16歳いきなりの許嫁!?
ーお母さん。私、今日16歳になりました。ー
私が産まれてすぐ、母は病気で亡くなった。
それからはずっと実家である皇神社という神社の神主をしている父と二人暮らしだ。
そんな私も今日で16歳。いつも誕生日は家に帰ると父が私の大好物の高級焼き肉とケーキを用意して待っていてくれる。
「たっだいまーーー!!!」
神社の境内にある満開の桜の下を意気揚々と通って離れの玄関からそのまま直行で縁側を進んだ先にある居間へと向かった。
「お父さん!!!高級焼き肉ちゃんと用意してくれ・・・・た・・・????」
ーえ!?!?!?お客さん!?!?!?ー
私が居間に辿り着くといつもと違った光景がそこには広がっていた。
居間の真ん中に置かれたテーブルには高級焼肉の姿はどこにも無く、代わりにどこかの高級寿司屋の黒塗り桶やお頭付きの鯛の姿焼き、その他オードブルが所狭しと並んでいた。
そして父と対面で座っていた二人の男性と一人の女性が私の声に一斉にこちらに視線を向ける。
「真城やっと帰ってきたか。早くここに座りなさい。」
そう言いながら父は手招きして自分の隣の席に私を誘導する。
ーこ、この人達誰???ー
私は困惑しながら父の隣に座した。
「まぁ。あなたが真城ちゃん?綺麗になって。」
中年の女性が私の顔を見るなりそう笑顔で話しかけてきた。
「真城。こちらは覡神社の神主、覡聖司さん、奥様の美代子さん、そしてその御子息の朱貴くんだ。ほら、ご挨拶しなさい。」
「あ・・・す、皇真城です。」
この場合初めましてと言ったらいいのか、よろしくお願いしますと言ったらいいのか、いまいち何の集まりなのか理解していない私にはどう挨拶したらいいのかよくわからなかった。
しかし、この会が何の集まりなのかを知るのにさほど時間は要さなかった。
「真城も今日で16だ。早速、許嫁の朱貴くんと顔合わせの場をと思ってね。」
「は?」
私は父の発言に全くついていけなかった。
「い、い、い、許嫁ぇぇぇぇ!?!?」
思わず大声を上げてその場に立ち上がってしまった。
「まぁまぁ。落ち着きなさい真城。急だったからね驚くのも無理はないが、急に大声上げて皆さんの前で立ち上がるなんてはしたないからねちゃんと座りなさい。」
ハッと我に返って私は顔を真っ赤にしながらその場に小さくなって腰を下ろした。
「覡聖司です。真城ちゃん大きくなったね。小さい時はよくうちの神社にもお父さんと遊びに来てたんだけどな小さすぎて覚えてないかなさすがに。」
「妻の美代子です。真城ちゃんちっちゃな時しか知らないからほんと、綺麗になっててビックリしたわ。ねぇ朱貴。こんな綺麗なお嫁さんが貰えるなんて朱貴は幸せ者ね。」
「ええ、本当に。僕は幸せ者ですよ。真城さんの様な素敵な方が伴侶になって下さるなんて。」
そう言って朱貴と呼ばれたその男性は私に満面の笑みを向けて握手を求めてくる。
「覡朱貴です。今はまだ誕生日が来てないので18ですが真城さんより3つ年上の今年19歳になります。秋陽大学の神道学科に今年入学したばかりです。よろしく。」
「・・・は、はい。・・・こ、こちらこそよろしくお願いします。・・・私も先日、月嶹高校に入学したばかりです。」
柔らかいその笑顔と声音に飲まれる様に私は朱貴の手に自分の手を重ねた。
真っ赤な燃えるような髪色。そして透明感のある薄い朱色の瞳が女性にも引けを取らないくらい白い肌によく似合う。
ーわぁ・・・何かこの人って男なのにめちゃくちゃ綺麗・・・。ー
私が彼に見惚れていると、更に朱貴は柔らかく目を細める。
ドキッと不覚にも胸が跳ねるのを感じてしまった。
「・・・あらぁ?もしかしたら・・・朱貴と真城ちゃんもういい感じなのかしら?」
美代子さんがニヤニヤと朱貴と私の顔を交互に見ながら言う。
「え!!!いや!そんないい感じとかそういうんじゃ・・・!!」
我に返った私の言葉も虚しく、大人達の会話はどんどんと進んでいく。
「そうねぇ。やっぱりここは邪魔者は退散した方がぁ・・・ねぇアナタ。」
「そうだな。ちゃんと馴染んでくれるか心配だったが、若いっていうのは案外すぐに馴染むものだな。朱貴も真城ちゃんを気に入ったみたいだし、ここは美代子が言うように邪魔者は退散した方がいいかもしれないなぁ。」
「うんうんそうだな。ここで私達がいたら余計に深まるものも深まらないかもしれないしな。朱貴くん、私達は席を外すから、真城の事よろしく頼むよ。」
「え!?えぇぇぇ!!!ちょっと待ってください!!!勝手に話進めないで!」
そう言って部屋を去っていこうとする大人三人を必死で引き留めている私の後から爽やかな声が聞こえる。
「要司さん、その必要はありません。それよりも少し真城さんをお借りしてもよろしいですか?ちょっと散歩がてら二人で出掛けて来ようかと・・・。折角お料理も用意して頂いたんです。父さんと母さんと要司さんはこちらでお食事でも楽しんでいて下さい。」
「おー!朱貴くん!!本当に君はいい男だね。気に入ったよー!!!じゃあ私達はこのままここで食事させて貰おうか。真城、朱貴くんに迷惑かけるんじゃないぞ。」
「え!?ちょ、ちょっと!!!お父さん!?」
「さ、お父様の許可も頂きましたし、真城さん行きましょう♪」
私の意思は無視で、あれよあれよと言う間に私は朱貴に手首を引っ張られて半強制的に連行されてしまった。