?
「さすがサクラの母親だよな。言動がそっくりだ。」
「そうだね。行きに寄った時も思ったけど遺伝子がしっかり働いてるみたいだ。」
?ライアスとライラさんが何か小声で話している。
「ライラ〜?なにか言ったかしら〜?」
「イイエ。ナニモイッテイマセン。」
あ、母のドス黒いオーラを感じ取ったライラさんが発言を撤回した。何を言ってたんだろう?
―――
母のいる村で一泊することにし、簡単な報告を伝える。念話機を使って陛下にも報告をした。帰国したら改めて報告して欲しいと頼まれたがそれはライラさんとライアスに任せること、私には別の用事があることを伝えた。最初は渋っていたが何とか説得し、夜になった。
「サクラ。」
みんなが寝静まり、外が真っ暗になった頃、そう呼びかけてきたのはレオンだ。
「うん。私からも聞きたいことがあるよ。」
二人で宿の外に出て、村外れの木に登る。月の光で辺りは照らされ、レオンの金毛がよく映える。眺めているとレオンが切り出す。
「魔王の正体は分かったか?」
「うん。……セレスが魔王。…なんだよね?」
「ああ、そうだ。」
簡単な相槌が返ってくる。それが一層事実なんだと訴えてくるようでとても辛い。
「これ程否定して欲しい質問は無かったよ。」
「だろうな。」
「こんなに知りたくない真実も無かったよ。」
「だろうな。」
「なんでセレスなの?なんで今正体を明かすの?なんで隠してたの?なんでもっと早くに教えてくれなかったの?…なんで…。」
「すまんな。」
途中から涙が止まらない。まるでダムが決壊したかのような質問にもレオンは答えてくれない。
「これだけは答えて。セレスは、…みんなは私達を騙してた訳じゃないんだよね?敵じゃないんだよね?」
こんな時にアービシアの発言が毒のようにまわってくる。
『いくら仲良くなっても神霊を信じるな。』
ちゃんとレオンから。セレスから否定の言葉が聞きたい。
「ああ。魔王の事を言わなかったのは騙すためじゃないし理由もある。なんでなのかは話せないけど…。」
「いや、その言葉だけで十分だよ。ありがとう。」
「わるいな。」
今思うとセレスが魔王だというヒントは多々あった。セレスの感情から、後ろめたさを感じ取ったりすることもあったし、セレスの寝る回数が減り、よく話すようになったのも魔王を覚醒させる魔道具である遺跡に行ったあとだ。アービシアとの問答でも余計なことを言わないか心配していた。
祝福の効果についてもそうだ。あの時はそこまで頭が回らなかったけど、セレス本人が関わってくるスキルに関して全く知らないなんて思えない。少しでも知っていたら使える怠惰の大罪もわざと使わなかったんだ。だから怠惰の大罪で分からない?の質問に(怠惰の大罪を使ってないから)分からないと答えた。祝福で繋がりが強くなった状態だと嘘がバレるから。
そして、祝福の効果は本当に知らない状態でいたかった。自身が魔王だと分かっていて、今後戦う可能性が高い状態。祝福の効果は現在の関係値だけじゃなくて過去や未来の関係値も影響してくると言っていた。祝福の効果がセレスと戦うためのものだったら?その後の説明ができなくなってしまう。
一方で、セレスが私の敵じゃないことも確かだろう。もしも敵ならヴァニティアとの戦いで助けたりしない。祝福だってそうだ。わざわざ敵を強くしようだなんて思わないだろう。ここ一年半だって、魔族の国にいたのにも関わらず、セレスは誰一人として会おうとすらしなかった。
「レオン。」
「なんだ?」
「私がセレスを救ってみせるよ。」
「っ!」
レオンが驚いたようにこちらを見る。
「セレスのこと、頼む。」
レオンは一度頭を下げた後、姿を消した。
レオンが消えた後も私は眠る気にもなれず、しばらくの間、木の上で遺跡の方向を眺める。
「さ〜くら!」
「わっ!?って母さま?どうしたの?こんな時間に。」
気持ちの整理をしていると突然母に抱きしめられた。
「お母さまレーダーがね〜、サクラが悲しんでるよ〜って伝えてくれたの〜。急いで来ちゃったわ〜。」
「そうなんだ。」
「そうなのよ〜。」
口を開いたのはそれっきりで。夜が開けるまで、私はずっと母に抱きしめられていた。
*****
Tips 魔王(セレシア・B・シャオローナ)
正体不明とされてきた魔王だったが、その正体はセレシアの事だった。神霊の契約者しか見たことが無いと言われているのはこれが理由。
他の神霊から見てセレシアが特殊なのはセレシアが神霊でもあり魔王でもあったため。
また、SDSの世界でセレシアが魔王として暴走し始めるのはサクラが死んだ後。中盤で出てくる際にセレシアにダメージを与える第三勢力の正体はローズ。
ライラ「サクラの母親、超怖くないかい?」
ライアス「自業自得ですよ。」
次話は明日の17時投稿予定です。
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