プロローグ
ゆっくり更新です
僕の使命。それは、枚瀬さんを見守ること。
猛暑の夏だろうが、極寒の冬だろうが、花粉舞う春だろうが、いついかなるときでも彼女を見守る。
手は出さない。口も出さない。
ただひたすら見守り続ける。
何度でも言う。枚瀬さんを見守るのだ。
僕の名は高森。この春、千枝高校の二年生になった冴えない男子高校生だ。見た目も能力も全てが平凡。教室の隅で細々と日々を過ごすだけのつまらない男さ。
いや、僕のことはどうだっていい。
大事なのは、同じクラスの女の子・枚瀬さんだ。
彼女は常に眠たそうなたれ目、栗色のセミショートの髪は所々跳ねていて、外見には無頓着。
背が低く、中学生と誤解されそうなロリ体型。ブレザーのサイズが大きいせいで萌え袖状態なところがかわいい。
みんなからは「子ウサギ」とか「不思議ちゃん」とか「綿毛ちゃん」なんて呼ばれている。ようは自由でフワフワしているってこと。
さて、そんな彼女を僕が見守る理由。
それは、彼女が尋常でなくドジっ子だからだ。
彼女はドジでどんくさくてビビりで、でも頑固で意地っ張りで負けず嫌いで。
そんな性格だから、日常の節々で小さな子が一人で買い物しているときのような危うさを感じてしまうんだ。
腕時計を確認しようとして持っていたコップの水をこぼしたり。
風を感じようと窓の外に顔を出そうと思ったら透明のガラスに頭をぶつけて、以後窓ガラスから距離を取って歩くようになったり。
席替えをしたのに翌朝勘違いして前の席に座って、しかも周りの「そこじゃないよ」という優しい声を頑として聞き入れなかったり。
まあそんな感じだから、僕は近所のおじさんのような気持ちで、彼女を影からそっと見守るのだ。できる限り見守るだけ。極力手は出さない。彼女がどうしようもならない事態に陥ったときだけ、さりげなく手をさしのべる。
それでいい。
ストーカーじゃないぞ。あくまで暖かい目で見守るだけだから。