6話_魔力の発現
幼少期編は週1-2ペースで投稿していきます!
「サクラ~。誕生日おめでとう~」
「母さま。ありがとう。」
「ケーキ用意したからいっぱい食べるのよ~」
「うん、いっぱい食べる。」
「「いただきまーす」」
体を鍛え始めて早3年、私ことサクラ・トレイルは今日で六歳になった。この世界でも誕生日の考えはあるため毎年祝っている。
「誕生日プレゼントをどうぞ。」
「ありがとう。開けてもいい?」
「いいわよ~。気に入ってくれるといいのだけど。」
「お~。魔法の絵本だ。ありがとう。魔法の適正が分かるのって十歳になってからだっけ?」
「そうよ。洗礼式で分かるからね。」
「楽しみだな~。どんな魔法が使えるかな?」
母の表情が一瞬難しそうなものになったがすぐ元に戻った。
「サクラは天才だからね。みんなには使えない特別な魔法が使えるかもね。」
「ふふふ。そうだといいな。」
「あら~。お母さまは本当にサクラが特別な魔法が使えると思っているのだけど?」
私が捨てられたのは鑑定で無適正だと出たからなのだが、これは母なりに励ましてくれてるのだろうか。
「母さま、魔法を教えて。」
この世界では魔法の適正は生まれたてでも分かるのだけれど、実際に魔力を扱えるようになるのは六歳になってからだ。
「そうね~。魔法はまだ早いけど、魔力は発現しただろうし、魔力を動かす練習なら始めてもいいかしら。」
「魔力を動かすの?地味だけど大切ってやつ?」
これは地味だけど大切だと言われる魔力操作というものかもしれない。よく聞くのは魔法の精度が上がるとか、魔法の威力が上がるとかだけどこの世界でも同じだろうか。
「さすがサクラ。よく知っているわね~。そうよ~、魔力を動かすのに慣れておくと魔法の適正が分かった後に魔法が使いやすくなるの。人族はやってないみたいだけど、エルフは必ずやっているわ。…どれだったとしても絶対に必須の技能だしね。」
「必須?」
「ん~。サクラはまだ気にしなくていいのよ。十歳になったら教えるからね~。」
十歳ということは適正が関係あるのだろうか。私が産まれてすぐに無適正って鑑定されたのを聞いているはずなのだけれど…。
―――
「じゃあ~今日は魔力を動かす練習をするわよ~。」
「おー!」
誕生日から数日、今日は約束していた魔力操作を教わる日だ。ワクワクしすぎて昨日は8時間しか眠れなかった。よく眠れてるじゃないかって?普段は10時間睡眠なのにいつもより2時間も早く起きてしまったのだ。
「母さま、魔力操作ってどうやるの?」
「ん~とね~、まずは魔力を感じるところから始めましょう~。おへその下あたりをグっと意識してみて。」
「うん。やってみる!」
おへその下…。この温かいものだろうか。日本にいたときにはなかった感覚だったため分かりやすい。
「なにか感じるよ。」
「あら~。はやいわね~。魔力がとても多いのかしら?やはりサクラは天才ね~。」
抱きしめながら褒められた。えへへ。
照れている場合ではなかった。
「次はどうするの?」
「そうね~。ギュっとやってからスーってしてギュンってすればいいわよ~。」
「!!?」
「その後はクルッてしてから最後にギュッてするのよ~。」
「???」
「サクラ~。分かった~?」
「…。ごめん。母さま、全然分かんない…。」
「ん~?ギュってやってスーってやってギュンってしたらクルッ、ギュッよ~。」
「うん…。ギュってやってシューってしてグルンでギュね?」
「最後はギュじゃなくてギュッよ~」
「う、うん…。」
母がまさかの感覚派だった。正直言って違いとか全然分かんない。こんな時こそ日本で集めた知識を使って適当に…。
「いや、ギュってなに!」
はっ。思わず叫んでしまった。
「さすがサクラね~。ちゃんとできてるわ~。」
…。ちゃんとできていたらしい。
「毎日続けるのよ~。分からないことがあったら何でも聞いて?」
「い、いや、母さまの迷惑になりそうなのでなるべく自分で解決して見せます。」
「も~。迷惑なんかじゃないのに~。いつでも頼るのよ?」
「は、はい...。」
再度抱きしめられながら乾いた笑みをこぼす私であった。
*****
Tips 魔法の適正
魔法の適正は鑑定スキルを使用するか鑑定の石板を使用することで確認できる。ほとんどの人は十歳の洗礼式で鑑定の石板を使うが、貴族や王族は生まれてすぐに鑑定スキルの持ち主に頼み調べることが多い。魔法の適正には以下の17つある。
低位特性
火:火を操ることができる。攻撃に関わる魔法が多い。
水:水を操ることができる。治癒に関わる魔法が多い。
風:風を操ることができる。速度に関わる魔法が多い。
土:土を操ることができる。防御に関わる魔法が多い。
木:木を操ることができる。補助に関わる魔法が多い。
高位特性
炎:火の適正が進化し熱を操ることができるようになった。より攻撃に特化している。
氷:水の適正が進化し冷気を操ることができるようになった。阻害や攻撃もできるようになる。
雷:風の適正が進化し電気を操ることができるようになった。武器の切れ味を上げることができる。
金:土の適正が進化し金属を操ることができるようになった。より防御に特化している。
植物:木の適正が進化し、植物全般が味方になった。サポートに特化している。
下位特殊適正
聖:回復に特化した適正。攻撃はできないが部位欠損すらも直すことができるという。
影:隠密に特化した適正。影を操るだけでなく、影に潜むことができるという。
上位特殊適正
光:すべてを照らす適正。回復に加え、攻撃や補助ができる万能の適正。味方に希望を振りまく。
闇:すべてを飲み込む適正。隠密に加え、攻撃や阻害ができる万能の適正。敵に絶望を振りまく。
超級適正
時:現在では知られていない適正のひとつ。この適正を持つものは他の適正を持つことができない。鑑定で確認することができず適正無と判断されるため不遇扱いされている。莫大な魔力を持つものが魔力の精密な操作を極めることで時間を操ることができると言われている。
空:現在では知られていない適正のひとつ。この適正を持つものは他の適正を持つことができない。鑑定で確認することができず適正無と判断されるため不遇扱いされている。莫大な魔力を持つものが魔力の精密な操作を極めることで空間を操ることができると言われている。
天:現在では知られていない適正のひとつ。この適正を持つものは他の適正を持つことができない。鑑定で確認することができず適正無と判断されるため不遇扱いされている。莫大な魔力を持つものが魔力の精密な操作を極めることで万物を操ることができると言われている。
次話は土曜日投稿予定です。
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